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第7話:鋼鉄の正義①



「生徒の失踪たぁ穏やかじゃねぇな」



 突如Itafに流れ込んできた情報に、小手川拳斗は怪訝な表情を……しているような声で答えた。

曰く、生徒の失踪事件がここ最近で多発しているのだと云う。



「合計で3件かぁ……まあ親御さんもケーサツに相談してるんじゃないの~?」


「でも……未だに見つかってないのはおかしくないです? どの件も失踪から1か月近いとか……」



眠っている狼の隣で同じく眠そうな表情を浮かべながら桃井玲奈が答える。

そしてその隣の椅子に座っていた鳳紅葉は不安げな表情をしていた。


「ったく、真也たち(アイツら)は嗣音たち……Irialの情報調査に忙しいし、別件にかまける暇はなさそうだしなぁ……」


「おっと、こて、その流れはとてもめんど」


「俺らで調査に乗り出すか!」


「遅かったかー」


「そう、ですね! 私も協力します!」


「あちゃー、こっちもやる気だー……」






「というわけで目撃情報があったところを片っ端から探してるわけだが……」


「……見つかりませんね」




 後日、被害者の情報から顔写真を集め、2人+籠手は聞き込み調査を開始していた。

が、ロクな情報を掴めていない、というのが現状である。(まあ小手川は聞き込みの間は鞄の中で待機だったが)



「荒木壮一、竹林誠也、真機那勇一……3人ともどこに行ったんだろーね」


「まあとりあえず数少ない情報探してくしかねぇか」


「やっぱケーサツが手焼いてるんだし、あたしたちでどうにかなるもんじゃないでしょ」


「いーや、逆だろ。俺らじゃないとどうにか出来ない可能性があるじゃん」




小手川がそういうのには彼らしいもっともな理由があった。




「能力者関係、ですよね」


「そ。だから俺らが解決する意味は大いにある」


「ほんとぉ?」


「俺のカンがそう言ってる」


「またそれかぁ……」



桃井は怪訝な表情、紅葉は不安と苦笑いの入り混じった表情をした。







「……で、なんでこんなとこで目撃情報があんだよ」


「見るからに廃工場ですね……」



 更に後日、3人は目撃情報を追っていたが前2人は見つからず、最後の一人【真機那勇一】の目撃情報があった場所…街はずれの廃工場に来ていた。




「昼なのになんでこんなに薄暗いんだよったく……雰囲気バリバリ出てるじゃねぇか」


「褒めてるのか貶してるのかわかんないや」


「うう……なにか出てきそう……ゾンビ化した犬とか……」


「どこのバ〇オハザードだそれ」



 緊張感があるのかよくわからない2人+1つは廃工場の中へ足を踏み入れる。

中は撤去されておらず埃を被った機械や廃材が乱雑に置かれていた。



「広いなぁここ……取り壊すのにも費用が掛かりそうです」


「財閥のお嬢様らしい感想だな」


「その通りなんですけどね」



と他愛ない雑談をしていた時だった。



「! んなっ!?」



女子2人の先を浮遊していた小手川が驚愕の声を上げる。




「なになにどしたの? あっ……」


「え、あ、ああああれって……!」



 前方に倒れている人影が2つ。真っ先に小手川は飛び付くように生死を確認する。

桃井が真面目な雰囲気になり、紅葉は動揺を隠せない。



「クッソ…遅かったか…」



そこに倒れていたのは男子生徒2名、目撃情報があった【荒木壮一】と【竹林誠也】だった。

2人は全身から血を流し、既に冷たくなっている。

瞳の上を這う蝿が彼らの死の凄惨さを物語っていた。



「誰がこんな……酷い……」



悲嘆に暮れる紅葉の横で、桃井は疑問を持っていた。



(なんでここに目撃情報が無かった2人が? ……それに最後の……真機那勇一は?)



その答えにたどり着くのにそう時間はかからなかった。



「──────!! こて!! そいつらから離れ」



ダダダダダダダダダダダ!!



大量の銃声と共に小手川へ鉄の雨が降り注ぐ。

鋼と鋼はぶつかり合い、脆い方から壊れていった……。








「こっ、小手川先輩!」


「まだ来るッ!! 来て!スケさん!!!」



 桃井が敵の攻撃を察し、咄嗟にスケルトンのゾンビを召喚する。

2人はその後ろに隠れ、次の攻撃をやり過ごす。

弾幕が降り注ぐ最中、視線を落とした彼女は異様な光景を目にした。



「何これ……ネジ? ナット? 色々な機械部品が……」



弾丸の様に思われたそれら。

その正体は錆び付いた、大小不揃いな金属材料であった。



「大人しく死ねばそれで良かったのだが……まあいい、一人は撃破出来たぜ」


「「!!」」



 粉塵が晴れ、一人の影が歩み出る。

露わになった学生服は煤と錆でくすんで見えた。



「やっぱり……あんたの仕業だったんだね」


「あの顔! 失踪した3人目の!」



そこに立っていたのは3人目の失踪者、真機那勇一だった。



「失踪? ああ、ここ最近は会長の下で実習を受けてたからか。母さんへの連絡を忘れてたぜ」


「あんたが……あの二人を殺したの?」


「そうだとも、俺が能力者の下衆どもに正義の鉄槌を下したのだ」



真機那は悪びれもせずに堂々と言い放つ。



「なんで……どうしてそんなことを!」


「黙れItafの下衆どもが!!」


「!!」



紅葉の疑問を真機那が突っぱねる。



「お前たちのような屑どもに聞く口など無い!! 大人しく正義の鉄槌を受けろ!!」



そう言った真機那の後ろに、いつの間に形成されていた自動砲塔が二人に照準を定める。

しかし──────



刹那、ドゴォン! という音とともに、砲塔は真っ二つに折れ伏す。



「何ッ!?」




真機那が慌てて後ろを振り返るとそこには、



「何が正義の鉄槌だこの野郎……!!」



蒼の炎にその身を焼きながら、鋼鉄の籠手が浮遊していた。









「お前……さっき俺の銃弾で……」


「あんなので俺を殺せると思ってんのかよ、籠手なめんな」




小手川は身体に刺さったネジを抜きながら答える。

その声色は低く険しく、獣の唸り声をも連想させた。



「大体なんだぁ?俺らが屑?人間殺してるてめえの方が何億倍も屑だろうが」




彼は、明らかに憤っていた。文字通り怒りに燃えていた。

Itafを馬鹿にされたこともあるだろうが、何より、人殺しという行為への怒りが彼を豹変させていた。



「わ、アイツのあんな怒ってる姿初めて見たかも」


「あ、わわわ……」



真機那の後ろで、女子2人は小手川の気迫に気圧されていた。

桃井はともかくとして、紅葉は知らなかったのだろう。

小手川拳斗という精神体が如何に「生」を重んじ、また「死」を忌むのかを。



「何を言っている! この世は勧善懲悪! あの男たちのような屑やお前たちItafのような能力犯罪組織はこの世から消え去るべきなのだ!!」


「ハァ? 俺らが能力犯罪組織? 何ふざけたことを」


「問答無用だ! お前たちは全員始末する!!」




会話すら成立せぬままに、戦いの火ぶたは切って落とされた。






                                         To be continued…



◇いれぷろ!◇

桃井「ん? あーこれ台本? おっけ、それじゃ改めて……」


(仕切り直し)


桃井「さぁやって参りました久々の『いれぷろ!』! 本日のゲストは~コイツだっ!」


小手川「おう! 勿論俺だぜ? てかよ、台本ちゃんと読んどけよな?」


桃井「分かってるってば~……でー何するんだっけ? ニンジン擦り下ろす?」


小手川「おい誰だ西○のチラシ渡したのは!!」



Q、真也と出会った前後のことを教えてください。

A、あ──────……。(溜息をつく音)

 まぁあん時の俺は……高揚感だろうな、誰にでも勝てるって思ってた。不良達は逃げてくし、旧校舎の幽霊だって殴り飛ばしてたんだぜ? んでアイツに遭って、負けて、今に至る。それまでの過程はあんま思い出したくねぇな……。


Q、常人が装備したらどうなりますか?

A、「30秒しない内に倒れる」だろうな。本当に心と体が強くねぇと最悪死んじまうんだ。ただいるんだよ、例外が。体は強くないのに精神力だけで耐えてるヤベー奴が。…………有片真也っていうんですけどね?


Q、「行動不能になる状況は限られる」とは?

A、「物理攻撃はほとんど効かない」からな! 言い方はアレだけど「怪我の功名」ってヤツかね? ……違うか? 違うな……。


Q、同期3人を見てどう思いますか?

A、真也 ⇒ 「いい加減休めぇ!?」

  桃井 ⇒ 「……チラシ紙飛行機にするな。そして俺に投げるな」

  クロ ⇒ 「(絶句。ノーコメント)」


小手川「こうしてみると悲しくなってくるな?」


桃井「ねぇねぇこて?」


小手川「なんだよ?」


桃井「鶴折ったよー」


小手川「だからチラシぃ!?」



(強制終了)


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