10月12日、日曜日
夕方、宿題をしていたらスマホが震えた。
表示されたのは一ノ瀬の名前で、ニャインじゃなくて通話だ。
「……はい」
『あ、柊! 今いい?』
「ちょっとね。宿題してるから」
『昨日ありがと。柊が応援してくれたから、勝てた』
「一ノ瀬活躍してたじゃん。私がいなくたって……」
『いーや、柊が応援してくれたから活躍できたんだ。ありがと、来てくれて』
「……いいよ、別に」
『ね、勝ったからほめて。ご褒美ほしい』
何それ。
ご褒美……?
「何がほしいの?」
『言っといてあれだけど、くれると思ってなかったから考えてなかった。ハグとチュー』
「せ、セクハラ……!」
『ごめん。それは58日後に。あ、この間薦めてもらった本読んだよ。東野圭吾。面白かったから、明日の昼に一緒に図書室行こう。それで、またなんか薦めてよ。それがご褒美」
「いいけどさ」
なんか誤魔化された気がする。58日後もハグもチューもしないよ。
……しないよ……?
スマホの向こうでは一ノ瀬が嬉しそうに本の感想を言っている。
相づちを打って、「そこ、いいよね。あとさ、その続きのとこが……」なんて返事をする。
……別に、楽しくないし。
その本が好きなだけだし。
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