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首の皮一枚

第二部完結まで残り3話!

「……どちらにしても、スヴァリエ公爵に加担し、皇室に混乱を招いたベアトリスは死刑。ルドルフ殿下……いえ、ルドルフ公子と言ったほうがいいかしら。彼は、身分の剥奪と皇宮からの追放が適当かと」


 今までつまらなそうにしていたはずのカタリナ皇妃が、にこやかな表情でそう告げた。

 しかも、僕達が望む最高の答えを。


「待ちなさい、カタリナ。それだと、他の貴族や国民にはどのように説明するのです。まさかとは思いますが、『第四皇子が、実は皇帝陛下の愛人とスヴァリエ公爵との間にできた子供でした』なんて言いませんわよね?」


 アリシア皇妃が、扇で口元を隠しながら、これ見よがしに尋ねる。

 でも、目元が笑っているところを見ると、あえてカタリナ皇妃の口車に乗ったみたいだ。


「それは困りました……そんなことが公に出てしまえば、それこそ皇室の恥。偉大なる皇帝陛下のお名前に、傷がついてしまいますわ……」


 カタリナ皇妃が、頬に手を当てながら困った表情を浮かべた。

 うわあ……アリシア皇妃と違い、カタリナ皇妃はおっとりとした印象を持っていたけど、なかなかどうして、腹黒いなあ。


「陛下、いかがいたしますか?」

「このままでは、国中に示しがつきません……」

「ぬうううう……っ」


 このように責め立てられては、皇帝も(うな)るしかない。

 しかも、二人の皇妃の視線……リズの絶対零度の視線のさらに上を行っている。


 それだけ二人とも、皇帝に対する怒りや鬱憤(うっぷん)が溜まっていたということだ。


 いつからベアトリスとスヴァリエ公爵の関係、僕の出自について気づいていたのか知らないけど、おそらくはベアトリスにより絶望を与えるために、皇帝はわざと愛人関係を続けていたのだろう。

 逆にそれが、二人の皇妃をここまで怒らせる結果になった。


 いずれにせよ、皇帝の嫉妬が全てを(こじ)らせ、スヴァリエ公爵に夢を見せ続けたのだから、今回の一連の事件については、皇帝の自業自得ということだろう。


 ……そのおかげで、僕が今もこうして生き永らえているのだから、皮肉でしかない。


「……やはり、落としどころとしては、リズベットとの婚約を受け、ルドルフはファールクランツ家が正式に養子として迎え入れることとし、それに伴い皇位継承権の取り下げ、というところでしょうな」


 皇帝と皇妃達の仲裁に入る形で、ファールクランツ侯爵がそう提案した。

 確かにこれなら、対外的にも説明が立つし、皇帝の面子も保たれたままだ。


「これは、ファールクランツ卿の提案どおりにするしかないのでは?」

「私もそう思いますわ」

「…………………………後は任せる」


 力なく立ち上がった皇帝は、そう言い残して謁見の間から去っていく。

 皇帝も、こうするほかないと考えたのだろう。


 もしこれで、二人の皇妃が僕の味方についてくれなければ、おそらく皇帝は病死扱いで僕を消したに違いない。

 結局のところ、皇帝が全てを見誤り、二人の皇妃を敵に回したおかげか。


「はああああ……」


 薄氷を踏むようにかろうじて命を繋ぎ止め、僕は深く息を吐いた。

 正直、今回のことは賭けだったからね……。


 事前の(・・・)打ち合わせ(・・・・・)では、ファールクランツ侯爵もアリシア皇妃も、『絶対にルドルフ殿下を守る』と言ってはくれたけど、そのせいで二人の立場が危うくなるのも嫌だったし……って。


「ルディ様……よかった……よかった……っ」


 僕の腕をつかむリズが、ぽろぽろと涙を(こぼ)す。

 ああ……リズも、不安だったよね。


「はい……僕は、皆様のおかげで、これからも君の(そば)にいることができます」


 リズを抱き寄せ、艶やかな黒髪を撫でた。

 僕のために泣いてくれる、優しい婚約者の温もりを感じながら。


「ですが、まさかカタリナ妃殿下にもお力添えをいただけるとは思いませんでした」

「ウフフ、私もアリシア様からこのお話をお伺いした時には驚きましたけど、陛下を懲らしめる、せっかくの機会ですし。それに……私としても、ファールクランツ家を継ぐルドルフ公子とは、懇意にしたいですから」


 そう言って、カタリナ皇妃がクスリ、と微笑む。

 ええー……これは、どうしたものか。僕、オスカルとは(たもと)を分かっているんだけど。


「とにかく、これで全て片付いた。皇帝陛下の気が変わらないうちに、皇宮から立ち去るとしよう」


 ファールクランツ侯爵が、ポン、と僕の背中を叩いた。

 そうか……僕は、ようやくこの皇宮から……僕を縛りつけていた牢獄(・・)から、抜け出すことができるんだ……。


 でも。


「その前に……寄りたいところがあるんです」

「寄りたいところ、ですか……?」

「はい」


 おずおずと尋ねるリズに、僕は頷いた。


 そして。


「母上……」

「っ! ルドルフ……ッ!」


 皇宮の地下牢へやって来た僕は、鉄格子の向こうにいる、ベアトリスと相対した。

お読みいただき、ありがとうございました


「暴君皇子」につきまして、本日で第二部が完結!

残すところあと2話です!

次回以降は20時、21時に更新予定!


どうぞお楽しみに!


ついては、読者の第二部ラストに向けて皆様の応援をよろしくお願いします!

応援にあたっては、ぜひとも


『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


このまま大団円を迎えるため、どうか最後までよろしくお願いします!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] カタリナさん好きかもしれん
[一言] さすがに根回しは済んでいましたか。それにしても、権力争いは有っても、第二王妃まで力を貸してくれるとは。この借りは大きいかもしれませんねえ。 あと、母との決別を済ませるだけですか。その後は、…
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