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短編:序章/聖夜の微睡



 彼女(わたし)の最初の記憶は、世界の終わりから始まった。



神の領域に至らんとした王と、人の身でありながら必死に抗い続ける青年。


両者の激突は星の悲鳴を起こし──────そして、彼女を目覚めさせた。


彼女は、一言で言うならば「全ての始まり」だった。


消耗品として造られた身体。色を忘れたような姿。


人々の欲望によって生み出され、死ぬ為だけに生きるはずだった人の形。


しかして、何よりも純粋なその在り方は、皮肉にも世界そのものに好まれるものだった。


如何なる信仰よりも、主は純粋であることを望んだのだ。


そうして、魂を与えられた彼女は目を覚ます。


世界が終わる、その寸前で。


人ならざる存在──────即ち、この世界の代行として。


目覚めた彼女は、形容し難いまでに強かった。


ヒビの様な複対の羽根は天と地を砕き、嵐が如き神罰の中に在って尚その体は傷付かなかった。


その有り様は、天使と呼ぶにはあまりに無機質で、災害と呼ぶにはあまりに美しくあった。


──────そして、彼女は戦いを終わらせた。


青年と共に、終末の様相を呈した世界に再び光を齎した。


それこそが全ての神話の原典。


遺伝子の記憶、その奥底に眠る「全ての始まり」。


地上に降り立った彼女がとある感情を識り、そして輪廻を待つまでの物語。


青年が悲しみを識り、それでも尚止まることなく進まんとする決意の物語。


彼女も、青年も、今はもういない。


しかし、2人は共に歩んでいる。


時代が変わろうと、幾度の散華を迎えようと。


これは、世界が終わるその日まで続く、不規則(イレギュラー)極まりない恋歌(ものがたり)だ。





「──────ろ……起きろ。こんなとこで寝てると風引くぞ?」


「…………ん、ここは……」


端末準備室(いつもんとこ)だよ。何寝ぼけてんだか、よくもまあキャスター椅子で寝るもんだ」


「あぁ、そっか…………この毛布、アンタの? 気が利くじゃない」


「おう、税抜き1000円な」


「あ、やっぱ有料なのねファ〇キュー」


 中指を立てつつ、改めて辺りを見渡す。

年末を迎えた部室はクリスマス一色。

冬休みだというのに賑やかで、反面皆が仕事の疲れを乗り越えようという意図も伝わってくる。


「今更だけど珍しいわね。何気に初めてじゃない? Itafでクリパするなんて」


「このところ例の爆破事件にかかりっきり、だからな。せめて労ってやらなきゃだ。おーい西川―服部達の班が帰ってきたらケーキ開けるぞー!」


 りょーかいッスー! いつもの威勢の良い声が響いて、ようやく表情が解れた気がした。

準備に勤しむ後輩達の背はいつ見ても愛らしく、やはり愛おしいく、されど愛いものだ。

おっと、今はこちらの方が2年生(後輩)だったか。なんて、ほくそ笑んでみる。


「あっ、有片会長! と……先輩……」


 気が付けば、後輩君がこちらを見て震えている。

縞模様の服を着た、青い印象の彼。

あの時の事をまだ引きずっているなら申し訳ない限りだが……。


「ん、どうした御縞? そんな慌てて」


「は、はい、実はさっきクロさんが“6番格納庫を開けたから会長も呼んでー”と頼まれたんです。もしかして飾りでも残って───会長? どうしたんですかそんな真っ青になって」


「止めに行くぞ! さもないとミサイルを模した花火が人目に触れる!⇒情報統制に支障が出る⇒更に休暇を返上する羽目になる!」


 後輩を追って、彼は慌てて部屋を出ようとする。

その間際、振り向き様に伸ばされた手が、何でもない筈なのにとても印象的に思えた。



「──────そうだ、一緒に来てくれ! “空”は得意だろ?」



「──────ええ、バイト代税抜き1000円ね?」



 そうして彼女は、もう一度手を伸ばす。

その瞬間を掴む為に。忘却の果てを手繰り寄せる為に。

もう一度、もう一度…………。


読者の皆様、お久しぶりです。作者Aでございます。

本日はクリスマス(だった)ということで3章の始まりとして短編を書かせていただきました。

作者陣が多忙ということもあり、この時間帯に投稿させていただいた次第です。申し訳ない!


さて、肝心の3章ですが現在も執筆中につき、再開は来年になりそうです……(-_-;)

今回の話を見ていただければ分かる通り、これでもかと引きまくった伏線がえげつない事になっている&描写の難易度が上がった事が大きな要因です。

なるべく早い復帰を目指しますので、もう暫く!もう暫く、お待ちいただけますと幸いです(デジャヴ)。


それでは、良い年末を!


※本文は活動報告にも掲載されています。

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