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Fivethdayー全ての真実『ビーナス』

4人は石原の後ろに付いて一緒に歩き始めた。


「石原、その拳銃はどうしたんだ?」


「机の中にあっただけだ、使い方は見よう見まねというか、適当だった」


石原が懐中電灯を照らし先へ進んでいく。


「あの紐に鈴のトラップは…」


「あれは俺が仕掛けた。ゾンビ対策だった。まぁ、お前らが引っ掛ったわけだが、不意打ちされたくなかったんだ」


と、ここで藤谷が核心に迫る質問をした。


「石原、なぜお前はここにいる」


「どういうことだ?」


石原の足が止まった。再び5人の間に微妙な空気が漂う。


「なぜこの施設にいるのか?と聞いている」


石原はしばらく藤谷を睨み見るようにしていたが、一度目を泳がせ口を開いた。


「仕方ない。ここまで生き残ったお前らに教えてやろう」


探索中初めてゾンビに襲われたとき、石原もまた行方不明になった。


「死んだって思ってただろ?」


石原の質問に桜木はま、まぁと答えた。


「実際はあのときは自ら離れて行ったんだ」


「な、何故そんなことを?」


石原はここで口を一旦閉じた。


「この部屋に入ってくれ」


どうやら研究所の深部のようだった。ドアを開け、入った。


「なんだ……?この部屋」


部屋の中には研究所というだけあって多くの機械や机、パソコンなども数多くあった。


「じゃあ、いまから……今回の事件の真実を教える」


えっ!と一同は声を上げた。


「俺が立てている全ての仮説だ」


「それは……ゾンビの真実ってことでいいんだな?」


そういうことだ、と中谷の質問に答えた。


「まず、ゾンビは何によってゾンビになったのか、お前らは知ってるのか?」


林檎だろ…?と答えた。


「そうか、お前らもαの答えに辿り着いたのか、ならもう簡単だ」


「どういうことだ?」


石原は研究所の奥に進んでいった。4人は顔を合わせついていった。

すると石原は研究所の机の中から瓶を取り出した。


「これが全ての元凶、本当のαの正体だ」


瓶の中には無色透明の液体が入っている。よく見ると机の中には番号が降られている瓶がいくつもあった。


「この液体は……?」


「この液体はここの会社、美肌園社が新製品として作ろうとしていた簡単整形液、その最後の試作品だ」


試作品……


「成功しなかったのか?」


そうだ、と石原が答えた。


「ここの研究所は新製品の製作、量産を目的に作られた。だが実際はそれだけではない、裏の部門、別名『危機管理対策本部』その異名も持っていた」


「石原、何故お前はそんなに詳しい、おかしくないか……」


おかしい…?と石原は鼻で笑った。


「詳しいに決まってる、ここの研究所の所長、裏部門の責任者は石原雄三」


まさか…と桜木は呟いた。


「そう、俺の父親だ」


時は10年遡る。


石原が6歳の誕生日のことだ。


「実、誕生日おめでとう!」


「ありがとうパパ、ママ」


誕生日ケーキを前に団欒の時、家族三人が嬉しそうにしている当たり前の時間である。


「実も来年は小学生だな」


「そうね、ランドセルを選ばなきゃいけないわね」


「わぁ……」


来年への期待は高まるばかりであった。


だが……


「パパ!ランドセル届いたんだ!」


黒いオードソックスなランドセル、それを抱えながら実は父に言った。だが父はなんともいえない笑顔を浮かべ言った。


「ごめんよ、実。パパ入学式にいけなくなっちゃったんだ」


「え……なんで……」


石原は涙を浮かべた。


「ごめんよ、仕事で遠くに行かなきゃいけないんだ……だから……」


「パパのバカ!!!」


石原はランドセルを投げ捨て自分の部屋の布団に篭ってしまった。


次の日、石原の父は仕事へと向かった。その仕事場には小学校がない為、離れて暮らさざる終えなかった。


そしてその2年後、石原の父は一度も石原実のランドセルを背負う姿を見ることもなく死亡した。

理由は過労であるとされたが、石原はとても信じられなかった。


「そして唯一の証拠を掴んだんだ」


「証拠……だと?」


「そうだ、石原家に届いた遺品の中の日記だ」


石原がその日記を取り出した。


「見せてくれないか?」


中谷の言葉を受け石原はノートを手渡した。



2×××年 4月1日


ことあるごとに日記をつけることにした。

息子の入学式を見ることが出来ず、とてもツライ。だが本日から私はこの研究所の所長になったのだ。研究者としては嬉しいことでもあるが、素直に喜べない私がいる。


4月5日


私に本部から再び通知が来た。『危機管理対策本部の設置に基づき本部長に処する』

私は絶望の淵にいた。なぜなら危機管理対策本部、それは美肌園社を発展させる上での違法廃棄処理の秘密部門だからだ。だが私や断るだけの勇気はない。愛する家族の為、ただ仕事を全うするのみである。


6月19日


本日から新製品製作を行う。待ちに待った仕事だ。


6月21日


新製品の方向性が決まった。これは日本どころか、世界を驚かすことが出来る。


7月3日


本日より新製品『ビーナス』の製作にかかる。成功すればノーベル賞ものの新製品だ。


1月1日


年が開けた。『ビーナス』はいまだ試作品の製作の状態だ。


4月1日


『ビーナス』の試作品が完成した。それを聞いたとき四月馬鹿かと思ったが、嬉しい気持ちで一杯だ。


4月3日


実験用ネズミに投与した。結果が楽しみである。


4月4日


ネズミの状態に変化が現れた。どうやら毛が抜けているようだ。ストレスなどから来ているものの可能性もあるので注意したい。


4月15日


実験用ネズミを廃棄処分にした。結果を纏めるとまだまだだった。今回私が製作している『ビーナス』は簡単に言えば整形を行い、良い顔になるというものだ。だが結果はネズミの毛が抜け、食欲が旺盛になっただけだった。


8月19日


『ビーナス』の失敗が止まらない。なかなか上手くいかないものだ。


12月24日


クリスマスの日、私は『危機管理対策本部』の仕事を全うしなくてはならない。今日、違法廃棄するのは人間の死体である。

どうやら美肌園社上層部の中で派閥争いがありその争いの中で幹部が暗殺されたらしい。


12月25日


死体は既にバラバラにされており、隣接する池に沈めるだけで済んだ。嫌な気分である。


1月1日


寂しい正月である。『ビーナス』を早く製作し家に戻りたい。


2月19日


『危機管理対策本部』へ再び仕事が入った。人間がここへ送られてくるので始末するようにとのことであった。

この時の為に池に通じるダストホースを増設してある。


2月20日


生きた人間が送られてきた。何をしたのかわからないが彼には『ビーナス』の試作品を飲んでもらうつもりだ。彼の命は私が握っているのだから。


2月21日


連れてこられた彼は死亡した。『ビーナス』によって彼の皮膚は落ち、その激痛によりショック死を起こしたようだった。鎮痛剤の成分も合成するつもりである。

食欲が旺盛になるのはネズミと同じ結果だった。どうやら整形が行われるときに細胞が活性化しそのエネルギーを必要としているようだった。


3月18日


再び送られてきた人間に『ビーナス』を飲ませた。が失敗したようだ。夜になり死亡が確認された。研究所の職員もさすがに恐れを感じているようだった。

今回の試作品ではやはり皮膚が剥がれ再形成が行われなかった。再形成の為の成分を増量する。


5月10日


『ビーナス』の製作を辞めることにした。これでは殺人液を作っているだけである。危機管理対策本部の方でも今度からは逃がしてあげることにしよう。

こんな仕事はもう耐えられない。


6月16日


『危機管理対策本部』の方に仕事が来た。ターゲットは私だそうだ。新製品の失敗、ターゲットの逃走を許したのが本社にばれ、その結果らしい。

怖い、悲しい、悔しい。

家族に会いたい。


6月17日


ダストホースから『ビーナス』が流れている。私は自殺を決意した。会社はここを放棄。私にはもはや生きる価値もない。

『ビーナス』の破棄と私自身の殺害、それが私の会社からの仕事だ。

家族を愛している。さようなら。



…………ひどい……


誰かが呟いた。


「なんだここは……この研究所は……負の塊じゃないか!」


藤谷は怒りの体を震わせた。


「この日記の内容が本当に行われているなら……αの正体は……」


桜木が石原に聞いた。


「そう、『ビーナス』だ」


池に放棄された『ビーナス』が生物濃縮を続け、池の近くの林檎を汚染した。


「これが俺の仮説だ」


「そしてそれがこのゾンビの……αの……全ての真実……」


あまりにショッキングなことに一同は理解するのに時間がかかっていた。

そして空には新たな太陽が現れていた。

時刻は既に8時を過ぎていた。




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