意外な事実
おかげさまで、連載1ヶ月になりました!
あとがきもご覧くださいませ!
「分かりましたわ。そういうことでしたら、私も喜んで協力します」
次に訪れたのは、アンデション辺境伯家のタウンハウス。
それほど心配はしていなかったけど、それでも、辺境伯がすんなりと受け入れてくれてよかっ……。
「ただし、一つ条件がありますわ」
……やっぱり一筋縄ではいかないみたいだ。
まあ、海千山千のアンデション辺境伯が、実利を求めないわけがないかー……。
「その条件とは?」
「もちろん、今度こそアンデション家が、ルドルフ殿下の後押しをさせていただくことです」
「え……?」
予想外の答えに、僕は思わず呆けた声を漏らしてしまった。
いや、だって、先日の昼食の際にもシーラが僕の派閥に入ることを喜んでいたから、てっきりそうなのだと思っていたんだけど。
僕はどういうことかと、シーラを見やると。
「あらあら、シーラから『ルドルフ殿下とリズベット様の派閥に入れて嬉しい』という話は聞いていたのですが、そこは正式に取り決めておかないと、ねえ?」
「あははー、そうですよね」
それもそうか。あの時は、僕達が勝手に盛り上がっていただけだしね。
「そういうことですので、よろしくお願いしますわ」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」
僕とアンデション辺境伯は、握手を交わした。
「えへへ、これで私も、正式にリズベット様の仲間です!」
「ふふ、シーラさんは、最初から仲間……いえ、お友達ですよ?」
「リズベット様……!」
うんうん、二人が仲良さそうでいいけど、これでますますシーラが暴走しないかと、心配になってくるよ。
とりあえず、大事に至らないように目を光らせておこう。
「では、僕達はこれで失礼します」
「ええ、わざわざありがとうございました」
「リズベット様、また学園で!」
「はい、学園でお会いしましょう」
僕達はアンデション辺境伯、シーラに見送られ、最後に訪れる予定のファールクランツ侯爵家へと向かう。
「アンネの尋問、終わっているでしょうか……」
「おそらくは、まだだと思います。彼女もまた、ファールクランツ家の諜報員でしたので」
同じくファールクランツ家であるリズだから、諜報員がどういうものか、最も理解している。
そんな彼女が言うのだから、そういうことなのだろう。
「では、今日のところは、派閥の領袖になっていただくことへのお願いだけですね」
「はい」
これで、僕の派閥の地固めは完了かな。
ここから先は、フレドリク達と協力して、ヴィルヘルムとオスカルを打倒しないと。
「ルディ様、今後はどのように動く予定ですか?」
「はい。マーヤの調査結果次第ですが、まずはヴィルヘルムの尻尾をつかむことですね。そこから一気に畳みかけ、二度と浮上できないようにしてやります」
スヴェンソン家をはじめとした元ロビン派閥の取り込みからも、あの男が裏でよからぬことをしているに違いない。
例えば、支援というのはただの口約束でしかなく、スヴァリエ家の印章を施した証明も、ヴィルヘルムによる偽造もしくは勝手に印章を持ち出した、とかね。
それなら、そのことを糾弾して帝国内であの男の信用を失墜させ、スヴァリエ家内でも独断専行に対する処罰が下されることになるだろう。
そうなれば、あの男がこの国で力を得ることは、二度とできなくなる。
「……ルディ様、あの男が失脚し、貴族の地位すら失ったあかつきには、この私が引導を渡すことを、どうかお許しくださいませ」
「リズ……?」
アクアマリンの瞳に覚悟と決意を湛え、リズが懇願した。
彼女の言う『引導を渡す』ということは、この世界の表舞台から……いや、ひょっとしたらこの世界から、消し去るということなのかもしれない。
だって、リズは『ヴィルヘルム戦記』において、この僕……暴君ルドルフ=フェルスト=バルディックを暗殺した女性なのだから。
なら。
「申し訳ありませんが、それは認めません」
「どうしてですか!」
まさか反対されるとは思わなかったのだろう。
リズは身を乗り出し、僕に詰め寄る。
「当たり前です。あのようなくだらない男のために、僕のリズが手を汚すことなんて、絶対に受け入れられない。それは……この、僕の役目です」
「ルディ様!」
そうだ……僕は、ヴィルヘルムによって作られてしまった最低最悪の歴史を、正しく取り戻さなきゃいけないんだ。
暴君として散ってしまった、この僕の手で。
「こればかりは、たとえリズであっても譲れません」
「っ! ……ルディ様は、頑固です」
「君ほどではありませんよ」
悔しそうに顔を背けるリズに、僕は珍しく皮肉を告げた。
「……分かりました。あの男……ヴィルヘルムは、ルディ様に全てを委ねます」
「ありがとう、ございます……」
僕の覚悟を汲み取ってくれたリズは、渋々ながらも譲ってくれた。
そんな愛する婚約者に、僕は深々とお辞儀をした。
そして。
「着きましたね」
「はい」
ファールクランツ家の屋敷の玄関に馬車が横付けされ、まず僕が先に降りてから、リズの手を取って降ろしてあげる。
すると。
「ルドルフ殿下、お待ちしておりました。リズベット、よく来たわね」
出迎えてくれたのは、テレサ夫人だった。
ただ、アンネのことがあるからか、その表情は暗い。
「お母様……何かあったのですか?」
「……まずは中へ」
僕達は、テレサ夫人に中へと通されると。
「アンネのこと、ですが……彼女が、禁制の薬物に手を染めていることが分かりました」
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