表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/39

六話 波乱の誕生日

今日はラスルコフ学園はお休みだ。週に二回休みがあるのだが、丁度僕の誕生日と合わさったので、昨日半日かけて兄上たちと姉上が駆けつけてくれた。久々の再会に悦びつつ、お昼から屋敷を使った規模の大きな誕生日パーティーとなった。



ラミレス家って凄いんだ…………今更ながら実感する僕。分家筋だけで結構な人数が。他の貴族の面々も。この世界の料理は僕にとって当たり外れが大きい。まぁ基本的には肉と果実は外れはないので、今日はご馳走だ! よく見ると僕の好物がたくさん並んでる! よ! 仕事人の料理長に金一封!



興奮する僕の横には、ターニャ姉が白い可憐なドレスを着て嬉しそうに微笑んでる。昨日の夜からずっとこんな調子だ。母上も呆れるくらい、ずっと僕の周りを離れない。夜は一緒に寝ることになった。流石にお風呂は遠慮した。というか僕が逃げた。僕の危機察知センサーに何かが反応したのだ…………



最近は少しずつ女の子らしくなってきている。髪も肩まで伸ばし、ずっと笑みを絶やさない彼女は魅力的なのだろう。さっきから周りの少年たちの視線が張り付いていた。間違いなく母上似の美人さんになるからな。話しかけたくてうずうずしてるみたいだ。



思春期の少年を助けてあげよう! と人助けをしようと考えた僕はと、軽い気持ちで姉上に話しかける。



「お姉ちゃん。あの男の人、ずっとお姉ちゃんを見てるよ。ちょっと話しかけてあげたら?」



「 私はあんなゴミクズに微塵も興味がないからいいわ。それより今日は私の傍を離れちゃダメよ。明日から会えなくなるんだもん…………はぁ…………拐っちゃおうかな」



一気に何かが重くなった! 誰を?? 何で?? 何処へ?? 余計なことをしたのかもしれない。ターニャ姉が冗談を言っているとは思えなかったらだ。見ると、彼女の目は本気だった。本気で悩んでいた。



「でも…………話したら面白いかもよ。ちょっと僕、あっちに行ってるからさ」



君子危うきに近寄らず、との頼もしい教訓の通りに、僕は戦線離脱を試みた。



「だ〜め。拐われちゃうよ?お姉ちゃんと一緒にいるの。何だか他の女がクリムを狙ってるみたいだし、私がいれば安全だから」



手を握られた。まったく感知できず、いつの間にか……これはどうやら……逃げられない! んでもってツッコミきれない! 僕は何に狙われているんだろうか…………思考が停止すること約30秒。



「初めまして、ミス・ターニャ。私はロイルと申しまして、本日…………」



勇敢なチャレンジーが来た! 僕より頭二つ分高い、くるくるした金髪の…………えっと、狐みたいな顔の人がやって来た。鼻が高く、長い切れ目が狐の変化したやつみたい。口元も笑っているんだけど、何か嫌な笑みだな。下心ありそうな感じ。青を基調にした王国の軍服を着ている。どっかの士官候補生かな? 年はまだ12、3歳ぐらいだろうか。



「…………」



「…………」



気まずい。何故かすぐ近くにいる僕にもこの空気は痛い。ターニャが一瞥しただけで、明後日の方を向いて見向きもしないからだ。しかもちょっと不機嫌そう。狐さんも戸惑っている。誰か…………そうだ、兄上は…………女の子と談笑中。ご機嫌だ。助けてはもらえないだろうな…………



「お主が、クリムかの?」



キョロキョロしていたら、後ろから声をかけられた。振り向くと、そこには上目遣いにこちらを見上げる、どこかのお嬢様がいた。



悪い予感しかしないのは何故だろう?




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ