9月19日、金曜日
週末は朝から雨で、いつもよりゆっくり学校に向かう。
昼を過ぎても雨はザアザア降っていて、風も強くなってきた。
「なんか台風みたい」
思わず呟くと、隣の席の一ノ瀬が私と窓の間に割って入ってきた。
「柊は傘ある?」
「あるよ。朝から降ってたし」
「だよなー。忘れててくれたら、相合傘したのに」
「忘れててもしないから」
「園芸部、この天気ならやんないだろ? 俺も休みだから駅まで一緒に帰ろ」
「やだよ」
なんて言ってたのに、一ノ瀬と並んで校門を出た途端、風で傘がへし折れた。
「うそでしょ……」
「ちょ、柊、こっち入れ、濡れるから」
「ひえっ」
一ノ瀬に肩を抱き寄せられる。
腕の力が思ったより強い。傘を持つ手は骨張っていて、まさに男の子の手だ。
腕も太いし、ちょっと待って……。
「嫌かもだけど、駅まで我慢して。濡れて風邪とか引かれたら嫌だから」
「う、うん……」
私はへし折れた傘を抱えて、一ノ瀬の隣を歩く。
隣というより、近すぎて――もう何がなんだか……。
駅に着くと、一ノ瀬はカバンからタオルを出してきた。
「使って、きれいだから」
「あ、うん……ありがと……」
「なんかしおらしいね。どした?」
「や、何でもない。えっと、ありがと、入れてくれて」
「俺、柊と相合傘したかったんだ。だって、あと81日だし」
――「じゃあ、また」
そう言って一ノ瀬は行ってしまった。
私は借りたタオルとへし折れた傘を握ったまま、半分以上濡れている一ノ瀬の背中を見送った。
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