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女性恐怖症のお守りと神様

☆★☆ まだ4月19日(水)視聴覚室 ☆★☆


やっと弁当のフタを開け、昼食タイムに入る。今日は3人。草野は仲間外れ。嘘。草野今奮闘中。ガンバ!


「霧島さんの女性恐怖症。原因になんか心当たりあるん? 例えばいじめとか?」


 沈黙。返答はない。ただの……いや、ネタには走るまい。地力で勝負! ん? 勝負? なんの?


「ま、俺の場合はさ、陽キャでてっぺんって感じの女子どもに? 嵌められて、大恥かいて、クラス中に広められて笑われて、ボロクソ言われて凹まされて、それからだなクラス中の女子全員が敵に見えるようになったのは」


 桐生くんと霧島さんには、俺の黒歴史を知られてもいい。いや、むしろ知って欲しいとすら思った。


「それがいつの間にか、クラス以外の女子でも、どこの誰でも、女子という女子が全て敵に見えるようになった。たとえ知らないやつでも、優しそうなやつでも」


 だから話そう。知ってもらおう。


「逆ナン、嘘告って知ってる? あれってキツいよね。やられたほうはさ。断ったり無視すれば『木下のくせに生意気』って怒ってくるくせに、受け入れれば受け入れたで『やーい引っかかった。木下なんかにマジ告するわけないじゃん』ってバカにしてくる。しかも断るか騙されるか、賭けの対象になってるなんてマジで鬼畜」


「木下くんは……何回もされたの? それ?」


「ああ。引っかかったのは1回だけど無視したのを入れれば全部で5回くらい……かな? 馬鹿バカしすぎて、ちゃんと数えてないけど」


「わたしもね、小5の時」

「サチ!?」

「いいの。わたしも話したい。木下くんに」

「そっか、サチが言いたいなら良いや。でも僕らだけの秘密じゃなくなるから後でヤキモチ焼くよ?」

「うん。いっぱい焼いて」


 なんなの? このあま~い会話? おい草野、突っ込めよ! って、いないんだった、今。


「小5の時わたし、県外に転校して近衛くんとは離れ離れになっちゃったんだけど、転校先でね…… あーもう、何から言ったらいいのかわかんない~。頭の中ぐちゃぐちゃ~」




 なかなか言葉がまとまらない霧島さんに代わって要約すると、こう言う事らしい。以下に記す。


 小学5年生の時に県外の小学校に転校したクラスには3つの女子グループがあった。

 そのグループは、一人の男子をめぐって対立していた。


 グループのボス以外の女子は自分から話かけてはいけない。

 もしその男子から話かけられたら丁寧に対応しなければならない。

 色目を使ってはならないと言うルールがあった。


 何をもって色目を使ったかの判断は、ボスの気分次第。ボス以外の女子は大抵びくびくしながら学校生活を送っていた。

 

 転校生である霧島さんは、もともと鈍感なことに加え、桐生くんと離れ離れになった寂しさからその雰囲気に気付くことが出来ず、普段は一人で静かに学校生活を送っていた。


 ところがまだ1学期のある日、その男子が霧島さんに話かけてきた。内容は忘れてしまったそうだが、おそらく淋しそうにしている霧島さんを気遣っての事だってのだろう。


 人見知りが激しく、前の学校でも桐生くん以外とはあまり打ち解けていなかった自覚のある霧島さんにとって、その男子は特にかっこよくも人気者にも見えなかったが、クラスの女子たちにとっては注目の的だったようだ。


 そっけない態度で接したつもりはないが、女子ボスたちには気に食わない態度に見えたらしく、霧島さんはたちまちのうちに無視や嫌がらせを受けるようになった。


 2学期に入ると嫌がらせは一旦リセットされたようだったが、再びその男子が霧島さんに接触して来て、以前にも増してよく話しかけて来るようになったそうだ。


 それが気に食わない女子ボスたちは、嫌がらせを再開。そして徐々に嫌がらせのレベルが上がり、最終的には暴力行為でのいじめにまでエスカレートしていったそうだ。


 親を巻き込んだ大きな問題になった。

 女子全体が霧島さんの敵になった。

 先生がいない時間の教室が地獄になった。


 やがて霧島さんは、学校に行けなくなった。


 つまり、そう言う事らしい。


「それ以来、女子はみんな恐ろしい存在に見えるようになっちゃったの」





 なぜ俺はその時霧島さんの傍で守ってあげられなかったんだ! 切実に思う。せつじつに!


「俺のトラウマよりよほどひでぇ……」


「ん? それなのに草野とはいいの? あいつ、まさに超強力な強気女子って奴じゃね?」


「最初はすごく怖かったけど、木下くんが和らげてくれたせいかな? 今は平気」

「ほんと、木下くんはそういうところの気遣いというか何というか、本気で尊敬するよ」


「そう持ち上げるなよ~照れるじゃねぇか」


「ところで木下くんはさっき、どうして長谷川さんに立ち向かっていけたんだい?」

「うん。わたしも気になってた。木下くんも女性恐怖症なのに」


「へへへ、実はお守りのスイッチを入れたんだ」


 はっはっはー! やっと種明かしの時が来たか。刮目せよ! なんてね。


「「???」」


「これ」


 近くばよって目にも見よ!


「スマホと、これは?」


「スマホ2台とボイスレコーダー。これが強気の秘密」


「どう言う事?」


「俺の制服のポケット、こことここに穴をあけていて、スマホをちゃんとここにセットすると、ポケットに入れたまま動画を撮れるんだ」

 

 仕込みは完璧。ポケットは左右と胸ポケットにも仕切りを縫い付けてスマホを固定でき、あけた穴から撮影がしっかりとできるように細工している。フフフ。元いじめられっ子の知恵ね。これ。


「そしてボイスレコーダーはボタン一つで録音できる、安直仕様で高性能集音力」


 ま、スマホがあれば無くても良い物なんだけどね、保険的な?


「そのすべてを起動して、長谷川の言いがかりを録画&録音して、よほど酷いことを言って来たら後でクラスチャットに晒してやろうと思ってね」


 俺、ネットとかPCとか得意だし?


「まぁ、実際に晒さなくても『晒すぞ』って脅せばマウント取れるんじゃないか、って思えると勇気も出てくるって訳。だからお守り」


「なんか木下くんが神様に見えてきたよ」

「わたしも……」


「神様がお守りなんかに頼るかよ」


「ハハっ。たしかに」


「ねぇ、近衛くん。木下くん。わたし、草野さんも一緒にお弁当食べたい。今日も」

「……うん。そうだね。サチにとっては貴重で、まだたった一人の女友達だ」

「草野さんを長谷川さんに取られたくない!」

「どうしたのサチ? 急に強気になって?」

「だって、木下くんがいれば、長谷川さんなんか怖くないでしょ? 神様なんだし」


「え? 俺ってまだ神様なの? そろそろ人間に戻りたいんですけど?」


「一旦お弁当仕舞お? 教室戻ろ? 草野さんを取り返そ? 4人でお弁当食べよ? せっかく神様がついてるんだもん、今日一日がもったいないよ」


 俺の心に炎が灯った。霧島さんの望みを叶えるために……


「……そうだな。草野を奪いにいくか! よーし、今から教室に殴り込みだぁッ!」




「え? マジで? 今から??」












 こうして、俺たちは草野を奪い返すために再び教室に舞い戻ることにしたのだった。










 なぜか乗り気じゃない桐生くんを引っ張りながら。 

感想いただければ嬉しいですm(__)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] 段々と各キャラクターの過去が明らかになってきているところ。割とヘビーな過去を持っていらっしゃいますね。 [気になる点] 会話部分ですが、同じキャラクターのセリフが続く場合、「」で区切らな…
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