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めげない、逃げない、諦めない!


「好きです!」


「好きですっ!」


「大好きです!山田先輩!!」



三回同じ人に告白して三回ともフラれた。

返ってきた言葉はゴメンのみ。見事な撃沈だ。

シクシクシク……




琴音(ことね)も入学早々よくやるわね〜。普通は一回目で諦めるもんでしょ?」


だって一目惚れだったんだもん。溢れる思いが止められなかったんだもん。

でももうこれ以上付きまとってはストーカー認定されてしまう。いやもう一週間で三回告白した時点でアウトかもしれんが……


「レイちゃん!私は一体どうしたらいいのっ?」

「知らないわよ。でもなんで弟の方なの?」


「なんでって……山田先輩って、お兄さんいるの?」

「あんた、そんなことも知らずに告白してたの?」




────────山田兄弟。


高校三年生の双子の兄弟。

兄、奏真(そうま)は成績優秀、サッカー部キャプテン、生徒会長、容姿端麗とまさに現代のリアル王子様。

面倒見がよくて誰にでも優しくて当然女子からもモテモテだ。


一方弟、朔真(さくま)の方は兄に比べて特に目立った部分はなく、大人しいと言うより地味な雰囲気を醸し出している。

女子からは出来損ないの方と呼ばれていた。


「出来損ないってなにっ?失礼じゃない?!」

「実際周りともあんまり関わろうとしないらしいし。琴音ってば昔っから変わった男を好きになるわよね。」


みんなにはなぜ山田先輩の良さが分からないのだろうか。

あの無造作に伸びた柔らかそうなくせっ毛。

黒縁メガネに猫背気味の背中。

神経質そうな白くて細い指先……


どれもこれもサイコーなのに……!



「決めたわレイちゃん、私、諦めないから!」

「逆にあんたどうしたら諦めるわけ?」


作戦会議をしようと言ったらレイちゃんに逃げられた。

酷いっ……ちょっとくらい相談に乗ってくれたっていいのにっ……!




「君って、噂のお団子ちゃん?」



キラっキラの笑顔で背中にバラを背負ってそうな人が話しかけてきた。

上靴のラインの色からして三年生だ。

一緒にいるお仲間も見るからにカースト上位の集団って感じの人達だった。

私が苦手とする人種である。


「確かに私は髪をひとつに丸めてますが、噂のお団子ちゃんかどうかは分かんないです。」

「公衆の面前で告白したんだよね?俺の弟に。」



─────────!!


弟ということは、この人は山田先輩のお兄さん?!

そういえばそこはかとなく顔が似ているような気がする。雰囲気は真逆だけど。


「そ、そうです告白しました!1年2組の木村 琴音と申しますっ!」

「なんかゴメンね。サク断ったんだってね。」


別に山田兄が謝ることではない。むしろご迷惑をかけているのは私の方だ。

しかしこれはチャンスだ。身内という立場なら、なにかしら山田先輩に関するヒントが頂けるかもしれない。


「そうだねえ。サクは甘いものとluxっていうアイドルグループが好きだったりはするけど。」


好きなもの……

そうだよ、そういうのを攻めていけばいいんだよ!

甘いものってことは手作りお菓子をプレゼントしちゃう?

お菓子とか一切作ったことないけど。


アイドルグループってことは歌やダンスを覚えて一緒に楽しく踊ったりしちゃう?

音痴だしリズム感もゼロだけど、なんとかなる!


「ありがとうございます!今日から特訓しますっ!」

「まあ頑張ってね。応援してる。」


山田兄は爽やかな笑顔を残して仲間の元へと去っていった。

なんて良い人なんだろう……さすが山田先輩の双子のお兄さんだ。


その日から三日三晩、踊りながらクッキーを焼いた。








「ねえ琴音……この黒い塊はちゃんと味見はしたの?」


レイちゃんが朝から失礼なことを言ってきた。

そりゃちょっと焦がしちゃったけれど、山田先輩のために作ってきた可愛らしいハート型のクッキーなのに。


「大丈夫。パパは世界一美味しいって喜んでたから。」

「そりゃあの娘ラブな琴音パパならそう言うでしょうよ。」


「ダンスも覚えてきたんだよ?見て見て。」

「とうとう狂ったんだなとしか見えんわ。」


甘いお菓子もluxも用意万全!

何を言われたって私はめげない。今日の私は無敵なの。



待っててねっ、山田先輩っ───────!






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