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第6話:The monster wields a graceful cutlery.(旧題:「そんなことしてるから小雪が不憫キャラになるんだよ」by中の人A

タイトルでわかると思いますが、ギャグです(威風堂々)。


 ある日の放課後、小雪は呑気に食べ歩きをしていた。Itafの会議はない上に、いつも以上に授業が早く終わったためだ。あっちへふらふら、こっちへふらふらとする様子は危なっかしく、誠あたりが見ていたのであれば「もっとしっかり歩け」と言われることは間違いないだろう。

しかしそんなことは小雪の知ったことではない。自由気ままに、危なっかしく、自身が面白いと感じた方向へ突き進むのが西川小雪という少女なのだ。


───そんな小雪を電柱の後ろに隠れて覗く影が一つ。


汐ノ目学園二年一組、現在16歳の少女であるエミリア・ガイストである。眩いブロンドヘアーを揺らし、深紅の瞳にやや剣呑な光を灯しながら、小雪を監視していた。

何を隠そうこの少女、Itafが風紀委員(仮)と呼ぶ組織───正式名、対能力者連合(略称、Irial)───の構成員なのだ。「能力者ぶっ殺す」をスローガンとするこの組織には内心合わないとは思っていてもそれはそれ、色々世話になっているのでその分の恩は返すつもりではある。

少々高圧的に見える容姿とは裏腹に、結構……いやかなり義理堅い性格なのであった。そのせいで貧乏くじを引いているがそれが性分なので仕方がない。気乗りはしないが……ええ、まったく気乗りはしないが!!


(あー、どうしようかしら。そろそろ何か大きな功績をあげないと……とか思ってた矢先に現れるもんだからついつい尾行しちゃったけど、ノープランなのよね)


 尾行とかしている割には、結構抜けているエミリアなのであった。



 一方小雪の方はというと……


(なんなんスかねあのヒト。さっきから尾行してくるし、そのくせ隙をさらしても攻撃とかしてこないし…………ハッ、もしやワタシのファンッスか?)※違います


 関係ありそうに見えて的外れなことを考えていた。とりあえず人のいない場所に誘導しようか、と進む道を変更する。元々ふらふらと気の向くままに進んでいただけなのでそこら辺の抵抗はまったくない。

しかし気まぐれな小雪のことである。興味のあることがあればそちらへ向かって行ってしまうだろう。


「────あ、あのクレープ屋さん美味しそうッスね……お兄さん、クレープ一つ下さいッス!」


 と、案の定ふらふら食べ歩くだけになってしまうのだった。



(あーもう、何でこんなに振り回されなきゃいけないのかしら! もっと統一性のある行動をしなさいよ!)


 と、いささか理不尽なことを考えつつもしっかり尾行を続ける真面目なエミリア。ずっと尾行をしているからか、周りの目がちょっと痛くなってきたので早く終わってくんないかなーとも考えている。

ちなみに、目立っている割に通報もされていないのはひとえに彼女の容姿が関係している。何せ高二にもかかわらず中学生程にしか見えないのだ。小雪といい勝負である。周りの人も、何か遊びでもやっているのかなと若干微笑ましげ目を向けている……小雪もエミリアもそのことにはまったく気付いていないが。


 閑話休題。そんなわけで、エミリアの苦労はもう少し続くのであった(小雪はエミリアのことのついてすっかり忘れています)。


そんなこんなで、あっちへふらふら、こっちへふらふらとしていくうちにエミリアの行動にも変化が生まれてくる。何だかんだで適応力は高い方なのだ。


「おじさん、焼き鳥ひとつ頂戴な」


残念、エミリアは小雪ウィルス(※そんなものは存在しません)に感染してしまった! とでも言わんばかりに影響されまくっている彼女は、適応力が高いというよりは流されやすいという方が適切なのではないだろうか。


どちらにせよ、前途多難である。



──────尾行開始から約一時間。


「ワタシはこっちの方注文するッス」

「じゃあ私はこっちね」


 なんと、二人仲良くファミレスで談笑していたのである。小雪はともかくエミリアは敵対組織同士だと分かっているのだろうか((悲しみ))。エミリアの名誉回復の為に経緯を説明しておくと、些細なミス(自業自得)により小雪に見つかってしまい、小雪の妙な押しの強さによって近くの有名ファミリーレストランに連行されてしまった……ということであった。


 なぜ小雪が無理矢理連行したのかというと────


「──というわけで、最近全然活躍できてないんスよぉ……」

「……へ、へー。そうなの……」


 ただ愚痴を吐き出す相手が欲しかっただけな様だ。30分近く喋り続けているのにも関わらず、話題が尽きる様子はない。しかし、ややげんなりとした顔をしつつもエミリアの瞳には期待の色が宿っていた。


(────そろそろ、かしらね)

「それでッスね!今度はちょっと作戦を……あ、れ──急に……眠、く……──」


 エミリア自身の体内に存在する特殊な細胞である【怪物因子】によって肉体を変化させ、変化した肉体の内部で創られた睡眠薬によって深い眠りに落とされた小雪。エミリアの能力の隠密性が高いだけでなく、小雪の油断が招いた事実だろう。つまり、ただの自業自得である。


「──それにしても、なーんか簡単に行き過ぎちゃったわね……罠じゃないわよね?」


(※残念ながら罠ではありません)


「──ま、何はともあれ連絡……っと。こほん」


プルプル──ガチャ。


『──もしもし、桐張だが』

「──ハァ、ハァ……エミリアよ……Itafの西川小雪を倒したわ……」


(※眠らせただけです)


『そうか、よくやった。死亡確認は?』

「──ごめんなさい、そこまでの余裕はなくて……でも、生きてたとしても数ヶ月は活動できないと思うわ……」


(※だから、眠らせだだけだってば)


『……怪我の具合は?』

「……ええ、大丈夫。自分で何とかなる範囲だわ……さしあたって、二週間ほど休暇をいただきたいのだけど……」

『──了解。Itafの主力の一人だ、大事をとって一ヶ月ほどは仕事も割り振らないでおこう』

「……助かるわ」


(※嘘八百も嘘八百です)


『では、体に気を付けろよ』

「ええ、わかったわ──」


ガチャ、ツー、ツー──。


「──よし、休暇ゲット。さて、自由な時間が手に入った訳だし、今までじゃできなかったことでもしようかしら……っと、その前に──」


 そして、小雪を背負い、ファミレスの料金を支払い、夜の闇へと消えていくのだった。



 ──数日後、Itafにて。


「おーい、真也ー。なんか宅配便届いてんぞー」

「なんだよ小手川、小雪失踪で忙しい時期に……」

「だーかーらー! 届けモンだよ! オカ研に!」


 取り敢えず開けてみる真也たち。なんとその中には──!


「ン”ー”! ン”ン”ー”!」

「「え、なんで縛られてんの?」」



───────

Message card

To Itaf

数ヶ月は活動できないと報告しておいたので上手に使って下さい。

From “Monster”

───────



悪くない、私は悪くないんだ! あんなにもギャグ向きの性格をしてる小雪が悪いんだ!(責任転嫁)



【緊急告知!】

 先日お知らせした通り、クリスマス特別編の投稿が決定致しました!

12月24日から2夜連続で(おそらくは)番外編をアップする予定です。詳細はまだ明かせませんが、お楽しみいただければ幸いです。


それでは、年末もよろしくお願い申し上げますm(__)m

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