ひとがいきる。
私は道を歩いている。
あちらから誰かが歩いてくる。
道幅は二人がすれ違えるほどのものではない。
誰かは半身になることなく、こちらにきたので、仕方なく私は立ち止まり体勢を横にしてやりすごした。
何かを思った。
私は買い物をしている。
二つのレジにはそれぞれ数人が会計待ちをしている。
並んでいる人の買い物かごの量を見て、私は一方の列に並んだ。
効率よく進む隣のレジとは裏腹に、こちら側は並んだ誰かが会計でクレカを取り出して、取り扱いに手をこまねいている。
何かを思った。
私はアルバイトを探している。
面接はほどなく終わり、出勤開始日がやってきた。
想像以上の過酷な環境が待ち受けていた。
親子ほどの年齢差の上司が老いた部下を怒鳴りつけている。
私は高時給と労働環境を天秤にかけている。
何かを思った。
わたしは生前、悪行が人生の大半を占めて地獄へ落ちた。
わたしは生前、無意識に一つの善をおこなった。
神様が地獄と天国をつなぐ一本の細い糸を垂らしてくれている。
わたしは必死にその糸を登りはじめた。
誰かが、わたしの下からつづいてきた。
さらに誰かが、今にも切れそうな糸に手をかけようとしている。
わたしは思った。
誰かはわたしだ。




