奇跡に感謝を
大切なお願いです!
どうかあとがきまでご覧くださいませ!
「それで……向こうはどうなっている?」
部屋に戻り、制服を試着しながらマーヤに尋ねる。
もちろん、ヴィルヘルムとロビン、そしてオスカルの状況について。
「ロビンに関しては、アリシア妃殿下と袂を分かったことで、派閥に属する多くの貴族が逃げ出すように離脱しております。その中には、アンデション家も」
「っ!?」
アンデション家は、ロビンの婚約相手であるシーラ嬢の実家。
とうとう、派閥の領袖からも見捨てられてしまったか。
「……まあ、婚約者をないがしろにして、弟の婚約者であるリズに懸想しているんだ。アンデション辺境伯からすれば、顔に泥を塗られたようなものだからね」
「近々、婚約についても解消される見込みで、このことはアリシア妃殿下も受け入れておられます。ただ……」
「ただ?」
「あの男……ロビンは、婚約を解消できることを殊の外喜び、学園内で喧伝しているとのことです。『これで、遠慮なくリズベットに愛を注げる』と」
アイツ、本当に最低だな。
だけど、だから最近、リズへの手紙が際限なく送られてくるようになったのか。
その手紙は全部、マーヤが焼却処分しているけど。
「なら、婚約相手だったシーラ嬢は……?」
「特に目立った動きはありません。他の令嬢の開くお茶会にも参加されているようですし、ロビンとの婚約解消についても、気にされておられない様子です」
「そうか……」
そのことを聞き、僕は少しだけ安堵した。
僕はシーラ嬢との面識はないけど、それでも、婚約者に裏切られ、婚約まで解消になってしまってつらいはずだから。
もしこれがリズだったらと思うと、胸が張り裂けそうになるよ。
「次にヴィルヘルムについてですが、どうやらあの男の兄……つまり、スヴァリエ家の長男が、病に臥せっているとのことです」
「病に……」
そうか。おそらくは、この病でヴィルヘルムの兄は死んでしまうんだな。
そして、ヴィルヘルムは史実どおり、スヴァリエ公爵家の後継者となるというわけか。
「最後に、オスカル殿下は順調に貴族の取り込みに成功しているようです。その中には、ロビンについていた貴族だけでなく、フレドリク殿下側の貴族も」
「それは……」
「オスカル殿下についた貴族は、フレドリク殿下……いえ、アリシア妃殿下とロビンの確執を見て、判断したようです」
なるほど、ねえ……。
本当に、まさかロビン一人にここまで振り回されることになるなんて、アリシア皇妃も予想外だったろうなあ。
だけど……オスカルは、こうなることも折り込んでロビンを取り込んだのだろう。
二か月前のあの時に見たオスカルの瞳が脳裏に浮かび、余計にそのように考えてしまう。
いずれにせよ、僕とリズに危害を加えるつもりなら、絶対に容赦はしないけど。
「ありがとう。さすがはマーヤだね」
「恐れ入ります」
マーヤは、傅いて深々と頭を下げた。
普段の彼女は僕の頼みもあって気安く振舞ってくれているけど、こういった本来の仕事の時には、優秀な諜報員としての姿を見せる。
「それでルドルフ殿下、今後はどのようになさいますか?」
「とりあえずは静観……と言いたいところだけど、ロビンが調子に乗ることは目に見えているし、オスカル兄上がこれ以上力をつけることも見過ごせない」
「では……?」
「僕がフレドリク兄上についたことを、公にしようと思う。もちろん、後ろにはファールクランツ閣下がいることも」
今でこそようやくリズが僕の婚約者だと公表されたけど、ロビンが粘着していることもあって周囲は懐疑的で、すぐに婚約解消になるんじゃないかと思われている。
それに、これまで皇位継承争いを静観し続けてきたファールクランツ侯爵が、重い腰を上げるとも思われていない。
なら、そのことを逆手に取って、今のパワーバランスを変えてやる。
「かしこまりました。それでは、このことをお館様にもお伝えいたします」
「うん。僕も訓練の時に話をするよ」
ファールクランツ侯爵との訓練は、リズベットに勝利した後もずっと続いている。
おかげで今は、十回に一回は侯爵に勝つことができるようになった。
もちろん侯爵が手加減をしているから、だけどね。
「さあ、これ以上リズを待たせるわけにはいかない。部屋に向かうとしよう」
「はい」
いつもの様子に戻ったマーヤを連れ、リズの部屋へと向かう。
そこには。
「うわあああ……!」
「あうう……」
制服姿のリズを見て、僕は感嘆の声を漏らした。
どうしよう、僕のリズが可愛すぎて今すぐお持ち帰りしたい。ここは自分の宮殿だけど。
「や、やっぱりリズは、誰よりも素敵ですね! こんな女性が僕の婚約者だなんて、僕は幸せ過ぎますよ!」
「あうあうあうあう!? これ以上は私がもちません! そのようなことをおっしゃるのはお控えくださいませ!」
そんなことを言いながら顔を隠すリズだけど、嬉しそうに口元が緩んでいるのはちゃんと確認済みなのだ。
リズって、ちょっと恥ずかしがり屋で不器用だから、褒められたりするのが苦手なんだよね。
でも、本当は褒められることがすごく嬉しくて、喜んでくれていることも僕はこの一年で理解した。
といっても、あくまでも僕が褒めた場合は、だけどね。とりあえず、のろけてみる。
「ル、ルディ様も、とても素敵です……それこそ、他の令嬢方があなた様に懸想してしまうのではないかと、不安になってしまうほどに」
「はう!?」
く、くそう、リズにカウンターで返されてしまった。
幸せか? 幸せだな。
とにかく。
「リズ……僕は、あなたと出逢えて、本当に幸せです。これからも、ずっとずっとあなたと幸せになりたい」
「私もです。ルディ様と出逢えたことこそが、私の至上の喜びです」
僕とリズは、手を取り合い、見つめ合う。
暴君になるしかなかった僕が、前世の村人だった頃の記憶を呼び覚ましたことで、そんな最低な未来を退けたんだ。
そして。
「ルディ様……」
あの『ヴィルヘルム戦記』では僕を暗殺する “氷の令嬢”は、実はあの日出逢った運命の女性で、今では僕の世界一大切な婚約者となったんだ。
「リズ、帝立学園に入学してからも、よろしくお願いします」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。私のルディ様」
僕達は、こうして出逢えた奇跡に感謝しながら、おでこをこつん、と合わせた。
お読みいただき、ありがとうございました!
本作が11月25日にMFブックス様から発売します!
内容の加筆は当然のこと、リズベットがさらに可愛くヤンデレに、マーヤは色々とやらかしております(もっとやれ)
絶対に面白く、皆様にはご満足をしていただける自信があります!
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