Fourthdayー施設への作戦「突破」
「はぁ…寝れるわけねーよ…」
桜木の胸にあるのは、「恐怖」ただそれだけだった。
まだ昨日の恐怖心が消えたわけではない。
しかし、行かざるを負えないのだ。それが動ける者の義務だと感じたからであった。
ダラダラと時間を過ごした桜木はベンチから起き上がり体を動かし
はじめた。
「桜木、大丈夫か?」
準備運動をしていた桜木に公園内をランニングしていた川端が話しかけてきた。
「あぁ、もう傷は閉じたよ…多分な」
そっか、と言ったあと、川端がニヤッとして続けた。
「なんかさ、こう身体の準備運動ばっかりしてるとさ、学校のマラソン大会を思い出すな」
「はは、そうだな。」
と、返しながら心の中では石原の事を思い出していた。石原は…いったいどこへ言ってしまったんだ?生きてるのか?死んでしまったのか?
…わからない、ただ生きててくれ
「みんな、集まってくれ!」
中谷の呼びかけで今回、宿泊施設へ潜入する人が集まった。
桜木、川端、中谷、織田、女子から唯一藤谷さんが集まり、計5人が行くこととなった。
えっ?と桜木は女子が寝ていた公園の中央の遊具から煙が出ていたのに気が付いた。
「さっき、トイレで見つかったライターから火がついたんだ。今、それが消えないように焼いてるところだ。」
中谷曰く、風をよけられて煙が上に抜ける穴があり、さらに横から空気が程よく入る公園の遊具は火を焚くのに丁度良かったそうだ。
「今回、僕達が施設へ行くのに使う道は…トンネルから強行突破しようと思う。」
はぁ?と織田が叫んだ。
「ふ、ふざけるなよ?そんなの危険過ぎるだろ。」
今回ばかりは桜木も織田と同じ意見だった。
「強行突破って…何か作戦でもあるの?」
ふぅぅぅぅ…
中谷が息をはいた。
「ない、正面から強行突破だ!」とはっきりと言った。
え、えぇ?と川端が言った。
「作戦……の決定理由を聞きたい。」
藤谷さんが冷静に聞いた。
「結果論から言えば、俺達は奴等……ゾンビ一体にも会わないで施設に行き、帰ってくるのは無理だと思う。多分、1%以下の確率すらない。」
そんな…と桜木は希望すら失ったように感じた。
「で、そうなると侵入通路は……トンネルか林からかのどちらかになる。」
「昨日、俺たちは林でゾンビに襲われてしまった、その結果、一人が行方不明、一人は重傷、その他全員が怪我を負った。」
桜木は中谷、川端、自身の傷を見た。やはりかなり痛む。
「理由は、林の木によって奴等が確認出来ない、少し離れれば自分達すら確認出来ない。トンネルと違って安全地帯の公園にすぐ戻れなかった。この事が昨日の敗因だと思う。」
確かに昨日感じたのは、中谷の言う通りだった。ゾンビは急に現れたし、同じく急に襲撃された。石原はいつ間にか消え、自分達は離れ離れになって、しばらくしてから公園に戻った。
よくわからない土地よりも、進むか戻るかのトンネルの方がやりやすいのかもしれない。