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僕は黒竜見守り隊  作者: 五山 蓮太
13/14

11.思いの引き継ぎ

久しぶりの更新。




穏やかな時間はあっという間に過ぎ、ガラスの器からプリンが無くなってくのと比例して「まだ終わりたくない」という気持ちが僕の心に芽生えて溢れてきていた。

他にもお勧めしたい作品や作中に出てきた他の料理を振舞いたいとかまだまだ彼らと語りたいという欲じわりじわりと溢れ出てくる。


今まで自分1人で楽しめばいいやと思っていたことも、彼らとならばどういう反応をしてくれるだろう?あの作品を見せたら?このシリーズを見せたら?と、次々とやりたいことが溢れてくる。

けど、やはりそれは僕の我儘で…でも、最後の最後で「終わりたくない」と言う気持ちがこんなにも優しくも悲しいモノなんだと気づかせてくれた皆さんには感謝の気持ちしかない。


最後の一口、自分で作った筈なのに味見の時より美味しく感じたこのプリンを食べ終え、僕はこの場所から去る事になった。




玄関で念の為サンダルを履いて改めて見送りをしてくれる皆さんに頭を下げる。

「皆さん、楽しい時間を本当にありがとうございました。」

「いや、お礼を言うのはこちらの方だ。俺達の無理な願いを快く受け入れ、友との再会を速めてくれただけでなく素晴らしい作品とも出会わせてくれた事、感謝してもしきれぬ。」

「お見送りはここまでですが…貴方の事、天より見守っていますね。」

「この空間ともお別れかぁ。もっと色々見たかったけど…」

「僕ももっといろいろな作品を皆さんに見てもらいたかったです。このシリーズの他にもまだまだ見てもらいたい作品は山ほどあるんですよ。」

「なんだって!うぅ…ますますこの場所から離れたくない…。」

「無理を言ってはダメよ、デューネ。この地は本来はあるべきものではないのですから。」

「そうだけどさぁ…。」


「あの…この場所ってやっぱり消えちゃうんですか?」

「そうだね、この場所は異界の魂である君の回復の為に作られた様なモノ。こちらの世界のモノならば通常の安らぎの間で充分ですから。君が地上へ転生し、つながりが切れたら元の安らぎの間になるでしょうね。」


グラディアドさんの言葉に明らかに暗い顔のデューネ君。


「ここを存続させる…と言うのは無理でしょうか?」

「いいえ、無理ではないですよ?」


無茶を承知で聞いてみたらあっさりと答えが返ってきて驚く。


「この空間、初めは君が回復できる時間持てば良い位の力が込められていました、けれどここに再度着て驚きました。君の魂力がとても安定し、この空間がこの神界に定着していたのですから。」

「え?」

「魂力を使う時にとても重要なモノがあります。それは心からの願い。最初、君は心残りである作品を見る為に恐らくこの空間を無意識で作りだし、そして兄者の力で具現化しましたが…とても安定したモノになっていて私も吃驚しています。恐らく君の願いが変わったのでしょう。」

「僕の願い…あ…。」

「ふふ、心当たりがあるみたいですね。」

「そうだとしたら…皆さんのお陰です。一人で没頭するのが僕は好きだったから…もし皆さんが居なければ僕一人が楽しめればいいやって思う所でしたが、人と好きなことを共有できる楽しさを知る事が出来たから…それがきっと…。」

「救世主殿…」


「じゃ、じゃぁこの部屋を消さずにこのまま使える様にして貰う事ってー…」

「出来なくはないですね。」


グラディアドさんのその一言に騒めく皆さん。


「けれど、私的にはあまり残したくはないのです。」

「えっと…それはやはり異世界のモノをここに残すのが…。」

「そうじゃありません。君が具現化させるほど愛していた物が神界にある…それは君にとっては未練になりませんか?兄様からインターネットというモノを教えてもらいました。大変便利な機能ですね。インターネットが繋がるという事は今も君がいた世界の君の情報が常に更新されている…つまり君が見ていた番組がこの神界では見れるという事に君はまだここに居続けたいと思うのではないですか?」


あ、そういえばインターネットも使える様にしてもらってたんだ。

Blu-rayboxを見るだけでタイムリミットが来てしまったから確認していなかったけど…確かにそれは物凄く魅力的だ…契約している今見ている特撮番組も何本もあるし、脚本家さんを追って幾つかアニメも見ている。

まだ終わっていない作品ばかりで続きを見たいモノばかりだ。


けど僕は本来なら楽しみにしていたファジレンBlu-rayも見ることなく死ぬはずだった。

それを見せてくれただけではなく、楽しい時間を共有してくれるという生前の僕だったら考え欄れない時間を過ごさせてくれた…それ以上を望むのは罰当たりな気がする。


「正直…今放送しているレインボーレンジャーやライダーカセキンダとかの続きは気になります、けど、それは本来死んだ僕には与えられない権利です。けど、ここに居る皆さん…特撮の素晴らしさを理解してくれた皆さんに是非とも僕の代わりに特撮作品を見て欲しいんです。ファジレンは30年前の作品ですから、今の最新技術を使った新しい特撮も是非見て欲しいんです。」


「救世主君…!」

「救世主殿…!」

「レインボー?!」

「ライダーってなに!?」


「皆さんと語り合えないのは寂しいですが、もし…もし許されるのでしたら僕が改めて正式な形でこの場に来れた時、この場に来る事を許してもらいたい…なぁ…なんて…。」

「この場に戻りたいから直ぐリタイアするというのは無しですよ?そうですね、君の新たな人生が悔いのないモノであれば…そうですね、またここに来れる権利を与えましょう。」

「あ、ありがとうございます!」


「君たちもそれでいいね?」


「ほ、他の作品も見れるのですか?!」

「最新…技術…」

「はい、僕が撮りためたDVDの他にもインターネットで見れるモノが…」

「ふふ、分かりました。ではこの場は特別に消さずに存続させましょう。但し、いくつか条件は付けなければなりませんがね。この空間の時間が他より遅く流れるとは言え、ここを解放したら君たちはここに入り浸ってしまいそうですから。」


この場の存続に目を輝かせた皆さんだが、グラディアドさんの最後の一言に気まずそうに眼を泳がせている。

短い時間だが、一緒にファジレンを見ていて何となく皆さん次から次へ休憩なく見ていきそうだし。

魂の存在だけなのかここは空腹も疲れもトイレに行くという事も無くノンストップで作品を最後まで見れたから…。



譲渡許可が出たので急いでレコーダーの使い方や僕が撮り溜めたDVDや市販されているDVD・Blu-rayの見方を説明し、収集したおもちゃなど僕の大事なコレクションを彼らに全て託した。


「本当に何から何まで…この恩は一生忘れないだろう。」

「何かお返しが出来ればよいのですが…」

「そんな…大袈裟ですよ。むしろ恩を感じているのは僕の方です。僕の趣味を一緒に楽しんで頂けたこの時間…最高の宝物です。」

「この素晴らしい出会いのお陰で世界をより良く導く事ができそうです。」

「貴方の世界から比べたら不便な世界ですがより良い世界にする為私達もより精進いたしますわ。だから貴方も地上へ行っても頑張ってね。」

「私も頑張るわ!姉様達が管理していた時よりも、もっともっといい世界にする!約束するわ!」

「そうだね、あの技術が再現できれば…」

「そうだな、あの技術を再現できることが出来れば送り出した者達の助けになるだろう。」

「ならやっぱり最初はスーツを作るべきじゃないかしら!地上の子達も頑張って装備を作っていたけど、やっぱりアレに耐えられる装備って私達の力を少し流したものだったし。」

「直接私達の力を与えると地上とのバランスが崩れてしまいますが…デューネの作った力を遮断する布を応用すれば私達の力の影響も少ないモノで済みますね。」

「やる事が一気に増えたわね!頑張らないと!!」


「程々にしてくださいね?余り余計なことをし過ぎたら地上の子達の成長になりませんから。」

「分かっていますわ、お父様。でも、本当にあの作品は素晴らしいサポートのアイディアが溢れていましたの、きっとお父様の長きの憂いも晴れる事でしょう。」

「あぁ…そうだね。私が未熟だったばかりに君たちに苦労を掛けて…」

「親父殿、そういうのは無しにしてくださいと何度も言っているではないですか。親父殿の素晴らしい世界創造のお陰で俺達も光ある素晴らしい道を歩めて行けているのですから。」

「ラードゥ…すまないねぇ。ふふ…私は本当に恵まれています…。」


皆さんに慰められているグラディアドさんの目にはうっすら涙が浮かんでいる。

「さて…長居し過ぎましたね…もう彼を下界へと送り出さないと。さぁ、行きましょう。」

優しいほほえみに戻ったグラディアドさんにそう言われて素直に頷く。


最後にもう一度お辞儀をし、扉を開けると玄関前に白いタクシーが横付けされていた。

現実世界ではありえない光景にやはりここはちがう場所なのだと思わせてくれる。


「これに乗ればこちらの空気を吸わなくて済みますからね。さ、行きましょう。」



「あ、そうだ…コクシュさん。」

「…はい。」

これが本当に最後になるだろうからこれだけは彼に伝えたかった。

小さなコクシュさんに目線を合わせる様に座り、目を見てしっかり伝えよう。


「必ず…幸せになってください。僕は新しい人生が始まっても貴方の…ブラックドラゴンの幸せを僕は願っています。」

「救世主殿…」


「あの空間で見た貴方の姿は凄く…痛ましいモノでしたが、あの姿の美しさは僕が憧れていた黒い竜そのもの…いや、それ以上の美しさで…新しい世界に生まれ変わるっていう事に正直不安しかありませんが…あんなに美しい生き物がいる世界に僕は生まれる事が出来るのなら僕は貴方の様に美しい黒い竜の為に祈り続けたいです。」


「ウム!良く分かっているではないか!そうだ、コクシュはこの世で最も美しき竜…崇め奉られるべき象徴であり、決して卑しまれるものなどではない。うむ!よく言った!!新たな生を受けてもその気持ちを忘れることなくコクシュを崇めよ!」

「いっつ!は、はい!」


強い言葉と共に肩をラードゥルラルドさんの大きな手で叩かれる。

痛くは無かったがその衝撃は思わず声が漏れる程。


「ば、馬鹿を言うなラードゥ!そんな…私は大層な者ではない…独りよがりの愚かな男だ…。」

「そうね、独りよがりと言う所は本当にどうしようもないわ。」

「ルル…」

「あの日…アレを貴方から託された日…一言相談してほしかった。私は凄く嬉しかったのよ?貴方が漸く自分の気持ちに正直になれたって…心から祝福したのに…。今思えば殴ってでも引き留めるべきだったわ…。」

「すまない…。」

「そもそも自分で渡しなさいよって、話!貴方の想いなんだから!」

「自分で渡したら…決心が鈍ると…それにお前はもう姫との婚約が決まって居ただろ?だから独りよがりな…私の想いだけを忍ばせてもらった…臆病な男だ…私は…もう私の話はいいだろ。救世主殿、私の事を想ってくれるのは有難いですが…今の地上での私は恐らく到底受け入れられぬモノではなくなっている可能性がある…願ってもらえるのは有難いが誰にも告げず、ひっそりと…」


「そんなの関係ないです!僕は…特撮を趣味とする事を周りに隠していました…周りも一部の大人を除いて大半がいい顔をしないオタクな趣味でした!けど、皆さんのお陰で好きなモノを好きと言える心の自由を知りました!あの子…あの竜の子の扱いを見ていて何となくそうなのかも…って思いましたけど、やっぱり僕には貴方達黒い竜はとても美しく神聖なモノなんです!周りが何と言おうと僕は貴方達を崇め続けなんなら周りの人に黒い竜は良い竜だと、美しい生き物だと布教していきます!」


「それはいい!思う存分にこのコクシュの美しさを布教せよ!この太陽神ラードゥルラルドが許可する!」

「えぇ、私、月の女神ルーンルシュレイも許可しますわ。」

「なんか面白そうだから僕も、大海神デューネリオンの名において許可する!」

「私も私も!大地の女神ディアーナティルザの名において許可するわ!」


「なっ君たちまで…!」


全員に背中を押され困惑するコクシュさん、皆さんがいい笑顔で許可をしてくれたことに勇気を貰えて心が温かくなった所でそれぞれの名前の前に付いた言葉に固まる。


「皆さん…って、え?たいよう…しん?」


「あぁ…やってしまいましたねぇ…。」



何だろう、胸が暖かくなってきたけど…それよりも今聞いた単語に一気に緊張感が僕に湧いてくる。


(太陽神?女神?え?そりゃグラディアドさんはこの世界を創ったって言ってたから創造主で神様なんだろうけど…管理者…あ、そういう事か…神としての管理……わっ!ど、どしよう…この世界の神様に…ふ、不敬な事してなかったか…?!)


「あぁ、良かった…大丈夫そうですね。このローブのお陰で力は抑えられていて良かったですが…ダメではないですか、主神の加護を4柱分も与えたら今の彼の魂では君たちの加護に押し潰されてしまいますよ。」


心配そうに僕の顔や体を触りながら安堵の表情になるグラディアドさん

「あ、あの…」

「これ以上は本当に君の魂が変化してしまいます。前例のない事で油断していました…ラードゥ、ルル、後の事と彼の事は任せましたよ。」

「はい、お父様。」

「はっ。すまなかったな、救世主殿よ。無意識とは言え君に他の子らと同じ使命を与える所だった…お前の魂では重すぎる…それから、コクシュの事は大丈夫だ。必ず俺が幸せにする。この竜魂玉にかけてな。」



そう言ってコクシュさんを抱きかかえ何故か胸元を開けさせるラードゥルラルドさん。

逞しい褐色肌の胸筋の間に綺麗な黒い玉が埋め込まれている。



「ラードゥ!おまえ…それはっ!」


顔を真っ赤にして抱きかかえられた事により自分の視線と同じ位置にある黒い玉を凝視するコクシュさん。

(宝石みたいに綺麗な石…まるでコクシュさんの竜の姿の時の鱗の様な…)


「さぁ、もう時間ですよ。」


その美しい色に見惚れいていると後ろからグラディアドさんから声が掛けられる。

その声に我に返る。


「あっじゃっじゃぁ皆さん僕はこれで…」


「えぇ、新たなる魂の旅路…神界より見守っておりますわ。」

「元気でな!」

「お元気で。」

「この御恩しかとこの胸に…何かあれば我らに祈りれ、全力でそなたに答えよう。」

「っあ…救世主殿…お元気で…。」



それぞれに言葉を貰い短い間だがお世話になった人と別れ、慣れ親しんだアパートを出てタクシーへと乗り込む。


「それではお客様、シートベルトをお締めください。」

「え?」

運転席を見るとそこには白いスーツではなくタクシー運転手の恰好をした小さなグラディアドさんがハンドルの前に浮いていた。

小さな手でハンドルに手を添えているのだが、運転できないのでは?と疑問に思いながら取り合えずシートベルトを締める。

「ドアを閉めますね。では、出発致します。」

ハンドルを触っていない方の手を軽く振るだけでドアが閉まり車が動き出した。

(あぁ…本物じゃないんだ…。)


「ふふ、どうですか?世界情報交換会で君の世界を見学した時に見た物を再現してみました。似合いますか?」

「(小ささ以外は…)違和感…無いですね…凄く似合っていますよ。」

「ありがとうございます。では、安全運転で行きますよ~。」

「は、はい。よろしくお願いします。」



ここに登場する特撮番組は全部架空のモノです。


そしてまだ転生しない…

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