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暴君に転生して、本当によかった

第二部完結まで残り5話!

「閣下……お願いします! 僕は第四皇子でもない、ただのルドルフです! ですが……ですが、もしお許しいただけるのであれば、どうかリズと、このまま一緒にいさせてください!」


 僕はその場で平伏し、地面に額をこすりつけて懇願した。


 そう……ヴィルヘルムのあの言葉で、僕はとうとう第四皇子という立場も失ってしまった。

 元々、僕とリズの婚約は、皇帝の命によって成立したもの。なら、皇子ではなくなってしまったことで、この婚約はなかったことになってしまう。


 だから、僕にできることは……リズとこれからも一緒にいるためには、こうするしかないんだ。


「お父様! お願いします! 私はルディ様のずっとお(そば)にいたい! ルディ様が第四皇子ではなくなったとか、そのようなことはどうでもいい! ただ……ただ、愛しいルディ様と永遠に添い遂げたいのです……っ」


 僕の隣で、同じように平伏して懇願するリズ。

 何もなくなったこんな僕のために、リズのような女性(ひと)がここまでしてくれる。


 僕は、本当に恵まれている。

 こんなにも素敵な女性(ひと)が、こんなにも僕のことを想ってくれるのだから。


 僕は……暴君ルドルフに転生して、本当によかった……。


 すると。


「クク……つまりは、殿下がファールクランツ家を継ぐのに、何の障害もなくなったということ。まさに重畳(ちょうじょう)ですな」

「あ……ファ、ファールクランツ閣下……っ!」


 僕とリズの頭を、ごつごつとした大きな手で少し乱暴に撫でるファールクランツ侯爵。

 顔を上げると、侯爵は不器用な、だけどすごく嬉しそうな、そんな笑顔を浮かべていた。


「ありがとうございます! 僕は……僕は、絶対に閣下の期待を裏切らないように、精一杯頑張ります!」

「お父様! ありがとうございます!」


 僕は再び頭を下げ、地面に額をこすりつける。

 喜びの涙で濡れた顔を、隠すように。


「さて……では、早く治療をせねばな。私の後継者……いや、可愛い息子ルドルフを、このまま捨て置くわけにはいくまい」

「あ……え、えへへ……」


 いつもの『殿下』なんてよそよそしい敬称をつけずに、ただ『ルドルフ』と呼んでもらえたことが嬉しい僕は、幼い頃と同じように笑った。


 すると。


「ふふ……ふふふふふ……いつもの凛々しいルディ様も素敵ですけど、今のような笑顔のルディ様も、愛らしくてとても素敵です! もう我慢できません!」

「わ!? えへへ……」


 顔を紅潮させたリズが、僕を思いきり抱きしめる。

 ちょっとだけ、彼女の様子がいつもと様子が違うけど……でも、リズの温もりがとても心地よくて、また僕は、幸せ過ぎて笑っちゃった。


 ◇


 ヴァンダでの事後処理を終え、僕達はいよいよ帝都へと帰る。


 ヨハンソン卿が調べたところによると、ヴァンダを守備していた兵士は、大半がルージア人だった。

 捕虜にした兵にも確認したので、間違いないとのことだ。


 また、やはりヴィルヘルムは策を練っていたらしく、ファールクランツ軍がヴァンダを攻めあぐねている隙に、国境に待機させていたルージア軍七千をもって背後から挟撃するつもりだったらしい。


 国境を越えてまで、確かに斥候を放ったりはしないからね。

 地下通路から侵入して、短期決戦で一気に攻略しなかったら、僕達は危ういところだったわけだ。


 それと……要塞内に、スヴァリエ公爵の遺体もあったそうだ。

 部屋の中で、まるで壊れた人形のように打ち捨てられていたらしい。


 このことを教えてもらった時、リズもマーヤも、ファールクランツ侯爵でさえ僕を気遣ってくれたけど、正直言って、僕は特別な感情を抱くこともなかった。


 だって、僕はスヴァリエ公爵に一度も会ったことがないんだよ?

 いくら実の父親だからって、そんなことを言われてもっていうのが、僕の感想だった。


 ヴィルヘルムの遺体は、川の下流まで探したけど、結局見つけることはできなかった。

 おそらく、今も川の底で眠っている……いや、ひょっとしたら魚の(えさ)になっているのかもしれない。


 それにしても。


「いててて……もう少しゆっくり走ってほしいなあ……」

「ルディ様、こればかりは仕方ありません。これに懲りたら、次からは(・・・・)絶対に怪我を負ったりしないでくださいませ」

「あ、あははー……」


 馬車の中、膝枕をしてくれているリズに手厳しいことを言われ、僕は苦笑するしかない。

 それに、こんなことを言いながらも、マーヤに目で合図して馬車のスピードを緩めてくれるんだから、結局優しいよね。可愛い。


「帝都に戻ったら色々と大変、ですね……」

「そうですか? 僕は、すぐに決着がつくと考えていますが……」


 少し悲しそうに目を伏せるリズに、僕は軽い気持ちで答えた。

 確かに、スヴァリエ公爵との関係などを色々と追及され、皇宮から追い出されることになるんだろうけど、言い換えれば晴れてファールクランツ家の一員になれるってことだからね。逆に、待ち遠しくて仕方ないんだけど。


「ですが……あなた様の、その、母君が……」

「僕は、あの人を母親だと思っていません」


 リズは気遣ってくれたけど、前世の記憶を取り戻した時から、ベアトリスに対し母親という感情は持ち合わせていない。

 ただ……思うところがあるとすれば、ベアトリスよりも母親のような優しさを見せてくれた、アリシア皇妃に対しての申し訳なさだけだ。


「いずれにせよ、これでルドルフ派閥もなくなりましたし、皇室のごたごたを片づけたら、約束どおり帝都散策を……」

「その前に、左脚が完治してからです」

「あ、あははー……」


 リズに指摘され、僕はまた苦笑した。

お読みいただき、ありがとうございました


「暴君皇子」につきまして、本日で第二部が完結!

残り4話です!

次回以降は18時、19時、20時、21時に更新予定!


どうぞお楽しみに!


ついては、読者の第二部ラストに向けて皆様の応援をよろしくお願いします!

応援にあたっては、ぜひとも


『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


このまま大団円を迎えるため、どうか最後までよろしくお願いします!!!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ルドルフの派閥が無くなったらクリステルの家は不味いことになるんじゃないの?
[一言] 反逆罪の公爵家の血筋とか連座されるかはともかく、ほかの公爵家を継ぐとなると障害しかないと思うんだけど…義父殿は脳筋バカなのだろうか? 親バカにしても無理が…。
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