Onedayー脱出作戦
三人とも体を震わせているが、息を殺した。
沈黙の中、ペタリペタリという足音だけがする。
食堂にいるだけでも六体はいるだろうか…。
廊下は死角になっているので、姿は見えないが廊下の軋み具合から、かなりの数は居そうだった。
「駄目だ、俺らばれてる。」
中谷が言った。
しかし、奴らはさっきから体を右に左に大きく振りながらドアの近くを歩いているだけであった。
「とても、ばれてるようには…。」
「いや、さっきに比べて、廊下の軋む音が大きくなってる。」
つまり、食堂に人が食い物がある…。奴らはそう踏んでいるのだ。
「それって…ま、まずいんじゃないの?」
川端は焦り始めた。桜木も本当は心底震えていた。
「桜木、川端、一つ作戦がある。ただ説明するだけの時間がない。俺についてきてくれ。」
中谷のついてきてくれ。という言葉に桜木は全てを託した。
中谷は机の下からゆっくりと出ると、突然、
立ち上がり、ナイフを投げた。
クルリクルリとナイフは回転しながら奴らへと向かって行く。
奴らは避けようという動きを見せず、奴ら1体へもろにナイフが刺さった。
しかし、そいつは特に何もなかったようにナイフをそのまま放置していた。
「あああぁぁぁぅ」
奴らがエサを見つけたとでも言うかのように、呻き声を上げ、桜木達の方へ、歩き出した。
「ど、どうすりゃいい。」
川端は奴らを見ながら言った。
「な、中谷‼中谷⁉」
中谷は横にはもういなかった、辺りを急いで見渡すと、奥のキッチンでカチカチと何かしていた。
桜木と川端は前から向かってくる奴らから逃げようと思う気持ちよりも中谷の作戦が気になり、中谷のところへ向かおうとした。
「まだ、そこにいろ‼」
中谷が大声で叫んだ。
しかし、奴らはすぐ近くにまで来ている。
桜木は腕を斬り落とした。
「ほ、包丁ってよく切れるんだな。」
川端はかなりパニックになり、何回も刺しまくっていたが、奴らが引っ掻こうと腕を振ってきた為、尻餅をついた。
「こっちにきて‼はやくしろ‼」
奴らがまさに目と鼻の先なったところで中谷の方へ、桜木は包丁を投げ捨て、川端は腰が抜けている為、這ってきた。
中谷の近くで冷静に見てみると、ドアの外にも、食堂にも奴らが溢れかえっていた。
「ど、どうするんだ、中谷。」
すると、突如、ピピピピピという音がなった
。
「よし、奴らに突っ込め。」
はーー⁉桜木も川端も大声で叫んだ。
「そんな馬鹿言うな、自殺行為じゃねえか…」
川端もようやく落ち着きを取り戻したようだった。
「いいか、出来る限り、奥に突っ込みたい。テーブルに乗ってから、ジャンプするぞ…その後は、逃げろ。」
中谷の言葉に、桜木は肩を掴んで聞いた。
「助かるんだな⁉」
中谷はゆっくりと頷いた。
信じるしかない…。桜木は覚悟を決めた。
「行くぞ、川端‼」
川端は大泣きしながら、頷いた。
中谷が先陣切って、走りだした。
奴らの真横をギリギリで通過してテーブルに三人が乗ると、一気に走り出して、三人は翔んだ…。
桜木は自分の足が切られてる事に飛びながら気がついた。
ふと、生きてきた全ての記憶が浮かび上がった。走馬灯というやつか…。
そんな中、ゆっくりと時が過ぎて行く。
グニャリ…と奴らの首が変な方向へ折れた。
自分の体の下もゾンビ、上も横もゾンビ…。
「し、し、死、死にたくない‼」
カチッ!
小さな、小さな音であった。
しかしその直後、奴らの合間から炎が龍のように舞うのが見えた。
暑い、息も出来ない。
狭い食堂は完全に火で万杯になり、奴らが燃えていた。
龍のような火が消えると、とてつもなく、臭かった。
「逃げるぞ!」
近くのゾンビは体が溶けていて、動けなくなっていた。
中谷が、ゾンビを押し抜けて逃げ出した。
桜木はもはや思考は働いていなかった。
ただ生きていたいという本能が体を動かしていた。
廊下にも玄関にもいまだ奴らはいたが、さっきより、動きはあきらかに遅い。
腕が振り落とされてくるが、なにがなんでも避けていく。
燃えて脆くなった玄関のドアに中谷が突っ込むが壊れなかったらしい。
「うおおおおお‼」
桜木が走った勢いのまま、扉を蹴っ飛ばした。
「外れた、外れたぞ。桜木‼」
中谷が歓喜の声を上げた。
しかし喜ぶ中谷の傍ら、桜木はあることに気が付いた。
「か、川端⁉川端は…?」
中谷は、はっ、となった。
施設の中を振り返って探すが、奴らの姿が見えるだけであった。
「くそっ…」
中谷が太ももを叩いた。
「うおおおおお‼」
奴らの上を人が飛んだ。
五話目か六話目で、Onedayを終えれればいいな(−_−;)
と思ってます
五話目は21日投稿予定
(予定通り投稿が行われない場合もございます)