ーー神様ーー
「はぁはぁはぁ」
イリウスはひたすらに走っている。
(何でこんなことになっちゃうの…僕が居たから…僕が来ちゃったから…)
イリウスは涙する。どうにも出来ない自分の無力さに、責任感に。
(もし、もしもみんなが仲良く出来るなら…僕は…)
?(こっちへ来なさい)
「!?」
イリウスは立ち止まり、声の聞こえた方を向く。そこにあるのは山の入口だ。さっきまで田んぼしかない所に居たのにもうこんな所まで来てしまった。 山の入り口には石でできた古そうな階段に小さな鳥居がある。
?(こっちへ来れば全てが解決する。誰も争わないで済むのだ)
「ほ…んと…です…か?」
謎の声は何も答えてくれない。
「あっちだ!」
遠くからバクの声が聞こえる。もう迷ってる時間なんて無い。イリウスは勇気を振り絞り、階段を登る。はぁはぁと息を切らしながら走る。やっとの思いで階段の終わりが見えてそこまで急いで登る。
着いた場所は神社だった。大きい鳥居が一つあり、奥には少し小さくも立派な木製の社殿があった。だが誰にも整備されている様子がなく、落ち葉がそこら中に散っている。
「待て!イリウス!」
「こんな道行ってどうすんだバカ!」
そんな声が遠くから聞こえてすごい早さで近づいて来るのが分かる。社殿に隠れようと急いで社殿まで向かう。
「そろそろ諦めろ!」
「絶対嫌です!てめーも離せ!」
「お前こそ主から離れろ!」
階段の頂上で争っている3人を横目に社殿に向かう。
その時だった。整備されている石の道、丁度真ん中くらいに行った時、イリウスから眩し過ぎるほどの光が溢れる。
(何これ…眩しい…)
争っている3人は手が止まりイリウスを見つめている。やっと正気に戻ったのかバクが驚きながら言う。
「まさか、何が起こっている?」
バクの声など聞こえていないようでイリウスは光の根源を探す。眩しい中何とか目を開けて右手のひらを見る。どうやらここから光が溢れているようだ。
(このマークは…ほし?)
イリウスの右手のひらには五芒星のマークが浮かんでいる。それを見つけた途端、目も開けられないほど、さらに眩しい光に包まれる。
やっと目が開けれるかとイリウスが目を開けると、どこまでも続いている花畑の道の上居た。
「わー…きれ…い」
イリウスは嬉しそうに花の所へ行き、しゃがんで眺める。少し周りを見渡すと、道の少し先に老人が立っている。老人はゆっくり近づいていき、イリウスも立ち上がって老人を待つ。
老人が目の前に来た時、右手をこっちに向ける。手のひらにはイリウスと同じ五芒星のマークがある。
(僕と同じ…?)
イリウスは自分の手を見ながら老人を見る。老人は微笑んでいるが何も言わない。イリウスは、まるで何をするべきか分かっているかのように、老人の右手に自分の右手を合わせる。
気付いた時にはまたあの神社に戻っていた。目を瞑っていたようでイリウスは目を開ける。両手を器のようにしていて、中には緑色で綺麗な花が一本置いてあった。
「何故…何故だ…こんなことあるわけ…」
イリウスの周りの光が散っていく中、バクは本気で困惑していた。
?「はっはっは、面白いの〜。矛盾が起きたの〜。はっはっは」
「その声は…」
バクはそう言うと上を見上げる。ケルトさん達もそれに合わせて上を見る。イリウスは3人の様子を確認して少し見上げると鳥居の上に誰かいる。
?「よぉ〜バク。元気にしておったか?」
(僕に話しかけてきた人の声だ)
どうやらイリウスをここに呼んだのは鳥居の上に居る人みたいだ。
「何であんたがこんなとこに」
?「何故ってそりゃあ……まぁ我にも色々あるのだ」
鳥居の上に居る人は偉い人みたいだ。ケルトさんやバクでさえもが控えめになっている。そんな中イリウスは場違いな一言で場を凍らせる。
「あぶ…ないです」
「「「「?」」」」
「そんな…とこい…たら、あぶないです」
「なっっっっ!なんてことを言いよるあの方に向かって!」
?「あっはははははははは!いっひひひぃいひひひ!」
バクがイリウスに怒りそうになったが偉い人は大笑いしだす。しばらく笑った後、偉い人は目を擦りながら、笑いながら言う。
?「すまんすまん、ただの笑い涙だ。自己紹介が遅れたな、ひs……初めましてだ、イリウスと言ったか?我は神。『世界を管理し神』だ。そうだな、世神とでも呼んでくれ」
「は…じめまし…て」
世界を管理し神は鳥居の上からゆっくりと落ちてくる。イリウスはどうやってゆっくり落ちてきてるのか気になって仕方がない様子だ。
「それで、どうするのだ?」
「へ?」
バクは腑抜けた声をしている。
「イリウスを人間界に帰すのか?」
「それはもちろ…ん?」
バクは一つの疑問に駆られる。
「よぉーし、トラ。我の与えた人間界の掟を声にしてみろ!」
「はい!
・人間界に影響を及ぼしてはならない
・人間界の人間は連れてきてはならない
・人間界に能力者を連れて行ってはならない」
「そうだ!賢いお主ならもう分かるだろう?」
「人間界から来た人間が能力者になったら…?」
「矛盾が生じてしまったわけだ」
世界を管理し神様は焦りまくっているバクと裏腹に落ち着いている。その中でケルトさんが世神様の前まで行って土下座する。
「頼む!イリウスを人間界に帰さないでくれ!こいつの居場所はもう…ここにしかねーんだ!」
「ほう、そんなに大事か、この者が」
ケルトさんはまっすぐな瞳で世神様を見る。
「はい!」
世神様はニコッと笑ったあとすぐにバクの方を見る。
「この前、人間界に赴いていたようだな。恐らくだがイリウスの事を調べに行ったんじゃないか?どうだったのだ?」
「えっと…それは…」
「この者は天皇の息子であったか?」
「え?」
「この者は政治家であったか?金持ちの息子だったか?権力者の孫であったか?有名人の隠し子だったか?」
「い、いえ…ただの……いや、孤児院に居た可哀想な子…です…」
「そんなもんであろう?ここに来た事で人間界は変化したおったか?そんな訳なかろう。我はその者を置くことを許可する」
「「!?」」
「!!!」
イリウスは難しい話に着いて行けてなかったがケルトさんに抱きつかれ良かった事だけ分かった。
「イリウス!イリウスぅ…どうにがなっだぞ!」
ケルトさんは泣き出す。ケルトさんに抱きつかれたままのイリウスは優しく抱き返すのだった。




