10月19日、日曜日
「一ノ瀬、頑張ってんね」
「そだね」
結と一緒にスポーツ公園のサッカーコートに来ている。
どこが見やすいのかわからないから、とりあえず真ん中らへんに座った。
一ノ瀬は昨日と同じで、ずっと走り回ってる。
「あ、一ノ瀬、手え振ってるよ。莉子ち、場所教えた?」
「うん。教えてって言われてたから」
ヒラヒラと手を振り返すと一ノ瀬は笑顔でまた走りだす。
女マネの一年生が睨んできてて、メイサちゃんもこっちに手を振ってくれる。
「……莉子ち、ずいぶん丸くなったよね」
「そうかなあ」
「そうだよ。最初は話しかけられるのもウザそうだったじゃん」
「……なんか、でっかい犬が懐いてるみたいっていうか」
たまに手にキスしてくるのも、犬が舐めてると思えば……まあ、ドキドキせずに済むし。
「あ、終わった。すごいね、うちサッカー部強かったんだ」
「そうみたい」
「柊ー! 勝てたー! あと51日!」
「はいはい」
一ノ瀬はまた手を振って、他の部員のところに向かっていった。
「愛されんねー」
「そうかなあ」
「んー、それくらいは信じてあげないと可哀想じゃない?」
うまく返事ができなかった。
そうかなあ。
コートの隅で一ノ瀬は双葉くんとメイサちゃんに挟まれて、楽しそうに笑っている。
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