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【第1巻発売記念SS】かけがえのない同志 ※マーヤ=ブラント視点

いよいよ明日、本作の第一巻が発売されます!

今回はそれを記念して特別にSSをご用意しました!


どうかあとがきまで、ご覧くださいませ!

 私の名は、マーヤ=ブラント。


 バルディック帝国の第四皇子であらせられる、ルドルフ=フェルスト=バルディック殿下にお仕えする唯一人の専属侍女であり、ファールクランツ侯爵家が誇る超優秀で美貌も並ぶ者なしのパーフェクト諜報員です。


 ……なんですかその目は。あなたの三本目の足、このナイフで切り落としますよ?


 まあいいです。今の私は、あなたに構っている暇はありません。

 何故なら。


「はああああ! ルドルフ殿下とリズベット様……尊い! 尊いです!」


 勢いよくバゲットを口に頬張り、廊下の陰から舐め回すような視線を送る貴族令嬢とは思えない様子のシーラ=アンデション様に、主君であるルドルフ殿下とリズベット様が狙われているのですから。


 いえ、あのお二人が揶揄(からか)い甲斐のある……ゲフンゲフン、尊い存在であることは私も否定しませんが、とはいえ、さすがにここまでくれば変態としか言いようがありません。絶対に、アンデション辺境伯は娘の育て方を間違えたと思います。


 きっと、彼女のお部屋には、薄い本をたくさん所蔵されていることでしょう。今度お借りしてもいいですか? ……って。


「……いけません。いつの間にかバゲットが両手持ちになっています」


 これまでの経験上、こうなったシーラ様は、きっと至近距離からお二人を見つめ、バゲットを貪るに違いありません。

 そうなっては、せっかくリズベット様が隙あらばルドルフ殿下に襲いかかる体勢になったというのに、今回もお預けとなってしまいます。


 というより、早くリズベット様がルドルフ殿下の貞操を奪い、既成事実を作る時を今か今かと待っておりますので、邪魔をされては困るのです。


 何故なら……私には、二人が乱れる様をこの目に焼き付け、いずれ薄い本にして世に出すという野望がありますので。


 プライバシーの侵害……ですか? あの二人の尊さを世に知らしめるのに、そのようなもの、気にする必要はないでしょう。

 いえ、むしろ全ての人々に知らしめることこそが、このマーヤに与えられた使命であると、自負しております。


 ということで。


「シーラ様、ここまででございます」

「あ……マ、マーヤさん……」


 私はシーラ様を荒縄で拘束し、お二人から遠ざけました。

 ですが……今回の縛り方、なかなか芸術的な仕上がりになりましたね。さっそくルドルフ殿下にも、同じように縛って差し上げたいところです。


「いいですか? お二人は今、とても大切なお話しをなさっています。どうか、もう少し遠くから見守るだけで我慢いただけませんでしょうか?」

「マ、マーヤさん! ですが……私にも矜持(きょうじ)があります! リズベット様の尊いお姿をこの目に焼き付け、それを形にして布教するという使命が!」

「っ!?」


 シーラ様の悲壮感漂う決意に、私は思わず息を呑みました。

 ま、まさか……彼女もまた、私と同じ使命を帯びているとでもいうのでしょうか……?


「そ、それは、どのような……?」

「もちろん! こちら……こち……す、すみません。右手だけ自由にさせていただけませんか?」

「失礼しました……」


 私は縄を緩めると、シーラ様は胸元から一冊の薄い本を取り出しました。


「これは……!」

「私がリズベット様の尊さを知り、いつか訪れるであろう未来のあの御方を妄想し、この私が形にしたものです」


 なるほど……彼女もまた、私と同じ使命を持っていましたか。

 ですが、少々この展開はいただけませんね。


「シーラ様。拝見したところ、これはリズベット様が受け(・・)になっております。確かに、ヤンデレヒーローからヒロインが狂いそうになるほどいじめられるというのが今のトレンドですが、あのお二人に関しては違います」

「と、というと……?」

「ヤンデレなのはリズベット様であり、いじめ抜かれて果てるのはルドルフ殿下です」


 そう……ルドルフ殿下もヤンデレではありますが、あくまでもソフトなもの。

 真にヤンデレなのはリズベット様であり、その気になれば監禁して貪り尽くしてしまわれることでしょう。


「なので、この展開は絶対に書き直すべきです。シーラ様の画力、構成力は申し分ありませんので、私の提案を採用いただければ、きっと素晴らしいものになると、このマーヤは具申します」


 胸に手を当て、私はお辞儀をする。

 全ては、あのお二人の尊い姿を薄い本にするために。


「……まさかあなたが、ここまで私の同志だったなんて、思いもよりませんでした」

「私はルドルフ殿下にお仕えする専属侍女、マーヤ=ブラント。私の楽しみのため……ゲフンゲフン。あのお二人の幸せのため、何が大切なのかは理解しております」

「素晴らしい! 素晴らしいです!」


 バゲットを口に(くわ)え、いつの間にか自力で拘束を解いて私の手を握るシーラ様。

 私は、あの縛り方に改良の余地があると分析しつつ、このかけがえのない同志と頷き合いました。

お読みいただき、ありがとうございました!

とうとうこの作品が、明日発売となります!


早い書店様では、既に店頭に並んでおります!

書籍版ではweb版の内容をさらにパワーアップさせ、リズベットのヤンデレが加速しております!

きっと楽しんでいただけることは保証いたします!


また、帯には重要な告知もございますので、こうご期待!


どうか、この本をお手に取ってくださいませ……!

どうぞ……どうぞ、よろしくお願いします!!!!!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] え、完結なの?
[良い点] 1巻発売おめでとうございます。 それはもうわかったからおっけー 完結済みになってるけど、 [気になる点] 完結済みになってるという事はもう更新は厳しいんでしょうかね。 かなり楽しみにして…
[気になる点] 過去のコメントの返信で6月に第3部とのことだったけど難しいのかな? 物凄い伏線張られてたから気になるんだけど。
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