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三十二話 戦闘準備

ヨゼさんはいい人だ。屋敷崩壊の音を聞きつけ即座に駆けつけてくれた。そのままのびてた僕を自分の屋敷まで運んでくれたのもヨゼさんらしい。そのことでひと悶着あったらしいけど、どうせキリコが何かごねたんだろう。



『でね坊や。空間魔法っていうのは…使い方によっては魔戦技に入るのかな。とにかく、空間に干渉する手段を手に入れるということにつきるんだ。まぁ、これは私の持論だし、見たことはないがね。ある意味最強の魔法だと思わないかい?一瞬で空間を瞬間移動!ほら、私に教えを乞いたくなってきただろう?』



こいつは…何て言うか…タフだよな。僕は今、ヨゼさん宅にお邪魔している。親切にもベッドを貸してもらっていた。特に怪我をしたわけではないが、念のため。シルーレが右隣で申し訳なさそうに僕を見つめている。



キリコはこの通り。何を喋り出すかと思えば…他に言うことがあると思うんだが。隣にいるシルーレの態度に感じることは微塵もないようだ。キリコ先生とそんなに呼ばれたいのだろうか。



「でねの使い方間違ってるぞキリコ…それより、明日は赤月の群狼って相手がお前を狙ってくるんだろ?大丈夫なの?」



ヨゼさんに一通り説明してもらったが、これには驚いた。あんな馬鹿な争いに時間を費やしてしまった自分が恨めしい。



すると、キリコは胸を張り高らかに言った。



『クフフ。私が負けるとでもいうのかな?それに、こういう時は、坊やが守ってやる!と決意を固めるものではないかい』



不安な様子はまるでない。そして何故か、キリコは目を細めて僕の頬っぺたをつねってきた。



「ふぅ…キリコは分かってないよ」



シルーレはその手をバシッと弾き、はっきりと言った。



「いい?赤月の群狼っていうのは、未だに正体が掴めない世界最悪の盗賊の一つなんだ。闇ギルドの中枢だとも言われてて、各国が血眼で捕まえようとしてる組織なんだよ。目的も組織のトップも不明の残忍な狼集団。皆殺しの目にあった村は数えきれないんだ」



真剣な表情で重々しくも淡々と話すシルーレ。その表情は暗い影を宿しているように見えた。



『やけに詳しいね。お嬢さんは赤月の群狼とやらに私怨があるのかな?』



キリコはそんなシルーレを覗き込むように観察していた。その口元は興味深そうにニヤけている。



「あなたには関係ないよ」


つんと拗ねるシルーレ。間違いなく赤月の群狼と因縁がありそうだ。気が昂ってるように見える。明日にはもう襲ってくるんだ…そこまでの相手だとすると、果たして僕は力になれるだろうか…



「クリムは明日は村人と一緒に避難だって。カストールが言ってたよ。ボクなら大丈夫だから、心配しないでね!」



「ははっ。シルーレもでしょ?言っておくけど僕も一緒に行くよ」



「ちょっクリム!何言ってるの?駄目だよ。絶対駄目!」



さらに抗議の声をあげようとするシルーレの頬を、無造作に両手で左右に引っ張った。シルーレが立ち向かうなら、僕が逃げるわけにはいかない。初めての友達なんだ。絶対失いたくない。



「ふひみゅ(クリム)?」



「うん。シルーレは僕が守る。光ちゃんもいるんだ。足手まといにはならないから」



「……」



みるみる赤面するシルーレ。顔の熱が直に僕の手に伝わってくる。こんな熱いこと言う人じゃなかったんだけどね。人間変わるもんだ。前世の僕なら死んでもこんな…ってあれ?死んだら言えるもんだね。



『ずるいぞ坊や!』



「いて!」



すかざずキリコが脳天にチョップを入れてきた。地味に痛いんだけど。結構本気で打ったなこのやろー。



『それは私に言って欲しい。あと光ちゃんって誰かな?浮気を許すほど私は寛容ではないので注意したまえ』



「いや、精霊のことだし。浮気の意味も分からない。とりあえず、あの古書を貸して。少しでも強くなる可能性があるなら、それにかけてみたい。頼むよ、キリコ先生」



『ぐ……その顔は反則だ…しかも、キ、キリコ先生と……任せたまえ坊や!今すぐに持ってくるから待っていたまえすぐに始めよう!』



即座に立ち上がってドアを蹴り飛ばして出ていった。…超嬉しそうだったな…変なスイッチが入ったようだ。相変わらずよく分からない。



さて、もう時間も残り少ない。ジジイも説得しなくちゃだろうな…これが最悪の関門だな。ま、意地の張り合いだったら負けないさ。何とかしてみせる。




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