十七話 悲しみ乗り越え六歳に
あの日からクレハの面倒を見始めた僕だが、来年にはラスルコフ学園に通わなくちゃいけない。馬車を使って半日程かかる道程だ。寮に入らなくちゃだし、何とかしないと…………もうあれだね。街にある普通の学校でよくね。市民や商人の子たちが行く学校の方が気楽でいい。
リリスには駄目ですと、ラミレス家のご子息が名もない学校に入るなんて、ありえませんとかなんとか。ターニャ姐にも、ラスルコフ学園に行くって言っちゃったしどうしたものか。
父上は精力的に執務に勤しんでる。父上の執務室には前よりも多くの人が訪れるようになった。ひたすら仕事に没頭している。
時間が父上を癒してくれればいいが…………僕には労ることしか出来ない。一日に飲む酒の量が明らかに増えていた。
兄上、ムウリはラスルコフ学園から、王国軍騎士団に入隊した。彼はラミレス家次期当主なのだ。すぐに出世し功績を挙げることだろう。スメルは騎士団に入る気はないようで、気ままに遊んでいる。ラスルコフ学院に進学する気なのだろうか。良くは知らない。
ターニャ姐はまだまだ学園生活が残っている。名残惜しそうに戻っていった。そうそう、シルーレとも模擬戦をやってたんだ。ターニャ姐の圧勝だった。あの強さの源が知りたい。何故あんなに強いんだろうか…………父上はターニャ姐に剣の師匠はつけてなかったんだけどな…………
まぁ、なんやかんやで屋敷が一気に狭くなった。午後からジジイが来てくれるそうだが、全然嬉しくない…………クレハをあやしながら、魔道書を紐解いた。人間の死亡率並みの確率で使うことになるからだ。
赤ちゃんてこんなに可愛いんだな〜……お、笑ってる笑ってる。はぁ〜癒されるな……お、光ちゃんがやってきた。揺りかごを前に膝をつき、両肘を揺りかごに、手を顎の下に置き鼻歌唄ってるのかってくらいご機嫌な笑顔でクレハを見つめている。
約3年の付き合いだが…………誰だこいつ?…………こんなデレデレしている光ちゃんは見たことない。正直気持ち悪い。
クレハも、光ちゃんを見えているかのような反応をするんだよな…………もしかしたら、僕以上に才能があるのかも。まぁまだ0歳。すくすくと育って欲しい。
「おい坊主!来たぜ。今日は街を出るからな。気合い入れろよ。」
「あ〜〜ん!!!!!!」
やべ、クレハがジジイの声が聞こえた途端大泣きした。まぁ、もじゃもじゃの白髭男が突然入ってきたんだ。クレハは空気に敏感だし、ダブルでビックリしたのかもしれない。メイドさんに呼んでもらえばいいのにさ、全く。
…………あれ…………光ちゃんがジジイにガンつけてる。めちゃ近い。けどジジイは気づかない。幽霊が巨漢に喧嘩を売る図。結構希少価値がありそうだ。無反応に怒ったか、ジジイの前でファイティングポーズを取る光ちゃん。世紀の一戦が見れる!
「おぉすまんすまん。シルーレ連れて早くこい。ギルドにもよってかにゃあいかんからな」
わきゃないか。頭を掻きながら去っていくジジイ。その後ろ姿に殴り付ける動作をする光ちゃん。いや、これはこれでありか…………面白い。
「は〜い」
クレハを抱っこしつつ、珍しいものが見れた興奮と、外に初めて出るという期待で僕の胸は膨らんだ。
書いてるって知らない弟に、この小説の感想聞いてみました。
「日間一位にはなれない作品かな」
だって。いや〜……笑えます。確かに今の読者さんの数がもう奇跡!
テンポだけが取り柄のヘンテコ小説。どうかよろしくお願いします。評価等頂ければ幸いです。