9月26日、金曜日
部活が終わって帰ろうとしたら、一ノ瀬が走ってきた。
「柊、部活終わった? 一緒に帰ろう」
「やだ」
「……柊さ、体育嫌い?」
「うん、嫌い」
気づいたら、一ノ瀬が勝手に隣を歩いてる。
「ルールを最初に言わないくせに、こっちが思ったとおりにしないと怒るの、意味わかんない」
「……そっか」
それきり、なにも言わない。
黙ったまま、駅に着く。
「あのさ、体育は嫌いでもいいんだけどさ」
「うん」
「俺のことは好きになってほしいな」
「……それ、関係ないじゃん」
「あはは」
一ノ瀬は笑って、私を見ている。
「うまいこと言おうと思ったけどダメだった。あと74日。四分の一過ぎたけど、少しは好きになってくれた?」
「……ぜんぜん」
「でも、一緒に帰るし、LINEもしてるし、好きなおやつも教えてくれた。前とは違う」
「なにそれ」
「これが四倍になったら、きっと柊は俺のこと好きになってくれる。俺は……そう期待してる」
なにそれ。
どこから来るの、その自信。
体育と全然関係ない話になってるし。
「また、明日。部活しに来るだろ?」
「……うん」
「会えるの、楽しみにしてる」
一ノ瀬は手を振って改札を抜けていった。
私は、その背中が見えなくなるまで立ち尽くしてた。
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