10月02日、木曜日
朝のホームルーム前、席でスマホをいじってたら、いつもより遅く一ノ瀬が教室に入ってきた。
「はよ、柊、あのさ」
「……ん」
見上げると、一ノ瀬がムスッと私を見下ろしていた。
「どしたの」
「……明日、俺と文化祭周ってくれる?」
「その約束だったと思うけど」
そう言うと、一ノ瀬は「そっか……」と呟いて、やっとカバンを下ろした。
「……昨日さ、絡まれてたでしょ。うちの1年に」
「見てたんだ?」
「うん。止めに入る前に、柊は行っちゃったけど」
一ノ瀬は机に突っ伏して、顔だけ私に向けてきた。
「柊、ごめん。俺のせいで」
「……こんなことがないように、もう私に構わないでって言ったほうがいい?」
「や、やだ! それは、嫌だ」
「あっそ」
「……柊?」
「明日、楽しませてくれるんでしょ」
「……うん。めちゃくちゃ楽しませる。高校の文化祭で1番楽しかったって思わせるから」
担任が教室に入ってくる。
日直が号令をかけて、挨拶をする。
「ね、柊。あと68日だ」
眩しそうに目を細める一ノ瀬に、小さく頷いてみせた。
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