《最終話》推しカップルを庇っていたら俺にも彼女ができた話
最終回!素人ながらも今回は、本気で頑張りましたm(__)m
「一哉、どうしたの?ずっと黙り込んで」
一緒の帰り道。草野が心配そうな顔でのぞき込んできた。
草野が心配するのも当然だ。ぼくは昼休みに一言も喋っていないばかりか、思考の淵に沈みこんで、午後の授業もぼんやりとしていたからだ。
「スマホ。連絡先交換したい」
質問の答えにはなっていないが、ぼくが今一番言いたい事。草野とのつながりが欲しい。
ぼくはまだ、さっきの『空白の5年間』の驚愕から立ち直っていなかった。
「そうだよね。ちょっと迂闊だった」
ぼくは2台のスマホを草野に手渡す。
「ん? どうして私に渡すの?」
「交換の仕方がわからないから。やって?」
「いいけど……って、なにこれ? 一人も登録されてないじゃないの!」
「そうなんだ。ぼくには友達がいないからね」
「ここまで徹底したボッチって初めて見たよ…… はい。私が最初のおともだち登録ね」
「もう一台のほうにもやって」
「いいけど、どうして?」
「念のため」
そろそろ別れ道。ぼくは右に、草野は左にそれぞれ曲がる。
「今日、メッセージ送る」
「うん。じゃ、待ってる」
ぼくらはそれぞれ、お互いの家に帰った。
~~~夜~~~
ぼくは草野について考えていた。
(気は強いけど、中1の時はそうでもなかったよな)
(圧が強いってよく言ってるけど、これも中1の時はそれほどでもなかった)
(口調が強いのも同じか。どこかで変わるきっかけがあったのか)
(そういえば今日の口調はずいぶんと優しかったな)
(草野も弁当、自分で作ってるんだっけ)
(長谷川のズットモ。あいつのどこが好きなんだろう)
(ブロッコリーが苦手だったって言ってたな。今はどうなんだろう)
(中1の時の秘密があるらしいな)
(知ってる事、少ないな。知らない事ばかりだ)
「知りたいな」
いつの間にか声が出ていた。
独り言を言ったのは、生まれて初めてじゃないか?
「淋しいな。何も知らないって」
今度は意識して言ってみた。
「会いたい」
ぼくにもあった。人恋しいという感情が。
ぼくは、たどたどしい手つきで、人生初の『メッセージ』を草野に送った。
一言だけ。
『明日、会いたい』
返事はすぐ来た。
『いいよ。時間は?』
『いつでも。任せる。ただ。家まで。迎えに行く』
『。。多すぎ!じゃぁ10時』
『わかった。おやすみ』
『え?もう終わり?』
『うん。ねる』
『うーん、じゃぁおやすみ~』
布団に入ってまた草野の事を考える。
でもすぐに眠ってしまった。
☆★☆ 4月22日(土) ☆★☆
草野の家に迎えに行った。9時55分。念のため5分前行動。
チャイムを鳴らす。あ、ピンポンじゃないんだ。
草野が出てきた。ちょっとオシャレ。
「おはよう」
「うん。おはよう」
「話したいことがあるんだ。この辺で落ち着けるとこ教えて」
座れるところがいいな。って、こういうこともちゃんと言わなきゃ。くそっ。
「う~ん。じゃぁ公園の植物園に行こうか、あそこはベンチ多いし人も少ないし良いと思う」
「じゃ、そこで」
歩いて10分。道中、ぼくは自販機の前で止まり、コーヒーを買う。
「草野にも何か買ってやりたいけど、ぼくはお前が何を好きなのか知らないんだ。おしえて?」
知ってることを増やしたい。今のこの心の声も本当は言葉にしなくちゃいけない。
「え、別にいいよ」
「草野の好きなものを一つでも多く知りたいんだ。おしえて」
少し悩んだ草野は
「じゃぁ、ミルクティー」
「ありがと」
ぼくはミルクティーを買って草野に渡す。
「ありがとうは私のセリフ。あは」
いや、教えてくれたことにありがとうなんだ。って、心で言うな。ちゃんとしろ!
「いや、教えてくれたことにありがとうなんだ」
「どうしたの? いつもの一哉らしくないよ?」
「うん。わかってる」
植物園についた。ぼく達は水芭蕉がよく見える沼のほとりのベンチに座る。
「会話は苦手だから、まずぼくの話を聞いてくれる?」
「ホントにどうしたの?」
言いたい事の順番を考える。
「まず、ぼくは普通に人と会話ができるようになりたいと思ってる。そのためには今迄みたいに心の中だけで喋ったり、ツッコミを入れたりするだけじゃ駄目で、ちゃんと思ったことを言葉に出さないといけないと思ったんだ」
「すごくいいと思うけど、ホントどうしたの? ちょっと怖くなってきたんだけど?」
軽めの深呼吸を入れる。落ち着くために。
「理由は、昨日の桐生くんと霧島さんの話を聞いて、ぼくがいかにダメ人間であるかわかったから」
「すごい話だったよね。私、泣きそうになったよ」
「仲良しな二人は2年間。言葉だけじゃなく、文字や絵すら使って、心を通わせあってきた」
「うん」
「そして空白の5年間。ぼくは二人が連絡を取り合い、お互いを励ましあって、支えあって5年間を乗り越えてきたんだと思い込んでいた。でも違った。二人はそれぞれ、孤独な地獄で5年間を過ごしてきたんだと分かった」
「桐生くんの方は地獄を超えてた感じだしね」
「霧島さんも地獄だったと思うよ。だって、連絡できる手段があるのに、使えないんだから」
「え? 使えないって?」
「最初はぼくも霧島さんさえ連絡すれば、桐生くんは地獄から救われたのに、って思ってたけど、今ならわかるような気がする」
「え?」
「同じと言っていいのかは分からないし、ぼくのほうがずっと軽いからわかりにくいけど…… ぼくは今、草野の事を『ヒトミ』って呼ぶ勇気がない。呼ぼうと決意できれば呼べるのに」
「!? そういえば、さっきからわたしの事を『草野』って呼んでる」
「それは置いておいて、今は霧島さんだ。目の前に電話があるのに、かける勇気がない。かけようと思えばかけられるのに。空腹時に目の前にある焼き肉を捨てられている気持ちが近いと思う」
「なんとなくわかった……」
「で、ぼくの話もするけど、ぼくは草野と交流し始めてまだ今日で6日目。会話だってろくにしたことは無い。そんなぼくが、気軽に『ヒトミ』って名前呼びをするのは、ぼくの中の本当の自分が許してくれないんだ」
「本当の自分?」
「ぼくの中の、生真面目で、強気で、臆病で、傷つきやすい。本当の自分」
「それが、一哉なの?」
「そう。ふざけた仮面で本心を隠して、自分を守るために言葉を心の中だけで止めさせる、かなり卑怯な仮面だと思ってる」
「それをどうしたいの?」
「壊したい。外すんじゃなくて。壊してしまいたい」
「わたしにそれを言うってことは?」
「手伝ってほしい」
「どうやって……?」
「ぼくと仲良しになってくれればいいと思う。たとえば小学生の頃の桐生くんと霧島さんの関係みたいに」
「ん~~~わかりにくい。たとえば?」
「草野の好きなことをたくさん知りたいしぼくの好きなことをたくさん知ってほしい」
「うん」
「草野の秘密をたくさん知りたいし、ぼくの秘密をたくさん知ってほしい」
「うん」
「ほかにも例えば弱点とか、癖とか、得意なこととか、苦手なこととか、いろいろ知りたいし知ってほしい」
「そういう手伝いなら喜んで!」
「それと、ぼくの心を育ててほしい」
「心を育てるって?」
「ぼくはたぶん人間関係が希薄過ぎるせいで、子供のころから、心があまり育ってないと思うんだ。だから、喧嘩したり、怒ったり怒られたり、笑いあったり、喜んだり喜ばせたり」
「アハハッ、ホントに一哉らしくないよ~。こういう時普段なら『喜怒哀楽とかさ』って、国語力見せつけてくるのに、ふふっ」
「いや、今マジで余裕ないから」
「お、口調が戻った?」
「まぁ、今みたいに自然に強気発言できるくらいまで行ければ最高かな?」
さて、ここからが本題。
「だからまず、今のぼく達の関係『付き合ってる』を解消したい」
「ええええ!? なんで?なんで!?」
「慌てるな。真剣に考えたぼくなりの結論だ」
「ちゃんと説明して!」
「もちろん。ちゃんと聞けよ?」
「じゃぁ、ちゃんと言えよ?」
「仲良しを極めるために、『付き合ってる』って言うのが足かせになると思ったんだ。解かりやすく言うと『付き合ってるから仲良し』と『付き合ってないのに仲良し』を比べると『付き合ってないのに仲良し』のほうが成長力が高いと思ったんだ。草野はどう思う?」
「む~~~ッ……わかった。……『付き合ってないのに仲良し』のほうがなんか強そう」
「ほう。良い表現だ。『強そう』か、確かに」
「だから、付き合いをいったん白紙に戻す。その代わり、毎日一緒にいてちゃんと会話する」
「も~~~ッ!なんかもう、いつもの強気が戻ってきてるみたいなんですけど?」
「じゃあ、それはお前のおかげだな。ぼくも何となく仮面が少し砕けてきた感じがしているよ」
「でも付き合いたい~」
「……1年。1年待て。桐生くんたちの半分でいいから『仲良し』の期間を僕にくれ」
「1年待ったらどうなるのさ」
「ぼくから告白する。『仮面を砕いてくれてありがとう』って付け加えて」
「ん~~~ッ、仕方ないなぁ。でも条件がある! 絶対条件!」
「何なりと」
「1年後、一人称を『俺』に戻すこと。それとこれは今から、桐生くんと霧島さんのことを守るときは私を仲間外れにしない事! マキとやりあった時逃げたの知ってるんだからね~。アンタの顔、思いっきり悪人顔になってたし」
「げ?」
「絶対だからね!?」
「わ、わかった。ところで草野、お前俺の事、中1の時から好きだったの?」
「こら! ふざけた仮面は壊すんでしょ!?」
「ふざけてねえ。本気で聞いてる!」
「も~~! あんたの堂々としたボッチぶりがちょっと気になっただけ! 以上!」
「な? なにそれ!? ひどっ」
☆★☆ ☆★☆ ☆★☆
☆★☆ 1年後 ☆★☆
推しカップルを庇っていたら俺にも彼女ができた話
《《|《 完 》《おわり》》》
「明日の弁当にローストビーフ入れようぜ?」
「え? いいね」
「で、今度こそコノエの奴に『やるじゃん』って言わせて見せる!」
「お~! 一哉ファイト~」
「クククッ俺に任せろ!」
「サッチンにも『おいしい』って言わせないとね?」
「瞳、時間測るのお前の係な」
「任せて! こないだの失敗を教訓に……」
「はい、今から20分スタート!」
「明日が楽しみだね♪」
「そうだな」
《《《E N D》》》
いろいろ伝えたい言葉はたくさんありますが、本当にありがとうございました!




