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僕は黒竜見守り隊  作者: 五山 蓮太
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5.ハッピーエンドにしましょうよ!

ちょっと追加

「まままままって待ってください!!!」

「吃驚しました…ど、どうしました?」

「お爺さん!あのドラゴンには帰る場所はありますか?!待っている人…親しい友人や恋人でも!」

「えぇ、勿論。帰る場所はありますよ。今すぐにでも連れて帰りたいくらいです。そこには先ほども言いましたが彼を長年待つ者もいます。」


お爺さんは何かを知っていたようで、優しい顔で答えてくれた。

あぁ…良かった…あのドラゴンは孤独じゃないんだ…ならまだ間に合う。


「ドラゴンさん!復讐とか考えてないですよね?!お願いします!貴方の事思ってくれる人がいるなら今すぐその人の元へ帰りましょう!」

「君、彼の声が聞こえるのですか?」

「いえ、言葉は分かりませんが…何となくこう…分かるんです、僕の憧れていた人と同じなんです。そして彼は…亡くなりました…(テレビの中の話だけど)その人の最後の表情と何となく似ているんです…!だから僕はあの人の様になって欲しくないんです!こんなにも美しく神々しいブラックドラゴンまで邪竜になんてなったら…僕は…僕は!!」

「邪竜ですって?君は一体何…。」


僕の叫びに目を丸くして驚くお爺さん、そして僕の言葉が通じたのか、こちらを見たまま固まっているブラックドラゴン。


「ドラゴンは…特に黒いドラゴンは…僕の…憧れなんです!最推しなんです!推しには全力で幸せになって欲しいんです!!!だってオカシイじゃないですか!こんなにも美しい生き物がこんな所に閉じ込められて!何があったのか知らないですけど、なんで…なんでみんな幸せになれないんですか…幸せになりましょうよ…嫌なことがあった分誰かに復讐するんじゃなくて、そんなこと忘れるくらい幸せになってくださいよぉ!」


叫んだと同時に体の奥から何かが弾ける感覚が起き、目の前が真っ暗になる。

直ぐ近くでお爺さんが慌てる声がするもそれも耳に膜を張られた様に聞こえづらい。


「君…っ!あぁっまた無茶を…!」


力が抜けた所でお爺さんが僕を支えてくれ、触れた所から何か暖かいモノが流れてくる…。

体中に何かが行き渡った所で聴力視力がはっきりとする。


「はぁ…はぁ…い、今のは…。」

「もうこれ以上魂の力を使わないでください。このままでは君自体が消滅してしまいます、私もこれ以上君に干渉しすぎてしまうと取り返しのつかない事になってしまうのでもうこれ以上は回復させる事が出来ません。」

「魂…?しょう…めつ??」

「あぁ…もしかして無意識に?そうですよね…あちらの世界では使えない力ですし…制御できないのは仕方ない…ですか。いいですか、彼の説得は私がします。君は兎に角大人しくしていてくださいね?」

「あぁ…はい…。」


訳が分からないがお爺さんの優しくも真剣な顔に思わず小さくなる。

大人しくなったことを確信したお爺さんは優しく頷き、今度はドラゴンの方へ向く。


「愛しき我が子よ…長らく見つけてあげられなくて本当にすまなかったね。…彼の言う通り、優しい君には復讐は似合わないよ。君の事をずっと待っている者達もいる、だから私と一緒に在るべき所に還りましょう?」

「クオォオオオオン…。」


大粒の涙を流しながら光の中、天を仰ぎ鳴くドラゴンの姿。

黒い鱗が光に反射して…あぁ…なんて神々しいんだろう…。


(ん?愛しき我が子?)


神々しい姿に見惚れつつお爺さんの言葉に「おや?」と思っていたら、本当にドラゴン自体が光り輝いていた。

強く光った後、徐々に光が小さくなっていく。

光はやがて収まり、そこには黒いローブを着た長く綺麗な黒髪の美しい色白の美青年が立っていた。


美青年はお爺さんの前まで静かに歩いてくると膝をつく。

赤い瞳に涙を流し、お爺さんに綺麗な所作で膝をつく姿はまるで有名な絵画の様に美しかった。


「あぁ…良かった。わかってもらえたみたいだね。」

「大いなる主よ…愚かなる者である私如きに有難きお言葉…大変感謝いたします…。」


(はぁー…流石美形は絵になるなぁ…けど、まさかのドラゴンは人型がメイン…まぁブラックドラゴンナイトもそうだったしなぁ…うぅ…でもやっぱりドラゴンの姿をもっと見ていたかったなぁ)


「それから…。」

そういって黒髪の美形が立ち上がると僕の方を向きその綺麗な顔をこちらに向けた。

どうやら僕の方を見ている様だけど、視線は合わない。僕の頭の上を見ている。

160弱の僕の身長より頭一つ分くらい背が高いから仕方ないんだろうけど…。


(目線合わなくて逆に良かったかも…夢とは言えあんな美形と目を合わせるなんて僕には難易度高いし。)


「ふふ、もう少し下の方が彼と目が合いますよ。」

「そうでしたか…、大変失礼しました。ここでよろしいでしょうか?」

「うん、その位置だね。」

「あわわっ」

「貴方の声が聞こえた瞬間、絶望と憎しみに埋もれた我が心に光が灯り大切な事を思い出すことが出来ました。長きにわたり私を縛り付けていたこの憎き呪縛が消えたのも貴方のお陰なのでしょう?心から感謝いたします。」

「えっああのっあう…」

輝く美形のドアップにしどろもどろになるが、美形はお構いなしに続ける。


「貴方は私の救世主だ…。」

「ひぇっ!そ、そんな大げさですよ…!」

「私のこの残り少ない地上で使える魂の力…貴方への恩返しに使わせてください。」


さっきの復讐に燃える瞳をしていたドラゴンと同一人物なのか?と思う程、穏やかな表情…それがまた綺麗過ぎて…


「あ…あの…その…」

「救世主様、何なりとご命令ください。」

「ふひゃぁっ、あひゅっ!」

「ふふ、顔が近すぎて驚いている様ですね、もう一歩下がってあげてください。」


只でさえ人生の中でここまで綺麗な人を現実では見たことなかったのに、その綺麗な顔が僕の存在が見えないのかどんどん近づいてきて僕は緊張で息もできなくなる。

鼻先10cmまで来たところでお爺さんの言葉に救われた…。


「しかし、君ももう無理は出来ないのですよ?」

「えぇ…それでも少し…ほんの僅かですがまだこの世界に留まる余力は残っています。せめて最後の力は私を解放してくれた救世主様への恩返しに使わせてください。すべてが終わったら、在るべき所へ私も向かいます。」

「無理はしないでくださいね?」

「お、恩返しだなんて…そんな大げさな…それに僕は美しいブラックドラゴンを見れただけで充分…あ。」

「どうしました?」


これは僕の夢だし、そんなことは無い…と思いたいけど、もし話が繋がっていたとしたらあの小さなドラゴンも大きなドラゴンの様に封印される為にあの人達に捕まっていたのでは?

と、嫌な想像をしてしまう。

だが、小さなドラゴンの怯え方、起きたドラゴンを手刀という乱暴な形で黙らせる鎧の男…魔法か何かで眠らせて尚且つ檻に閉じ込めてどこかへ連れ去ってしまった姿はどう考えても嫌な想像へとたどり着いてしまう…。

それに、最後簡単に人を殺した人がいた…もしもあの男の人の様に躊躇なくあの美しい鱗に剣が…


「あ、あのっ!ひ、一つだけお願いしていいですか?!」

「一つだけ願いがあるそうだよ。」

僕の声がもう聞こえないか、僕の声に反応しないドラゴンにお爺さんが通訳をかって出てくれた。

「はい、なんなりと。」

「さ、さっき、貴方と同じ黒い小さなドラゴンが檻に入れられ連れ去られていくのを…見てしまいました…も、もし可能ならその子を助けてもらいたい…のですが…。」

「小さな?もしや…彼に掛けられた術と言い…なるほど、謎が解けました…。彼のお願いは君と同じように捕らえられた黒き幼竜を助けて欲しいそうだ。」

「…!そうか…だから…。えぇ、分かりました。真竜コクシュの名においてその願い必ずや…。」

「し、しんりゅう?コクシュ?」


真?新?神????もしかしてこの人、凄いドラゴンなんじゃ…

(やっぱそうだよなぁ…あんなに神々しい姿してたんだもん。やっぱり黒いから邪竜なってありきたりな事はしないよね、僕の夢なんだし。にしても、何か知ってるみたいだなぁ…お爺さん。)

深々と頭を下げる姿にお爺さんもコクシュと名乗ったドラゴンさんを見て納得したように頷いている。

しんりゅうの名前に怖気そうになるけど、それよりも真摯に見つめる彼に僕も答えないと…!


「ああああのっ!だ、誰も傷つけずにあの子を平和で安全な場所まで連れていくとか…可能でしょうか!」


僕の好きなブラックドラゴンナイトは操られていたとはいえ、エルドレイドの民を傷つけた。その恐怖は最終回、復興し平和になったエルドレイドに教訓として伝えられ、その平和は長く続く…というモノローグで語られた。

確かに暴走したブラックドラゴンは恐ろしい物だったが、主人公達以外は誰も彼の怒りの原因を知らないなんて、僕は悲しくて仕方なかった。

もし、ドラゴンさん…コクシュさんが誰かを傷つけ、その恐怖・悲しみだけが人々の心に残ったら…こんなに美しいドラゴンが恐怖の対象として言い伝えられるなんて悲しすぎる。


「ふむ、そうですねぇ…。誰も傷つけないのと言うのは僕も賛成だね、今の君ならきっとできるはずだよ、そうだね…ギアハルティアまで連れて行ってあげるのはどうでしょう?」

「ギアハル…ですか?あの霊峰ギアハルティア山でしょうか?あぁ、確かにあそこならば…分かりました。必ずや幼き同胞を助け、彼を約束の地まで送り届けましょう。」

「無理をしない様私からもおまじないを掛けておこうね。」


お爺さんが綺麗な黒髪に手を翳すとふわりと優しい淡い光がドラゴンさんの身体を包む。

「気を付けて言ってきてください。私は彼を送り届けなければなりません。しかし、必ず迎えに来ますからね。それまで決して無理せず必ず無事で…」

「大いなる主様と救世主殿の願い、必ずや…。」

綺麗な所作でお辞儀をすると静かに立ち上がり、背中から大きな黒い翼を出すと光の差す方へ飛び立っていってしまった。



「はぁ…飛ぶ姿も綺麗だなぁ。でも、ドラゴンの姿だったらもっと綺麗だったんだろうなぁ。」

「ふふ、そうですね。さて、私達も行きましょう。」

「へ?どこへ…って!うわっ!う、浮いてる?!」


お爺さんに手を握られたと思ったら僕の身体が宙に浮く。

(ゆ、夢だから何でもありなのかな?!)

なんて思っているとどんどん僕たちの身体は浮上し、天高く光へ向かって進んでいく。


強い光を感じた後、涼しい風が僕の頬を撫でる。

目の前に広がる満天の星空に驚く。都会では見る事の出来ない澄んだ美しい夜空に浮かぶのは見慣れた月とはどこか違う月とそのすぐ下に浮かぶ輝くひし形…なんだろあれ。

更に目を凝らすと僕の下にある大地が途中で途切れている。まるで空中に浮いている様だ。夜なのではっきりとは見えないが、ファンタジー感満載な景色、現実にはない美しい光景に思わず息を飲む。

(…夢…って何でもありなんだなぁ。あ…)


下の方で何かが光り、視線を下に向けると僕たちの真下には小さな山と小さな町があり、山の麓には白い建物。

その建物の前に人だかりが出来ていて突如巨大な黒いドラゴンが現れた。

「あ、コクシュさんだ…」


どんどん上昇していくから目の前に現れた時よりも大分小さく見えるが、建物と同等かそれ以上に見える大きさに、やはりコクシュさんは大きかったんだなぁとしみじみ実感する。

コクシュさんの周りに花火の様に何かがチカチカ光っているが…あれはなんだろう…。

大きな翼を広げ、飛び立つコクシュさん、それを追撃するかのように光も地上から放たれている。


「もしかし…攻撃されてる?」

「恐らくそうでしょうね、けれど大丈夫ですよ。私がおまじないをしておきましたから。」


不安に思っているとお爺さんがにこやかに答えてくれる。

確かに地上からの光は何かに弾かれる様にコクシュさんに当たる前に消えている。

そのまま大きな翼をはためかせ何かを両手に持ち飛ぶその先の地平線の空の色が明るみを増してくる。

間も無く夜が明けるのだろう。


闇夜から陽の光が入るグラデーションの光に向かい飛んでいるドラゴンの姿。

今まで見てきたどの絵画よりも美しいその光景に自然と涙が溢れる。

世界が光に包まれ始めてよりくっきりと映し出され黒く美しく輝く翼をはためかせる姿。

やはり大空を優雅に飛ぶブラックドラゴンは素晴らしい。


「あぁ…綺麗だなぁ」

「えぇ、そうですね。」


その美しい光景を見ていると段々瞼が重くなってくる。

雲より高いで寒くなるだろうと思いきや、程よい湯舟に浸かった様な気持ち良い感覚が全身を包む。

このまま寝たら熟睡できそうだ…。


(あぁ…眠いなぁ…夢の中でも眠くなるもんなんだなぁ…。ん、でもいい夢だったなぁ…)


夢の中で眠る、という事は起きるという事だろうか?


(そうだ、まだファジレンジャーのBlu-raybox開けてないや、起きたら開封の儀をやらないとー…)


心地よい感覚の中僕の意識はゆっくりと闇に沈んでいった。


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