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三十四話 邂逅の日

はっきり言って、「魔力」というもの(存在)は、いまいちイメージが涌かない。


この世界では、前世で溢れていた科学技術に替わるものとして魔法があることは分かる。特殊な鉱石(精霊石・魔石と発掘場所や性質によって呼び方は変わる)に、魔力を込めた言語・記号を刻むと信じがたい効果を生じさせている。例えば、炎・水といった属性を武器に付与させたり、鉱石をイヤリングなどのアクセサリーに加工し、離れた場所での仲間との意志疎通を可能にする魔道具といったものを作ることが出来る。



そんな力の源が魔力!



と言われても、結局何なのか。エネルギー源という意味では電気や石油といったものだが、目には見えない。ラミレス家に魔力の説明をした書籍がいくつかあったが、結論は皆「神の恩恵」だった。



これじゃ分からん!今までは詠唱さえすれば発動するので、まぁいっかと思ってたんだが、それではダメらしい。



目の前にいるキリコは言う。



『魔力、すなわち己自身だと思いたまえ』



両手を腰に当てながら断言する。



『僕は魔力です!はい、言ってごらん』



「先生はふざけているんですか?」



思わず思ったことの方が口にでた。偽らざる本音である。



『ほほぉ、坊やはふざけていると思ってるんですか?』



「いや…何か馬鹿みたいで」



『私を信じたまえ!声に出すのと、ただ聞いて思っただけでは全然違うのさ。さぁ!』



「……僕は魔力です」



『………クフブォッ!』



絶対に笑うと思っていたので、即座におでこに水平チョップをかましてやった。良くも悪くも予想を裏切らないキリコの行動はもう大方推測できるようになっていた。無駄なスキルではあるが。



『痛いじゃないか……』



おでこを擦りながら文句を言ってくるが、無視しておく。少しは懲りて貰いたいものだ。



「……で、魔力コントロールって、結局はどういうこと?魔法が使えればそれでいいんじゃないの?」



『ふぅ……焦るなよ坊や。結論や結果を早々に求めるのは人間の悪い癖さ。まぁ、そんなに遊んでる時間がないのも事実みたいだからね。坊やには一つ、魔法をかけてあげよう』



「魔法を?僕に?」



呪いじゃないよな?思わず身構える。



『信用ないね……いいから、こっちへ来て目を閉じてごらん。って何で離れるんだい坊や……ほら、もし変なことをしたら、一生坊やに近づかないって誓うから。ね?……今度はすぐに来たね。これはこれで傷つくよ……』



「今までを振り返れば当然だろ。で、それはどんな魔法?」



『クフ。<カミリ・マジナ>さ。これをかければ、私と同じように、魔力を見えるようになる。西の民が使う高等魔法でね。もともとは対精霊用の魔法なんだが、今の坊やには自分を知ってもらわないとだからね』



僕の額に手を当て、詠唱を始めるキリコ。じわじわとその手が熱を帯び、僕の目に流れ込んでくる。



『そのまま……よし。ん〜っと、確か効果が現れるには、3時間……いや、12時間……6時間……あれ、どのくらい目を閉じる必要があったかな……人に使うのは初めてだから……ふむ。困った』



丸聞こえだぞキリコ!困ったで済ますな!マジか?僕はこのまま目を閉じて明日を迎えるのか?世界最悪の盗賊が来るのに?瞬殺されるぞ!



『ま、坊やは心配しなくてもいいよ。とりあえず、お休み』



首筋にトン…と手刀を当てられ、キリコに恨み言を言う間もなく、僕の意識はだんだんと遠くなっていった。



☆★☆



いとも容易く

人を殺し

村を焼く

そこに歓喜を

快楽を

狂喜を抱くその姿

人は嫌悪と恐れを織り混ぜながら

そんなかれらをこう呼ぶのだ

人外の獣「赤月の群狼」と



「しゃあ!待ちわびたぜ。俺は先に行くからな。てめえの出番はねえから、そこで昼寝でもしてな」



傷だらけの胸当てをつけ、大剣を片手に雄叫びをあげるレイモンド。やっと苦痛でしかなかった生活から解放されるのだ。すぐさま村に向かおうとする。



「アホか。魔道具の実験兼ねてるって何回言えばいいんだよ。むしろお前が邪魔だ」




ルクスは迷っていた。今のうちにレイモンドは殺しておいた方がいいのではないかと。この単細胞は、間違いなく邪魔だ。目的の一つである山に住まう魔獸を殺す可能性も否定できない。目付け役でなかったらとうに殺していたが……鼻息を荒くしてレイモンドは足早に進んでいく。




魔獸に殺られたと報告すればいいか……面倒になったルクスはそう結論付け、魔法の詠唱を始めようと右手をレイモンドに向けた。



そんな彼の肩を、小さな手が触れる。



「面白いニュースがあるんだ」



メッカだ。いつもと変わらぬ真っ黒な外套を着た彼女は、笑みを浮かべながら小声で囁いてきた。



「なんだってんだ?」



段々と遠ざかるレイモンドから視線を逸らさずに、ルクスは早く言うように促した。



「今朝、私の部下が、あの村に血染めの戦鬼の目撃情報ありって報告してきたのさ……私には嬉しいニュースなんだけどね〜。あんたにはどう?」



「……ギルバードの双璧か……レイモンドには言ってないようだな」



「ん〜……あいつは戦うのが仕事だから。血染めの戦鬼がどんな戦いをするのかの方が私には興味があるし」



「まぁ、それもそうだな……ったく、運がいいんだか悪いんだか。今回はデータを取るだけだ。精々魔物どもに頑張ってもらうとしよう」



「ところでさ、レイモンドが何秒持つか賭けない?」


「1秒だ。血染めの戦鬼が相手じゃ分が悪いって話じゃねぇ。瞬殺だ」



「へ〜〜、それはそれは……よし、私は優しいから2秒に賭けよう。当たった方に金貨10枚!恨みっこなしだからね」



「いいからすぐに準備しろ。俺たちも行くぞ。それと、耳元で騒ぐな」



「痛!お尻蹴るなよ!団長にセクハラ受けたって訴えるぞ!」



後ろに手を回して痛むお尻を擦りながら、さっさと行こうとするルクスを追いかけるメッカ。



ギルバード暦241年 クリムとルクス、宿命深き2人は出会うことになる。

久々の投稿です。すみません。



文才は皆無なので……暇潰しにどうぞ。展開が気に入らない方はすみません。あまり読者様の反応考え過ぎると、書くのが嫌になってきてしまうという現象に陥ってしまうので、気の向くままに書くことにしました。



これからもこんな感じに進みます。よろしくお願いします!


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