第11話 特訓
で。放課後。
オレは顔をニヤニヤさせながら、多少早足で淳のアパートへと急ぐ。
『ちょっとちょっと椎太クン、早いよ』
ゴメンな〜。淳。でも時間ってあっという間に通り過ぎちゃう。
青春も同じことで、通り過ぎた時間はもう戻ってこないんだぞ?
水着。水着。
アパート到着。淳が部屋のドアのカギを開けた瞬間に入り込む。
「こんちゃーっす。おじゃっしやーっす!」
「もう。テンション高過ぎ!」
ホントだ。オレの人生で一番テンション高かったかも!?
だって、淳の水着姿。
あのグラビアで見た、大きくて丸くてふわふわしてる、夢のような胸を見れると思うと、ああ鼻血がでそう。
「やっぱりやだな〜。ミスコンなんて」
「ちょっと、ちょっと淳ちゃん!」
「え? もーう。椎太クン、テンション高いよぉ〜」
「まーずわアレだよ。私服のアピールいってみましょ」
「淳、そんなに服持ってないんだよな……」
淳がクローゼットから引っ張りだした服はどれもこれもデートで見たことあるものばかり。
やっぱり地味。
なんであんなに華やかな世界にいたのに、こんなにオシャレじゃないんだよ〜。
『淳、センスないから恥ずかしいよぉ〜』
おっと。恥ずかしい思いさせてスマン。
つか、淳はこういう色が好きなんだろうな。
でもそしたらモノトーンとかのほうが却っていいと思うけど、なんでこうちょっと暗い色の服を好むんだろ? 黒なら黒。白なら白の方がいいと思うけどな〜。
うん? この白いブランドTシャツは?
「これは? ああ、これはモデル時代にもらったやつなの。字が入ってるの格好悪いよねぇ」
なんでだよ。めっちゃオシャレじゃん。たぶん三万はするやつだよな。
それとこのスリムのジーンズ合わせるだけでいいじゃん。
「これ着て来なよ」
「う、うん」
淳は服を持って脱衣所へ移動。
恥ずかしそうに着替えて来た。
「ど、どうかな……」
ほらー!
すっごいいい。素材はいいんだから何着ても似合うけど、そういう活発なのすっごくいい。
「いいよ、いいよ〜! 淳、めっちゃカッコいい! 写真とってもいい?」
「いや〜ん」
「撮るよ〜。ホラ笑って!」
数枚撮影。やっぱり、淳はすごい。
可愛い。美人。もうオレ骨抜き。
それじゃぁ……。ゴクリ。
「水着いってみましょうか──」
「……え?」
「だって水着による自己アピールってあるでしょう」
「え? 水着?」
「なんだ、ちゃんとビラ見てなかったの? 水着もあるんだよ」
「え〜。やだぁ〜」
「オレだって淳の水着を他の連中に見せたくないけどサ。だってしょうがないじゃん。書いてあるんだもん」
「えー……」
「ホラ。モデル時代にもらった水着とかないのかな〜。なんて」
「ないよ〜。恥ずかしいから捨てちゃったし。学校のしかない」
学 校 の。
つまり、スク水ってことっすか?
そ れ は そ れ で。
「うーん。しょうがないよね。じゃぁ、スク水で」
「えー……」
「どうしたの?」
「なんか、椎太クン、スケベっぽいよ〜」
「そんなまさか。淳がグランプリになるのはオレの喜びでもあるからだよ」
「そうなのかな〜?」
「そ、そ、そうに決まってるだろ?」
「どもった」
「じゅーんちゃん。機嫌治して。着替えてるところは見ないから」
「もーう。当たり前でしょ〜」
なんのかんのいいながら、水着を持って脱衣所へ。
衣服の擦れる音が聞こえる。
もうここからは一つの音も聞き逃したくない。
脱衣所の磨りガラス。
淳のシルエットが全て肌色に変わる。
うぉーい。淳ちゃんの裸が一枚のドアを挟んでそこにあるのね?
いや考えろ。そんなことはいつもの日常だ。
淳の裸はもっと薄い服の中にいつも隠れていると考えるべきだ。うん。
なんだそりゃ。でもそんなこと考えてないと、意識を分散させないとヤバい。
鼻血がでちゃう。そして一部盛り上がっちゃう。
肌色のシルエットが徐々に黒くなって行く。
でも、それはわずかな量だ。手足は肌色のまま。
さぁ、淳ちゃんの生足とごたいめーん。
ガラリと開く脱衣所のドア。
オレの頭は足から徐々に上がって胸へ。そんで顔。
「完璧ですっ」
「いやーん。もう!」
完璧。完璧。もうドキドキするよ〜。
淳ちゃん。こりゃ優勝間違いなしでしょ。




