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11月09日、日曜日

 日曜日の朝、スマホが震えて目が覚めた。

 ……一ノ瀬の名前が表示されている。

 十分くらい迷ってから、その名前に触れる。


『あと30日。俺、柊のこと諦めたくない。何が嫌だったのか、ちゃんと教えてほしい』


 なんかもう……なんか、もう……。

 目が熱くなって、スマホの画面がぼやけてよく見えない。

 なんでそんなにしつこいの。

 放っておいてよ、私のことなんか。

 明るくてかわいいメイサちゃんと仲良くしてればいいじゃん。


 スマホを伏せて起き上がる。

 隣の部屋のドアをガンガン叩いた。


「お兄ちゃーん、バイク乗せてよー!」

「は? なんだよ、朝っぱらから……うっわ、何そのブス顔……」

「バイク乗せて。海行きたい」

「えー……。とりあえず顔洗って、着替えてこいよ」

「うん。ありがと」


 支度をして玄関を出たら、お兄ちゃんがバイクのエンジンをかけた。

 ヘルメットを受け取って後ろに乗り込む。


「朝飯、何がいい?」

「パンケーキ。クリームがあふれるくらいのやつ」

「海のとこのパンケーキ屋でいい? エッグなんとか」

「うん。ありがと」


 バイクはけっこう好きだ。

 話さなくていいし、泣いてたって、すぐ乾く。

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