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12月09日、火曜日

 朝、部活のために学校に行ったら校門の前に颯くんが立っていた。

 近づくと眉間にシワを寄せて私を真っ直ぐに見ている。


「莉子、おはよ。誕生日おめでとう」

「おはよう、颯くん。そのために待っててくれたの?」

「……ううん。告白するために待ってた。柊莉子、好きだ。付き合ってください」


 真っ赤な顔で、颯くんが手を差し出す。

 その手をそっと握った。


「……はい。私も一ノ瀬颯くんのことが好きです。よろしくお願いします」

「マジか……よかった……」


 颯くんの顔にやっと笑顔が浮かんで、同時にちょっと涙目になる。


「や、めちゃくちゃ緊張した。心臓痛えよ……」

「私もドキドキしちゃった。まさか朝一で来ると思わなくて」

「あはは、そうだよな」


 手をつないだまま、ゆっくり校門をくぐる。


「いや、タイミング悩んだんだけどさ、放課後だと、そのあと一緒にいられる時間短いじゃん? 朝一なら、今日一日彼氏彼女で過ごせるから、早い方がいいかなってさ」

「ふふ、そうだね」

「……莉子はさ、最初嫌がってたじゃん。俺がカウントダウンするの。いつから、俺のこと好きになってくれたの?」

「んー……、文化祭、楽しませてくれたときと、そのあと、映画の感想が納得しかなかったときと、私が勧めた本、面白いって言ってたときとか、かな」


 颯くんはニコニコしながら私を覗き込んだ。


「そっか。これからも楽しませるから、期待しといてくれ。そのゴムも似合ってる。ありがと、つけてきてくれて」

「うん。颯くんは、なんで私に告白しようと思ったの? 100日もかけて」

「言わなかったっけ? 夏休みに水やりしてる顔がかわいかったからだよ。めちゃくちゃ優しい顔してたから、俺のこともそんな顔で見て欲しかった。100日かけたのは、莉子が俺に興味ないのわかってたからね」

「興味、なさそうだった?」

「うん」


 中庭について、ニヤッと笑って颯くんは立ち止まった。

 花壇ではパンジーとビオラ、シクラメンが満開だ。


「夏休みの間、水飲み場とか校庭で何回かすれ違ったけど俺に気付きもしなかったからな」

「そ、そうなんだ。ごめん」

「いいよ。今はちゃんと俺に気付いて、好きになってくれたから」


 手を繋いだまま、颯くんはじっと私を見ている。

 私は、どんな顔をしているだろう。


「莉子、あのさ、嫌だったらそう言ってほしいんだけど」

「う、うん。なに?」

「キス、していい?」


 思わず周りを見るけど、朝7時半の中庭には誰もいない。


「……うん、いいよ」

「ありがと」


 つないでないほうの手が、私の腕に触れた。

 見上げると、颯くんは真剣な顔で、でも瞳だけが熱っぽく揺れている。

 目を閉じた。

 唇に温かくて柔らかいものが触れる。

 一秒かもしれないし、一分かもしれない。もしかしたら十分くらいそうしてたのかもしれない。

 それくらいして、唇が離れた。


「ヤバ……嬉しすぎて爆発しそう」

「そ……そだね……すごいドキドキする……」

「爆発したら、ちゃんと俺のことかき集めてくれよ」

「え、しないでよ。これからキスするたびに爆発されたら、困る」

「あの、あんまりかわいいこと言わないで。俺、余裕ないから」

「そうなんだ?」

「うん、莉子のことめちゃくちゃ抱きしめたいけど、部活いけなくなるから我慢してる」

「そっか」

「ちょ、残念そうな顔しないでくれよ」


 名残惜しいけど、颯くんは少し離れた。

 帰りじゃなくたって、十分離れがたい。


「あ、誕生日プレゼントも教室行ったら渡す」

「ありがとう。えへへ、嬉しい」

「家族以外で一番最初におめでとうって言いたかったから、待ってたんだよ。あ、でも俺、そろそろ部活行かなきゃ。またあとで」

「うん、頑張ってね」


 小さく手を振ったら、その手を颯くんに握られた。

 顔が一気に近づいて、唇が一瞬重なる。


「じゃ、行ってくる!」

「もー……、行ってらっしゃい」


 颯くんの満面の笑みに、私も同じくらいの笑顔で見送った。

明日、颯視点の話を公開して完結となります。


ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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