冬童話2021仔りすのピーポとサンタの秘密
また新しい雪が積もりました。朝から元気な森の仔りす達の声が聞こえています。まだ、ちっちゃなピ-ポも声に誘われて家を飛び出します。ピ-ポより少し大きいおにいちゃんりすたちはソリ遊びをしています。この森で一番年下のピ-ポはまだソリを持っていません。でもピ-ポはソリがなくても平気です。ピ-ポはおいてきぼりにならないように足を冷たくしながら走っています。
しっぽをピンとたてて白い息をはいて目をくりくりさせて。ピ-ポはみんなと遊んでいるのが楽しいのです。
「ごめんね、ピ-ポ、僕たちはこれから、ゴロゴロ坂まで競争しに行くんだよ」
一番年上のダル兄ちゃんがいいました。
「みんな行っちゃうの?」
ピ-ポのしっぽがシュンと元気をなく下がりました。
「遠いからピ-ポはここまでだよ」
赤毛のマリルがピ-ポの頭をなでて言いました。
「ボク走れるよ」
ピ-ポは目に涙をためて言いました。
「ソリがないと行けないんだ、ピ-ポ、また明日ね」
みんなが言いました。
「待って、ボクもソリあるよ」
ピ-ポは玄関から大きなスコップを持ってきてソリのように乗ってついていこうとしました。
でもスコップのソリからすぐに転げおち、雪に頭から埋まってしまいました。雪から這い出したピ-ポの顔には涙と鼻水の小さなツララができていました。
夜になりました。雪がまた降ってきました。仔りすのピーポは眠れません。ベッドの上に座って窓の外を見ていました。
ピ-ポのママは毛布をかけながら言いました。
「電気を消しましょうね」
暗がりの中でもピーポのまあるいおめめが2つ、ビー玉のようにキラキラ輝いてます。
「眠れないの・・・」ピーポは言いました。
「おめめをつぶるのよ」
ピーポママはピ-ポの小さな足を毛布の中に入れながら言いました。
「ママ、サンタさんはボクのお手紙読んでくれるかな?」
ピーポのかわいいおめめは、暗い天井を見つめています。
「いい子で寝ていればね」
「クリスマスはいつ?」
「明日の明日よ」
「明日はクリスマスイブ?」
「そうよ」
「明日の明日がクリスマス?」
「そうよ。もうおやすみね」
ピーポママは、ピーポのあたまをなでなでして言いました。
ピ-ポには心配なことがあります。
「サンタさんは、ピ-ポの家を知ってるの?」
「サンタさんにピ-ポはここだって知らせないと」
でもピ-ポもサンタさんの家を知りません。ピ-ポはサンタさんと連絡を取りたいのです。でもどうやって?
それでピ-ポはずっと悩んでいたのです。
「眠れないの・・・」
ピーポは、真っ暗な部屋のなかで何度も何度も寝返りをうちながらやっと眠りにつきました。
クリスマスイブの朝になりました。昨夜降った新しい雪がまだ誰の足跡もつけず朝日に光っています。ピ-ポは朝からサンタさんへのお手紙を書いています。ピ-ポのおうちのドングリの木に赤い○をつけた地図も書きました。宛名はサンタさんです。でも住所はわかりません。
「ポストに入れよう。きっと届くはず」
そのとき、ダル兄ちゃん達がソリ遊びをしている声が聞こえてきました。
ピーポは手紙をポケットに突っ込むと家を飛び出しました。自分の足跡を雪に残しながら、しっぽはピンと立てて手に大きな何かを持ってます。
「あら?おナベのフタがないわ」
キッチンでは、ピ-ポママが不思議そうに首をかしげています。
「ダル兄ちゃんボクもゴロゴロ坂に行くよ」
「ピ-ポ、何持ってきたの?」
ダル兄ちゃんが振り返りました。
「ピ-ポ、なんでおナベのフタに乗ってるの?」
赤毛のマリルやみんなも笑いながら振りかえりました。ピ-ポはママのナベのフタをソリにしていきおいよく滑っていきます。
「今日は兄ちゃんたちとゴロゴロ坂に行くんだ」
ナベブタソリはぜっこうちょうです。曲がり角が見えきました。みんなは左に曲がっていきおいよく滑っていきます。
ピ-ポも後に続きます。左へと・・・
「あ~そっちじゃないよ~」
ナベブタソリはピ-ポの声とともに右の方に勢いよく滑り下りていってしまいました。
「止まれ~止まって~」
ピ-ポのソリは、もみの木の間をどんどんすべり下りていきます。木にぶつからないかヒヤヒヤです。突然木が途切れて目の前が開けてきました。すると、平たい雪の上にソリはゆっくり止まりました。
「ここはどこだろう?森のはずれかな?」
心細くなって周りを見渡しました。
「家がある!」
ピーポはレンガの塀の前に駆け出しました。門には鍵はかかっていませんでした。ピ-ポは中に入っていきました。屋根には大きな煙突があります。大きなドアの横には窓があり、明かりがもれています。
ピーポは窓枠にしがみついてコッソリ中をのぞいてみました。
そこにはガリガリにやせ細った黒髪に黒いあごひげのおじさんがバスロープを羽織って立っていました。
おじさんは鏡に写った自分の姿を見て振り返りました。
「まんまる山のサンタも南の島のサンタも食べろ、食べろってこれを送ってくるんだ」
おじさんはたくさんの箱をイヤそうにみると言いました。
「中に何が入っているの?」
ピ-ポは窓ガラスに顔をこすりつけながら目をこらしました。
「マシュマロだ・・・」
ピ-ポは目をくりくりさせました。
「ピーポはマシュマロ好きだよ・・・おじさんは嫌いなのかな?」
おじさんはブラックコ-ヒ-のカップを手にロッキングチェアに座りびんぼうゆすりを始めました。
ピ-ポは、ガラス窓に顔をくっつけその様子を見ていました。
いっしょうけんめい窓わくにしがみついていたピ-ポの手は寒さで赤くなってきました。ピ-ポがまどから離れようとしたときに、おじさんは鏡の前にたつと黒い髪をスプレ-で白く染め初めました。
「せっかくの黒髪を白髪にするのは気が乗らない」
おじさんはブツブツと不機嫌そうに言いながら今度は白くなった髪をクルクルと巻き毛にしはじめました。
ピ-ポは、窓ガラスにほっぺをくっつけ目を丸くしました。
次にあごひげを白く染めるとあごひげもクルクルと巻きはじめました。
「さてと」
白髪と白いあごひげになったおじさんははクロ-ゼットから、赤い大きな服を取り出すとガリガリの身体に身につけました。
大きな赤い服の中ではやせっぽちのおじさんの身体はどこにあるのかのかわからないくらいです。
ピ-ポは胸がドキドキしてきました。思わず声をあげそうになり必死で口を両手で押さえてしまいました。その瞬間ピ-ポはやわらかな雪の上に音も立てずに落ちてしまいました。
でもこれは見逃すわけにはいかないとピ-ポは雪まみれの身体でまた窓枠によじのぼりしがみつきました。
いつのまにかおじさんはジングルベルの音楽をかけています。
「うん、いい感じだ」
おじさんは、おともだちのサンタから送られたマシュマロを赤い服のなかに詰め込みだしました。
「マシュマロと頭は使い用だよ」
「どうかな?横に大きくなってきたぞ」
その姿にピ-ポはとっても嬉しくなってきて窓枠にしがみつき、可愛いしっぽをふりふりしました。
さて部屋には赤い服をきて白髪の太っているのに顔だけギスギスととんがった奇妙なおじさんができあがっていました。
するとおじさんは鏡に顔を近づけるとそのほっぺの中にマシュマロを詰め込みだしました。
それからほおにうっすらあかく色をつけ目尻を下げてニッコリと笑いました。
「ホ-ホ-ホ-」
そうしてマシュマロの詰まったおなかを揺らしました。
ピ-ポの胸はドク!ドク!ドク!と心臓が破裂しそうな勢いでなっています。そしてピ-ポの可愛らしく膨らんだほっぺも真っ赤になっています。
ピ-ポは窓から下りると、ドアの前に向かいました。
するとドアをガチャリと回す音がしました。ピ-ポはあわてて門とは逆の裏口のほうへ走り去りました。
おじさんはドアの隙間に挟まっていた木の葉を拾い上げると小首をかしげましたがそのまま、ピ-ポが走り去った裏口の方にゆっくりと歩き出しました。
一足先に裏口に走りついたピ-ポは、「ブヒッ」という大きな鼻息に驚いて跳び上がりました。
「・・・・・・?」
「トナ」と「カイ」と書かれた小屋にいる栗毛の馬が2頭います。ピ-ポの方を仲良く不思議そうに見ていました。
ピ-ポは、口元に指を立てて、「シ-」と言うとしっぽをたてて走り去りました。
おじさんは、ゆっくりと「トナ」と「カイ」に近づいてきました。たくさんのニンジンをバケツに持ってきてトナとカイに食べさせながら優しく頭をなでました。そして大きな角をトナとカイの頭につけて言いました。
「トナ、カイ、今夜はまた年に一度のお仕事につきあってくれよ」
トナとカイはニンジンをほおばりながらしっぽをフリフリ大きな目でおじさんをみつめてました。
ピ-ポは裏口から飛び出しました。すると目の前にはトンネルがありました。ピ-ポはチラリと後ろを振り返りトンネルの中へ走りこみました。トンネルの中は暖かく、赤や青、色とりどりのランプのように明かりをはなつお花に照らされていました。ピ-ポは一気に走り出口にたどり着きました。
トンネルを出るとそこは、ピ-ポがダル兄ちゃんたちとはぐれて右へ滑っていった分かれ道でした。
ピ-ポは真っ赤な顔で、家に駆け戻ると、「ただいま」も言わず自分の部屋に閉じこもりました。
ピ-ポの小さな胸はドキドキして、頭の中で「サンタ」の文字がグルグル回っています。そして窓の外を見ながら思うのでした。ピ-ポにサンタさんはくるのでしょうか?
夕飯の時間になりました。ピ-ポはおじさんのことが気になって何を食べたのかわからないままクリスマスケ-キのロウソクを吹き消していました。
「ピ-ポ、サンタさんには何をお願いしたの?」
パパが尋ねました。
「・・・秘密だよ」
ピ-ポはケ-キにフォークをさしながら言いました。
「ママのケ-キは毎年美味しなってるね」
パパは笑いながら言いました。
「サンタさんはピ-ポのところにも来てくれるの?」
ピ-ポは言いました。
「そうだね。いい子にしていれば来るよ」
とパパが言いました。
「ピ-ポ今日ね・・・」
ピ-ポは言いかけてあわててやめました。
「そう言えば今日はどこに行ってたの?」
ママが尋ねました。
「秘密なの」
「そう・・ピ-ポは秘密が多いのね」
ママはそう言って笑いました。
ピ-ポがいつもより早くベッドに行ったのをパパとママはニコニコ紅茶を飲みながら見送りました。
ピ-ポは暗い部屋で窓の外を見ながら思うのでした。
おじさんは、サンタさんなの?
ピ-ポのところにはサンタさんは来るの?
ピ-ポは心配顔でずっと窓の外の月明かりに照らされた空をながめていました。
シャンシャンシャンシャン・・・鈴の音がどこからともなく聞こえた気がしましたがピ-ポは知らないうちに眠ってしまいました。
カ-テンの隙間からまぶしい光が差し込みました。ピ-ポは慌てて飛び起きました。クリスマスの朝です。ピ-ポはキョロ、キョロと部屋を見回しました。ベッドの足下にはピンクのリボンのかかった可愛いちいさなソリが置いてありました
ピ-ポはベッドの上で飛びはねました。
ピ-ポはソリを抱えると嬉しそうにドアを開けると外へ飛びだしました。
「ピ-ポどこに行くの?」
キッチンでママが声をかけました。
ソリに乗ったピ-ポの後ろ姿をコ-ヒ-を飲みながらパパが見送っています。
パパとママは大きなクリスマスツリ-の下に置いてある赤いりぼんのついた大きな丸いものを見つけました。
「パパ、昨日から行方不明だったおなべのフタよ」
パパとママは不思議そうに顔を見合わせました。
ピ-ポはソリに乗り絶好調でした。ぴかぴかの赤いソリです。
「ピ-ポ。カッコいいな」
「サンタさんにもらったの?」
「いいな、いいな」
ダル兄ちゃんたちが集まってきました。ピ-ポは得意げです。
「よし、今日はピ-ポも一緒にゴロゴロ坂へ行こう」
みんなが誘ってくれました。
ピ-ポは嬉しくて真っ先に赤いソリに乗ると滑り出しました。
ピ-ポのソリはみんなを置き去りにして滑っていきます。
「お-い、ピ-ポ、待ってよー」
分かれ道のところへやってきました。ピ-ポは突然急ブレ-キをかけました。雪が舞い上がりしばらく前が見えません。
「ピ-ポどうしたの?」
みんなの声が大きくなってきました。
「ピ-ポそっちは行き止まりだよ」
追いついてきたダル兄ちゃんが言いました。
雪けむりはおさまりました。ピ-ポは目をこらしました。
「もみの木の林がない・・・・」
ピ-ポはちょっとだけ分かれ道の右側へ歩き出しました。
「あぶないよ、ピ-ポ、そっちは崖で行き止まりだよ」
赤毛のマリルがあわててピ-ポの腕をつかみました。
帰り道に通ったトンネルもありません。ただ雪が積もっているだけでその先には空しかありませんでした。
「ピ-ポ、こっちだよ」
みんなはソリに乗ると左の方へ下っていきました。
ピ-ポはちょっとだけ振り返るとまたソリに乗りみんなの後を追いました。
ピ-ポは思いました。これはピ-ポとおじさんの秘密なんだと。
イラスト花宮璃星(透明水彩画)




