外伝 驚異のフットワーク〜ローラ姫
最近、自分の精神年齢が劇的に下がってるのではないかと疑問に思う。前世では、割りとクールだったような。一歩引いて物事を見てただけかもだけど。周りが子供として扱うからか…………友達もシルーレ(子供)しかいないし、いや元々自分はガキっぽかったのか…………
自分のキャラ探しを部屋のベットに寝転がりながら黙々とする僕。この時点で十分ガキかな〜っと思い始めたその時だった。
「クリム様!あっあの!」
リリスが息を切らせてやって来た。なんだろ?いつも冷静なしっかりもののリリスらしくない。母上が妊娠した時の狼狽っぷりが懐かしく思える。
「久しぶりじゃのう、クリム」
リリスの後ろに幻覚が見えた。おまけに幻聴も聞こえてきた。僕はいつの間に寝たんだろうか。間違ってもここにいるはずがない、王国トップクラスの高貴なお方がそこにいた。
「おいクリム!妾の顔を見忘れたか?」
はて、どこの暴れん坊将軍だろう。少し背が伸びた紺色のドレスを着たローラ姫が、腰に手をあて叫んでいる。一年ぶりになるのかな。時が経つのを早く感じるのは、どこの世界でも同じらしい。
相も変わらず神出鬼没だ。一国の姫が、何の連絡もなしにお忍びで来るとか、かなり無理があると思うんだけど。いつか国王に直訴してやろうか。これは心臓に悪すぎる。
「…………ローラ様。お久しぶりにございます」
現実を認めることにして、身体を起こしてそのまま方膝を地面につけた。王家と公の場で挨拶する作法は、右手を胸に当て、膝をついてお決まりの文句を言わないといけない。だがこの場はいらなかったみたいだ。いらん、と言われたので、ゆっくり立ちあがりながら用件を聞いてみた。
「うむ。マリアのことは残念じゃったな。まだまだこの国に必要な人材であったのに…………」
「…………本当に…………そう言っていただけて、母も喜んでいると思います。」
「そうか……お主は死ぬなよ。死んだら妾が許さんからな。それだけは心に刻み付けておけ」
どうやら、僕のことを心配していてくれていたらしい。強い意思が、彼女の優しさがその瞳から直に伝わってきた。それは嬉しいけど、一回会っただけだぞ?そこまでしてもらう程のことをした覚えがない。よく分からないけど、期待されてるのかな。父上のせいかもしれない。どんな荒唐無稽な自慢話をしたのだろうか。
「今日はアレンに話があってな。お主ともゆっくり話あってみたかたしの。また城を抜け出してきた。なに、クリムに会いに行くと書いた紙を父の書斎に置いといたから心配はいらん。アイリも連れてきておる」
わざわざ僕の名前を書いたんですか!変な噂が間違ってもたちませんように…………おっと、またアイリさんに気づかなかった。ローラ姫の存在感が半端ないから、つい目線が一ヶ所に集中してしまう。黙って一歩後ろで控えていたアイリさんと目が合った。
「お久しぶりです。クリム様。ローラ様が会えるのを楽しみにしていたんですよ。ここに来るまでのご様子をお伝えしたいくら…………」
「前はゆっくり話せなかったからのう!後で一緒に紅茶でも飲もうか!アレンにも話があるからクリムよ。案内を頼む!」
早口で捲し立て、ローラ姫は一人歩き出した。不味い、逆方向だ…………何この指摘しづらい感じ。案内人の先を進んでどうするのか?
アイリさんはくすくすと小さく笑いながら後ろを歩いていく。
本当の姉妹みたいだ。
さて、父上はローラ姫と会ったらどんな反応するかな?ちょっとでも気が晴れてくれればいいな。
ノリで書いてしまった…………まぁ、たまにはいいですよね。
拙い文章ですが、お楽しみいただければ幸いです。