五話 後継者?
光ちゃん改め、本当の名はクリファ・ロウエリア・アスタリスク。何でも精霊の中でも凄い高位に位置するらしく、母上にしか見えないし存在も感じられない。知性をもち、自由気ままなその精霊は、今まで母上以外にその姿を見せなかったらしい。
精霊とは、ま、八百万の神々みたいなイメージでいいと思う。高位の精霊は神と同一視され、信仰の対象になっているものもあるらしい。一般的に自然界に存在する魂だけの存在で、姿形も様々だ。光ちゃんのように人形で自由に移動する精霊は稀なんだって。
へ〜……つまりは精霊界のひねくれ者ってことかな。納得納得。鋭い視線を後頭部に感じつつ、「光ちゃんは意地悪なんだ」と今までの鬱憤をここではらさん! と思って愚痴っておいた。間違いなく光ちゃんも聞いてるハズだし。あれ…………視線が殺気を帯始めたぞ?? 嫌な汗がじわっと背中を湿らせた。
「ふふ、それだけ気に入られてるのよ。遊んでもらえて良かったわね〜。」
頭をなでなでされる。耳が赤くなっているのが分かる。褒められ慣れてないのだ。どうしても顔がにやけてしまう。
「けど、何で母さんと僕にしか見えないの?」
「ん〜。ちょっと難しいけど、クリファが気に入った魂の持ち主じゃないとあの子光の中に隠れちゃうの。それに、これは生まれ持ってのものだから…………アレンは例え目の前にいたとしても、クリファに全く気づけないの。他の精霊さんもよ。」
つまり霊感が全くないと、心霊スポットにいても幽霊を感じられないし、見ることもできないようなもんかな。そういえば、此の世界の幽霊はいるんだろうか? 前世は縁がなかったからな。ちょっとみてみたい気もする。
どうやら、僕には霊感、もとい精霊使いの才能があるらしい。何故光ちゃんに気に入らたのかは分からないが、多分暇潰しに遊ばれてるだけだと思うので、あんまり嬉しくない。
しかし、光ちゃんはあれか。属性は光なのかな? 光の中に隠れるって…………無理じゃん。やる気が空中ダイビング並みに急降下した。脱力感が半端ない! あのにやけ顔に、なんとかしてフライングチョップを決められないものか。悲しいことに今までの努力は無駄だったのか…………
落ち込む僕に気づくことなく、母上は興奮しまくっている。きゃーきゃー嬉しそうに再度抱き締め…………たまま回り始めた。一体どうしたんだろう。そろそろギブアップしたい…………脳がシェイクされてる。強めのタップを母上の肩に何度もしてようやく止めてもらえた。母上も気持ち悪そうだ。体弱いんだから、自重して欲しい。
「クリムは〜私の〜後継者〜〜」
変な歌唄い始めたぞ。母上が壊れたようだ…………若干引いている僕。どうしよう…………
「明日から毎日お勉強しましょうね!」
何の勉強? というか明日は僕の誕生日では!? 何だか母上の顔を見ると忘れてる気がする。早速準備しなくちゃと、母上はいそいそと消えていった。
もしもお勉強テキストが誕生日プレゼントだったらグレてやろうと決意した器の小さい4歳児がそこにいた。というか僕だった。
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