第16話 制裁
コンテストは当然、淳の優勝だった。
豪華なトロフィーと手作り感満載の王冠。
淳ははにかみながら小さくトロフィーを掲げて喜びを表現した。
だがオレの気持ちは重かった。
本来であれば淳の優勝を喜んで淳の部屋で楽しく語り合いたかったが、久保田グループナンバー2の吉井の反感を買ったこと。これが頭を徐々に支配して行ったのだ。
案の定だった。次の日、久しぶりに久保田グループのたまり場に呼ばれた。
久保田は嬉しそうにオレに手を上げていたが、仲間は既に吉井から聞いていたのであろう。
態度が冷たかった。
「どうもお久しぶりで……」
と輪の中に入っても誰も何も言わない。
久保田だけがニコニコしているだけ。
自分から呼んでおいてシカトかよ吉井と思ったが、吉井は口を開く。
「久保っちゃん。こいつ不義理なやつなんだよ」
「ん? 不義理はいけねぇなぁ。そりゃ男じゃねぇ。なんだ。照場。なにをやらかしたってんだ」
「ふー。久保っちゃんも知ってるだろ。こいつの彼女が学祭のコンテストで優勝したの」
「ああ。音倉はすげぇやつだよ。照場。よかったな」
吉井はまたもやため息をつく。
「はぁ〜、ちげーよ。久保っちゃん。照場の彼女の音倉は元グラビアアイドルだった雛川陽。照場は自分の彼女が雛川だってことを誰にも言わずに隠してたんだ。それを不義理と言わずになにを言う?」
そう言いながら吉井はオレを睨みつける。
たしかにグループに何も言わなかったのはそうかもしれない。
それを久保田に言いつけて、久保田からオレに制裁を与えようとしているということだ。
でも久保田はオレに集まりにこないでデートに励めと言ってくれたんだ。
久保田はそれでも怒るのだろうか?
「うーん。なるほどなるほど。グラビアアイドルねぇ。それを仲間に報告にしなかったのが不義理かどうか。うーん」
久保田は腕組みをして目をつぶりしばらく考えていた。
「……それがなんで悪いのかオレにはとんとわからねぇ。オレは吉井の彼女の胸のサイズも知らねぇけどそれって報告するべきことなのか? それにオレが照場に彼女を紹介してオレが面倒見ると言ったんだ。照場とその彼女に文句があるってことは後見人のオレに文句があるってことだ。分かるか吉井」
「うっ!」
「おいおい。みんなもそうだぞ? 照場の彼女はかわいい。ミスコン優勝だ。だからなんだ。それってお前らがうらやましいだけだろ。いくら照場をシカトしようとボコろうと、音倉がお前らの彼女になんのか? なんねーよな。だったら温かく見守ってやるのが男じゃねーか? 仲間じゃねーのか? もしもそれができねーってんだったらグループから抜けろテメーラ!」
久保田の久しぶりの激昂。
立ち上がって全員を見下ろすまでの高身長の久保田に、全員顔を伏せてしまった。
「おい。照場。もう行っていいぞ。デートを楽しめよ。優勝おめでとな!」
「う、うん。ありがとう」
オレは久保田に礼を言ってその場を離れた。
ふー。久保田で助けられた。
でも人それぞれ解釈は違うけど、久保田が味方になってくれてよかった。
それに後見人。面倒を見るか。
やっぱり久保田は熱いヤツだなぁ。頼もしいや。




