ーールールーー
ケルト「ご主人様、お話があります」
イリウスの呪いが解けたその日の朝。ケルトさんは正座をしてとても真面目な顔でバクに話す。だが先に話し出したのはバクの方だった。
バク「我にも聞きたいことがある。まず一つ、イリウスに着いている首輪のような物は何だ?こっちの世界の鉱物は向こうに持っていけんぞ。それともう一つ、イリウスを帰したくないなんて言い出すんじゃなかろうな?だとしたら出来ん。ルールはルールだ」
ケ「…」
全て勘付かれていたケルトさんはすくには反応出来なかった。
ケ「でも、こいつには俺が必要だし、俺もこいつが!」
バ「ダメなものはダメだ!」
まるでわがままを言っている子供を叱っているかのように怒る。少し沈黙が流れた後。
ケ「イリウスの呪いが解けました…」
バ「なに?」
突然の情報にバクは驚いたが、すぐにご機嫌になる。
バ「そうか!良かったではないか、イリウス!やっと人間界に帰れるんだな!前も言ったが、人間界はここよりもずっと安全だ。安心して帰ると良い」
ケ「俺はそうは思いませんでしたよ…」
バ「何故野次を刺すのだケルト。実際この世界は危険中の危険。ただの人間なぞいつ死んでもおかしくない。」
ケ「だから、俺が守ります。人間の寿命はせいぜい100年かそこら。後90年ぐらい俺が付きっきりで面倒見て…」
バ「ケルト、安全の為と言うのは建前だ、認めよう。だがどんな事があっても人間を置くわけにはいかん。特に我々のそばにはな」
ケ「………」
ケルトさんは少し考えてから立ち上がり、言う。
ケ「力ずくでも…こいつを人間界に帰すと?」
バ「ああ、相手がお前でもな」
ケルトさんの発言から空気が一変した。まるで既に殺し合っているかのような殺気。その空気にイリウスは震えが止まらなくなっていた。
バ「場所を変えよう」
ケ「そうですね。イリウス、おいで」
ケルトさんは優しく語りかけ、イリウスはその通りに従う。イリウスを優しく抱っこして靴も履かせて外に出る。
他2人も同様だ。そしてどこに行くのかと思っていたら高くジャンプして家の屋根を伝って飛んでいた。病院に連れて行ってもらった時もそうだったが、今回はそれよりも早く、長く飛んでいた。
着いた場所は街から遠く離れた場所だ。とても穏やかで空気も良い。そこら中に田んぼがあって田舎って感じだ。その中でも比較的広めな場所に着きケルトさんは後ろからきたバク達と向き合う。
バ「最後の警告だ。イリウスを渡せ」
ケ「断る」
バ「はー…仕方ない。トラ、ケルトを抑えt」
バクがトラさんに言おうとした時、トラさんがものすごい速度で後ろに吹っ飛ばされた。気付いた時にはイリウスの横からトラさんの居た所に居る。おそらくケルトさんがトラさんに攻撃したのだろう。そして、バクの方を向く。
バ「お主も本気ということか」
ケ「当たり前ですとも!」
そう言ってバクを殴ろうとするが、今度はケルトさんが吹っ飛ぶ。遠くに行きそうになるが、地面を削りながらイリウスのそばまで耐える。ケルトさんが睨む先にはいつの間にか帰ってきているトラさんが。
ケ「イリウス、足止めするから逃げろ!」
そう言ってケルトさんは2人と戦いを始める。イリウスには何が起きているか分からないほど速く激しい戦いだ。
ケ「ぼーっとしてねーで逃げろ!早く!」
そう言われてイリウスは頑張って後方を向き走り出す。イリウスは決して後ろを振り向かないが、戦いの風圧がいつまで経っても離れていないのを感じる。
ケルトさんは何とかイリウスの足は止めさせまいと少しずつ押されながらも2人を相手する。
バ「ちっ拉致が開かん。トラ!本気で行くぞ!」
トラ「はい!」
バクがそう言うと、バクの手にはナイフが。トラさんは体以上の大きさのハンマーを担いでいる。どこから取り出したかは不明だがあれを使って戦うらしい。ケルトさんも本気を出すつもりらしく構えをとる。ケルトさんと2人がぶつかり合った時、衝撃波と風圧でイリウスが少し吹き飛ぶ。地面まで割れているがイリウスの所までは届いていない。何とか立ち上がって走ろうとした時。
ケ「流石に2対1じゃきちーな。ご主人様もお前に死なれてもらっちゃ困るんだよな〜?悪ぃちょっと乱暴するっぜ!」
そう言うとイリウスの服を掴み先の方へ思いっきり投げる。イリウスは空高くを舞っている。
イ「わぁぁぁぁぁあーー」
バ「何をやっているケルト!」(あの高さから落ちたら死ぬ!)
バクはそう思い全速力でイリウスの元へと飛ぶ。だがイリウスの落下の方が速く、あっという間に地面に着きそうになる。
間一髪でバクがイリウスをお姫様抱っこ状態で受け止める。謎の力を使って何とか落下の衝撃は無くしたようだ。
バ「あ、あぶなかっ」
上からケルトさんが降ってきてバクの頭を潰す。落下速度が凄かった為地面にもヒビが入る。
イ「バ……ク…さん…???」
ケ「良いから走れ!」
そう言われて泣きそうになりながらイリウスは走り出す。
バ「ケルト、これは洒落ではすまんぞ?」
ぐちゃぐちゃになっているはずの顔が元に戻っていく。
ケ「俺も本気ですから」
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