Seconddayー食べ物は分けろ【中編】
「俺の言うことが聞けないってのか、この野郎‼」
織田が声を張り上げて石原に言った。
さすがにヤバイだろ、川端、中谷に伝えたが、いまだみんな動揺している。ちなみにだが桜木は身体は動かないの…と咲さんと手を繋いでいたかったので止められなかった。
「お前なんかのいうことはどうでもいい。そもそも、イジメを背景にした脅しはいまじゃ効かないよ。イジメるだけの人数がいないからね。」
石原の口からスラスラと言葉は出ているが、いまだ無表情を貫いていた。
「い、石原、お前はどれぐらい食べ物を持ってるんだよ。」
体の動かない桜木がなんとか場の空気を変えようと聞いた。
「た、確かに、石原。少なからず再びここへ、人が来るのは、クラスを迎えにくるバス、それさえ、一週間は来ないんだぞ。」
中谷が説得を試みた。
「残念だが、中谷。少なからず一週間は生きていられるだけの食べ物はある。ただお前らに分けなければ…だ。」
そこから説得は進展など見せる訳がなく、30分は、頼む、嫌だ、の繰り返しだった
食糧の希望をみんなも諦めを感じ始めた頃、石原がふと言った。
「俺はお前らに対する情や義理が全くないし、感じる気もしない。だから作ってくれ。」
「な、なにを…。」
誰が言ったのかはわからなかったが、みんなの意見でもあった。
「つまりだ。お前は俺に何をしてくれる、と聞いてるんだ。」
みんなの空気が固まって、沈黙がしばらく続いた。
「た、例えばどんなことを?」
沈黙を破り川端が聞いた。
「そうだな。川端には、俺の食糧でも、施設からその自慢の足でとってきてもらおうか?」
きたねぇ…この男
「てめぇ‼クズのくせに調子に乗るな。」
織田が叫んだ。
「黙れ、豚が。」
この‼‼
織田の怒りが頂点を超えた。
右手がテイクバックを取り、石原に殴りかかった。
「落ち着け、織田。」
藤谷さんが織田の右手を手の平で止めた。
それを見た石原が初めてニヤリと笑った。
「よし、藤谷には俺のボディーガードでもやってもらおうか。」
「な、私はそんなつもりじゃ。」
じゃあいい、と再び石原は無表情になった。
「な、なぁ中谷、どうすればいい?」
桜木が中谷に声をかけたところを石原は見逃さなかった。
「なぁ中谷。俺は間違ってるのか?」
中谷は顎を撫でた。
「逆に、お前は、石原はどう思ってるんだ。」
石原は無表情を少し崩した。
「俺か?間違ってると思ってたらやってねえや。だってこれがこの世界なんだから。」
「どういうことだ?」
中谷が再び石原に問いた。
「この資本主義が基本の世界では、力、権力、金、それらを持った奴らが世界を支配する。そしてこの世界は、それらを持つ者かあるいは、それにすがる者かに分けられる。」
石原が一息入れた。
「俺はいままで、後者だった。そんな俺にいま、権力者をぶっ潰し、前者になるチャンスが来てるんだ。食糧という資本のお陰でな。」
資本主義が支配するこの日本はあまりにも皮肉だ。
格差が差別を呼び、終わることのないいじめを呼ぶ。
大人になっても止まらず、世代を越えていじめは続く。
力を持つものから助かる方法はただ一つ、対抗する力を持つ事だった。
なんでも、本当になんでもいい。
金、力、権利。
川端は昔、織田にいじめられていた。しかしある日、喧嘩となり織田を打ち負かしたことにより、いじめが、止まったのだ。
石原はいじめから避けるため、織田についていた。しかしいま、食糧という、生命へ直接干渉する力を手に入れ、織田を打ち負かそうとしていた。
テストがもう始まる‼
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