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8/22

第8話 本当は

淳の話がわからない。

あの時の心の中の『ゴメン』は隠していてゴメンということか。

でも、まさか淳があの雛川陽だったなんて!


つか、オレの彼女。

そしてキスしたぞ。心の声でファーストキスって聞いたぞー!

うぇーい。嘘偽りない声がオレには聞こえるんだ。

あんな華やかな職場にいてキスがまだだなんて〜。

淳ちゃん純情!

でも、なんだよなんだよ。だったら淳だってそう言ってくれれば良いのに。

淳は雛川だよってさぁ〜。


でも淳が雛川陽だって知ったら、あの学校中パニックだったよな。

オレなんか近づくことなんてできない。

今の姿のままだったから久保田が連れて来たのかも知れない。


「やっぱり」

「え?」


「怒ってるよね。秘密にしてたこと」

「いやいやそんな!」


そんな──。

ただビックリしただけで怒ってるなんて。


「ホント?」

「ホントだよ」


「好き? 淳のこと──」

「もちろんだよ」


「ホント? 雛川だから好きだったりして」

「まさか。怒るぞ?」


「やん。ゴメンなさい」


つか。急によくしゃべる。

でも心の中の淳と同じだ。

秘密を教えて楽になったってことかな。


「でもオレは淳が好きなんだから、雛川じゃなくていいんだよ」


──何いってんの?

彼女は元々雛川であって、淳でもあるわけで。

我ながら意味が分からない。


「ありがと。椎太クン。今の姿が本当の淳なの。それを好きになってくれた椎太クンが好き。大好き」

「へへへ」


でもなんで?

淳のあの時の心の声。そして今の言葉。


『青春の恋人』

「椎太くんに会いたくて」


芸能事務所から逃げ出した雛川陽。

それがオレに会いたくて?

それってどういうこと?


「オレに会いたいってどういうこと? 今まで知らない土地にいたのに、急にオレに会うためにグラドル辞めて転校して来たって……。考えたら不思議だよ」


そっと彼女の手を握る。

それは心の声と、言葉を一致させるため。

淳の心の声と言葉とはいつも一致してる。嘘の付けない正直な子なんだ。


「今まで、どうしてグラドルだったの?」

「それは──、スカウトされたからだよ」


『本当は──』


うん。心の声が隠したがってる。

残念ながら、隠したいことは聞こえない。

でも、最近、少しだけ奥の心を読むことができるようになったのは検証済み。


教えてくれ。淳。

聞いちゃダメだって思うけど、自分の能力がある以上、知りたい気持ちが勝ってしまうんだ。

ゴメンな。


「それを辞めちゃうなんてもったいないよ。そんでなんでウチの高校なのさ」

「だって〜。だから椎太クンにも会えたわけだし〜」


そこでキス。

淳はうっとりとした雛川の顔でまどろむ。

だけど心の声。

少しだけの奥の声を聞きたい。


どうして。どうしてウチの高校に──。


『淳、少しだけ──未来が見えるんだ。夢が教えてくれるの──』


驚き!

なんてこった。それって予知夢ってやつだよな。

淳もエスパーだったなんて!

つか、この顔で、このボディでエスパーって、天は彼女にどんだけ才能を与えてんだよ〜。

運命。ホントに運命なのかも。オレたちって。


『グラドルになることも夢が教えてくれた──。そして椎太クンと仲良く青春を送ることも──』


そっかそっか〜。

淳は夢に導かれて生きて行くんだな。


『あと わ ず か な 時 間──』


?????


どういうことだ。


淳の心の声が途切れる。

通信が利かなくなったように無心。

キスにだけ意識を傾けるように。


わずかな時間。

あとわずかな時間。


それってどういうことなんだよ。

心に触れれば触れるほど謎が多くなって行く。


教えてくれよ。


淳──。

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― 新着の感想 ―
[一言] これは・・・・・・ 悲劇の予感。
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