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Space Mantis Line~宇宙蟷螂戦線~  作者: 鳳飛鳥
#.1北海道奪還戦線

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第14話:宇宙カマキリの由来と宇宙の歴史

古代宇宙帝国……その始まりは今からおおよそ300万年前に遡る。


 現在の時点で確認されて居る宙域内で最も早く宇宙(そら)へと上がったその国は、たった一人の皇帝を頂く専制君主国家で有り、その名の通りの帝国主義国家だった。


 母星で抱えきれない程に人口が増えたその星の皇帝は、無限の宇宙に開拓地(フロンティア)を求め、無数の宇宙船で宇宙へと漕ぎ出したのだ。


 無論、母星とその宙域に幾つものコロニーを建造し、主要惑星のテラフォーミングも行ったが、ソレでも足りない領土を求めて四方八方へと開拓の手を伸ばして行った。


 その際に用いられたのが、現在【亜人(デミヒューマン)】や【強化人間(ブーステッドマン)】等と呼ばれる遺伝子改造を施された人類や、【結晶巨獣(クリスタルモンスター)】と言った宇宙怪獣等である。


 本書で主に解説する【宇宙カマキリ】も区分としては宇宙怪獣と言う事になるのだが、他の宇宙怪獣の多くが宇宙空間を主な活動エリアとし、宙域の制圧を目的として開発されたのに対して宇宙カマキリは亜人同様に惑星の制圧を目的とした物と推測される。


 同様の運用目的で制作されたゴブリンやオークと言った亜人種は、現在では生物兵器と言う区分から脱却し一般社会に溶け込む存在と成っているが、宇宙カマキリは未だ無数の卵が宇宙を飛び交う未開惑星にとっては【災害】と言って良い存在だろう。


 今でも稀に銀河連邦共和国内の惑星に卵が落ちる事は有るが【超硬バイオキチン】をも分解する【キチンブラスター】が、比較的安価に量産可能である為共和国内での被害は皆無

 と言って良い。


 しかし問題は星系間航行技術を持つに至って居ない後進文明惑星に落下した場合である。


 古代宇宙帝国の蛮行を省みて制定された【特有文明保護条約】に依って、自力で宇宙へと上がって居ない惑星に対しては保護と観察までで、接触は最低でも有人宇宙飛行を経験しなければ成らないと言うこの条約が有る事で技術提供が妨げられているのだ。


 人類が生存可能な惑星に落ちた宇宙カマキリの卵は孵化すると、その惑星に生きる様々な動物を食い散らかし繁殖し、地上の動物をほぼ駆逐すると今度は共食いを初める。


 そうして数を減らしていった結果、最後に残った仮称【マザー】と呼ばれる個体は、肥大化した自身を炸裂させる事で無数の卵を再び宇宙へと撃ち放つのだ。


 その為、未だ文明を持たない惑星に宇宙カマキリの卵が落下したのを早期に発見した場合には、近隣星系合同軍を立ち上げ対処にあたる事になるが、発見が遅れ駆逐が難しいと判断された場合には【惑星破壊兵器】が使用され星ごと宇宙カマキリを殲滅する事になる。


「……マジかよ」


 専用の電子端末で昨日買った宇宙カマキリに関する書籍を読んでいたシンは、書かれている内容に戦慄を覚え思わずそんな独り言を漏らした。


 この電子書籍の内容が100%事実なのだとしたら、宇宙カマキリの卵……エキドナ彗星は有史以来様々な文献にその存在が記されている彗星で有り、天文学者ならば誰でも知っていると言えるレベルの存在だ。


 ソレが今まで運良く破裂しなかったが、もしも万が一ユーリー・ガガーリンが宇宙へと上がる前に破裂して居たならば、今の地球人類は生きては居なかったと言う事になる。


 良くて地球が存在する天の川銀河を内包する銀河連邦共和国とやらの植民地、下手をすれば惑星破壊兵器とやらで星ごと宇宙から消滅して居た可能性だって有るわけだ。


「この本の通りなら、地球は宇宙(うちゅう)には出ているが星系間航行技術を持たない、後進文明惑星の区分になるんだな」


 特有文明保護条約と言う文言に関する説明は書かれていない所から察するに、恐らくは銀河連邦共和国内ならば誰も普通に知ってる一般教養レベルの条約なのだろう。


 ソレを鑑みれば恐らくは銀河連邦としては宇宙に上がっていなくても、文明を持つ惑星に宇宙カマキリの卵が落ちたならば助けたいと考える者が多く居るのだが、他の国と足並みを揃える為の条約が有る事で助ける事が出来ないと言う状況なのだと思われた。


 今ですら圧倒的な技術力の差を目の当たりにして居る状況だと言うのに、前述した宇宙飛行士が有人宇宙飛行に成功したのは第二次世界大戦後の事で、ソレ以前の地球に宇宙人が来訪し保護的な政策を取らなければ植民地化待った無しだろう。


 恐らくは古代宇宙帝国とやらはそうした強引な同化政策を取り続けたが故に、何等かの切欠で反乱か何かが起きて滅んだのではなかろうか?


「うん、今度は古代宇宙帝国とやらに関する書籍を買ってみるか」


 基本的に考古学的な物よりも近現代のしっかりとした資料が残っている時代を好むシンでは有るが、古代宇宙帝国と言う言葉にロマンの様な物を感じない訳では無い。


 まぁ【古代】と冠しては居る物の今の時代から見て遥か昔に繁栄した国と言うだけで、現在の地球からすれば遠い未来の技術を有していた国家である事は間違いない筈なので、それ相応の資料なんかもしっかりと残っている筈だ。


 久し振りに【歴史家】名乗る程に専門家を気取る気は無いが、ソレでも歴史好きとしての好奇心が疼くのを感じつつ、今は先ず目の前の資料だ……と宇宙カマキリの生態に関して記した書籍に目を落とす。


 ただ……この本に依る限りでは、銀河連邦共和国では宇宙カマキリに関しては、早期発見早期駆除が基本で、ある程度以上増えてしまった場合には他所に卵を撒き散す前に星ごと駆除すると言う事以上の対策は書かれて居なかった。


「もしかして……後進文明惑星にアレが落ちたって言うケース自体が初めてなのか?」


 一応は地球上で言えば先進国の一角を占める日本人として、自分の所属する星が後進文明惑星と言うのには少々抵抗が有るが、恒星間航行技術を持っているのが当たり前な銀河連邦諸国と比べれば技術的に劣ると認めざるを得ない。


 太陽系から最も近い恒星までも光の速さで飛んで4.2年と言う時間が掛かる所を、銀河連邦から来たと言う宇宙人達はもっと早い期間でやって来る。


 NASAを経由した説明ではアインシュタインの相対性理論で説明されて居る【三次元の物質は光の速さを超える事は無い】と言うのを、彼等が覆していると言う訳では無いらしいが、何等かの方法で光よりも早く移動して居るのは確かなのだろう。


 実際、今の地球から空を見上げると月の軌道上に等間隔に配備された七つの巨大人工衛星、通称【セブンス・ムーン】を見る事が出来る。


 アレは地球上空で建造された物では無く、冥王星近くの宇宙空間に突然現れた……と言うのは世界中の天文学者が観測して居た事で良く知られている事実だ。


 そんな瞬間移動じみた事が出来る連中が、セブンス・ムーンを太陽系外郭とも言える場所からわざわざ3ヶ月も掛けて牽引して来たからには、ワープ航法の様な技術にも使う事が出来る条件の様な物が有るのだろう。


 それでも地球から冥王星を探査する為に送られた高速探査機が10年近い歳月を掛けて、やっと現地調査が出来たと言う事実を考えれば、彼等が使った3ヶ月と言う時間もとんでもなく早いのだと理解は出来る。


 そんな訳で、今現在地球の上空には宇宙人が暮らす小型コロニーが七基浮いている訳だが……その最大にして最後の任務は、万が一地球人が宇宙カマキリを駆逐しきれず、奴等の繁殖を許した場合に地球諸共に奴等を殲滅する事だと言う。


 その為に必要と成る惑星破壊兵器【プラネット・ランス】と言う物が地球に向けられている事実は、ある程度実戦をくぐり抜けたマーセだけに教えられる事に成っている。


 ……コレは勿論一般人に対して口外を禁止された守秘義務に当たる事柄では有るが、インターネットの匿名掲示板なんかでは似た様な話が都市伝説的に語られていたりする事があるが大概は数日もしない内に削除されてしまう。


 きっと国家公安委員会とかCIAとかKGBとか007的な存在が、わざわざ削除要請を掲示板管理者に出したりして居るんだろう……公務員も大変だなぁ、なんて事を思いながらシンは電子書籍のページを捲るのだった。

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