Fourthdayー脱出不可能
「こんのぉぉぉぉぉ」
グシュ!…顔にゾンビの腐敗した液が飛び散り慌てて手で覆った。
「大丈夫か?桜木、川端」
ゾンビの倒れた後ろには中谷と藤谷さんがいた。
ゾンビの後頭部に刺さっていたのはビニール傘だった。
「たまたま鞄と一緒にあったんだ。上は服とかしかなかった、一応咲さんと藤谷さんは着れるだろうし、まだこっちの方が清潔だから神谷の怪我部分にも使おう」
そうか、と川端が言った。
「食糧はここにあったけど全部持って帰るには…」
「鞄ならある」
藤谷さんが空の鞄を放り投げた。
可愛い絵柄の鞄だったがその鞄についてる名札には藤谷美希と書いてあった。
「いや、これは、その親が勝手に買ってきただけなんだ!」
その名札を見ているのに気付いた藤谷さんが焦りながら言った。
「はは、とりあえず鞄に食糧を詰めて逃げよう、そろそろ日も暮れる」
時間を聞くと既に午後5時を回っていた。
慌てて鞄に食糧を詰め込むと川端が背負った。
「さぁ、戻るぞ」
中谷の声と共に玄関に向かった。
ところが、玄関は炎に包まれそこを越えるのは難しそうだった。
「仕方ない、二階の窓から一階の玄関の屋根に降りて脱出しよう」
「二階は安全なのか?」
中谷の提案に川端が聞いた。
「ゾンビは倒してある心配するな」
さすが…と桜木呟いた。
階段を登り二階へ上がった。
大きな窓から外の様子を伺ったときある事態に気付いた。
「おい…嘘だろ…そんな…」
川端が頭を抱えた。
桜木も慌てて外を確認した。
「ゾンビが…集まってる……」
施設の前の走ってきた土地には大量に、帰る道のりにもゾンビがウロついていた。
脱出不可能……完全に4人は孤立してしまった。
「クソ!なんでだ!?何故あんなに数が」
中谷がイラついている。
「やはりおかしい。絶対的にゾンビの母数を上回るゾンビがいる」
藤谷さんが疑問を口にした。
「それってつまり…?」
と聞いた。
「ゾンビになってるのは俺達のクラスメイトだけじゃないってことだと思う」
中谷が深い溜息をつきながら答えた。
公園に戻らなきゃ…いけないんだよ…咲さんが食べ物も何もない状態で待ってるんだって…
自問自答である。何か方法がないか探すため、整理するため、目的の確認のため、全ての理由のためである。
「大丈夫か、桜木」
川端が桜木の状態に気が付き声をかけてきた。しかし桜木はあぁと返し会話は続かなかった。
「これしかないのか…?」
中谷が呟いた。
「これって…?」
「正面突破ってことだ…」
「あの数に突っ込むのか?自殺行為だろ…」
「だがそれ以外の作戦がないのも事実だ」
四人の会話が続き、作戦が決まった。
そして全員がその配置についた。
「冷蔵庫を倒すぞ!」
冷蔵庫をキッチンから運びだし玄関の前に置いた。それを川端と桜木が押した。
バタンと冷蔵庫は倒れ、燃えていた火を踏み潰し、さらにボールに汲んでいた水で完全に消火した。
ゾンビがそれにすぐさま気付き向かってきた。
ここで川端は二階に先に上がった。
「冷蔵庫を倒せたよ、ゾンビがもう来てる!」
桜木はその連絡をキッチンで待機していた中谷と藤谷さんに伝えた。
「オッケー、ガス着けるぞ!」
二人がキッチンのガスコックを開け二階向かった。
「火は?」
「私がチャッカマンを持った、急ぐぞ」
プシュー……とガスが漏れ出した。そしてガス感知器がけたたましい警戒音を立てている。
三人はそれを気にせず二階に上がった。
既に川端は上で待機し荷物を背負っていた。
「よし、一回降りよう……川端の荷物は先に落とした方がいいかもしれない」
玄関の屋根が壊れたら元もこもない。少しでも軽くする為だった。
川端が荷物を放り投げた。鞄はドンとゾンビの頭に当たり地面に落ちた。