Onedayー迫る恐怖
桜木は叫ぶと、食堂に逃げ込み隠れた。
自分の事でいっぱいになっていたが、川端も食堂へ逃げてきていた。川端が鍵のないドアを閉めた。
「な、なんなんだあれは⁉」
川端は桜木に聞いたが、桜木は答えなかった。
いやむしろ静かにしろという意味を込めて、指を口の前で立てた。川端は口を閉めた。
人間とは思えない彼らに音が聞こえたら人間がそこにいるという発想があるのかどうかわからないが、とりあえず鍵のない食堂にいる今、最善を尽くすしかなかった。
「窓もないのか…。」
桜木が川端に囁いた。
「おい」川端が答える前に、聞き覚えのある声がした。
桜木が辺りを見ますと、川端が横に長い机の下を指差した。
「中谷‼」
桜木がつい大きな声で言うと、中谷がしっ、と桜木同様に指を口の前で立てた。
桜木はまずそうな顔すると、川端と共に机の下に入った。
ドアから椅子と机で死角になっているので、少しは安全そうだった。
「桜木、川端。これ持っとけ。」
やはり、小さな声で中谷が包丁を渡してきた。
「あ、ありがとう。」
桜木は礼を言った。
桜木、川端は無二の親友であったが、中谷 陸ともかなり仲が良かった。
桜木は、中谷ほど頭の回転が良いやつはいないのではないか、と思っていた。
身長は桜木より小さく、イケメンでもない、頭もそこそこでいわゆる普通の中学生であったが、場への適応力や発想は並ではなかった。
「中谷は、いつからここに?」
川端が中谷に聞いた。
「二人が部屋に入ってくる少し前だよ。玄関や窓からは逃げられなさそうだったから。」
中谷はいまだ、ドアを凝視していた。
「まずいんじゃね?」
川端がドアを見ている中谷に言った。桜木もドアを見ているが、ただ横に引くだけのドアがさっきに比べて、あきらかに…
「押されてるな…。」
一体、何人の人が力をかけているのだ、というか横に引くことはできないのに、それだけここに力を掛けるというのは、やはりばれているのだろうか?
「なぁ、さっきからなかなか言えなかったんだけど…」
川端が二人に何か伝えようとした瞬間
ガタン‼
ドアが外れ、倒れたドアからゆっくり奴らが立ち上がってきた。
「う、うううぅぅぅ」
言葉ではない、奴らが発する音は嫌に恐怖心を与えた。