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第3話:Itaf急襲・急

今週も張り切って参ります( ̄▽ ̄)/


────何が、起こったという?


 新入生の1人、三浦(みうら)(ほの)()もまた押し寄せる炎の波を目撃し、そして被害を受けていた。

持ち合わせた能力の性質が故か、彼女も重症こそ免れたもののタイツが焦げ付く程度には負傷している。


 そして現在、1人推理タイムに突入した真也の様子を見つつも、案内役の水鳥による安否確認が続いていた。

 高等部へ進学してから早3日、「事件の規模も件数も中等部の比では無い」という手の話こそ聞いてはいたが、それにしてもこの状況はハードに過ぎる。

火傷の酷い同期数人を横たえつつも、焔華は改めて汐ノ目の恐ろしさを痛感していた。


 そんな時だった。

症状確認の為に作られた列から1人、並ぶこと無く離れていく男子生徒が見えた。

単なる個人主義、という可能性もあったが、焔華にはそれが集団の中に在ろうとする『孤』だと分かった。

自分の現状に引け目を感じている様な、重く、暗い足取り。

これは焔華自身も汐ノ目機関の内情を探るべく入学を手配されたという経緯、同類が故の勘なのだが、それはまた別の話。


 何にせよ危惧すべき事態に変わりは無い。

その男子生徒の行く手に熟考する真也が居れば尚更に。


「─────! ─────!?」


 叫ぼうとする。

しかし、力がどこかへと抜けていく。

体の芯すら忘却してしまいそうな脱力感が焔華を襲っていた。

視界の端に懸かった黒霧は更なる異常を示している。


焔華が慣れない感覚に悶える最中、男子生徒は体を前傾させ突進する。

手始めに、彼は数拍もしない間に懐に忍ばせていた薬品を放り投げ真也の視界を遮った。

これは着色された強酸の類だが、回避されるのは必至。

されど、その瞬間にこそ彼にとっての勝機がある。


静寂の隙間を掻い潜るが如く、その拳は到達した。



「……じゃあな、会長」




 その男子生徒────御守(みもり)(こう)の放った拳は、本来なら一撃必殺と呼ぶに値する。


 彼の能力【英雄の力】は自身の身体性能を一時的に向上させる、至ってありふれた身体強化である。

しかして、その本領はシンプルさにこそあると言える。

未完故に限界を知らず、これまでも多くの敵を屠ってきた確殺の御業。

文字通り、己の100%以上を、全身全霊を叩き込む拳技。


これを破る者がいるならば、それは余程防御に優れた能力者か、或いはそれ以上の人外たる存在か────



「…………ッ!?」



 哀しい哉、有片真也は後者である。

 視野を抉る様な一撃に対し、彼は後退と共に御守の手首を掴んでいた。

強酸の飛沫に皮膚を焼かれて尚、攻撃の軌道に合わせて後方へと重心を移す。

こうなってしまえば相手に為す術は無く、勢いをそのままに真也は御守を合気が如く投げ飛ばした。



 真也の能力【絶対刹那】(ロストエイジ)は『時間』を与奪する。

本来ならばその主な効果は『触れた物体の運動を鈍化、或いは加速させる』と説明されるが、その副産物である行動速度の上昇から暫し『加速能力』とも称される。

未だ謎の多い力ではあるが、それもまた別の話。



 さて、この間わずか5秒弱。

格納庫の隔壁に受け身を取りつつ、御守は苦い表情を浮かべる。

強烈な遠心力によって変装は剝がされ、彼は本来の顔に怒気を滲ませていた。

 御守の顔を遠目に、真也は一瞬動揺したものの口調は冷静さを取り戻そうと努める。



「…………これは、お前の引き金か御守?」



「ええと、有片会長? 彼を知っているんですか……?」


 星奈の問い掛けに、真也は重々しく頷いた。


「……彼の名は、御守輝──────元Itaf所属の生徒だ」





「────さて、頃合いですね」


 扇の残像に炎を見出しながら、夜弥は直訪れる勝利、その瞬間を確信する。

【紅殻】の隙間から見える真白は平静を装っている様だが、この状況を覆す要素は一切排除されている。

彼女さえ排除してしまえばItafは戦闘中に応急処置が出来ない。そうなれば、この後に続く戦闘から安全圏という概念は消えて無くなるだろう。

 そして目前に控える復讐の完遂に、夜弥は久々に笑ったことを自覚した。



「それにしても残念です。事もあろうに、あの白夜(びゃくや)()()の後継が、よりにもよって火にくべられるだなんて──────嗚呼……これが愉悦という感情なのですね?」



 その言葉を真白が知覚した時、彼女が感じた感情を誰も名付けてはいなかった。

怒り、悲しみ、それすらも超越した心情は──────強いて言うならば、憐憫に近かった。

 忘れていた、押し込めていた記憶の残渣が結び付き、潮騒が如く押し寄せる。

点と点が結ばれたその先に、真白はある可能性を見出した。


「…………ふぅん? わしのお父はん知っとる辺り、あんたはんの能力(ソレ)、【経典】やろ?」

「……」



 【経典】という名の異能が在った。

その名の通り本の形に収められたそれは人の身と融合し、そして奇跡を成す。

 真白もまた義理の父、白夜真緒より【経典不朽】を譲り受け、そして現在に至る。

詳しい事を思い出すにはまだ時間はかかるが、確か彼は譲渡の折にこう言っていた。


「全ての【経典】は私の【原典】に通じる。そして、それは信仰へと行き着く。太陽へと行き着く。君が真に世界を識ったなら、今度こそ君に譲ろう」


 そう言って去った彼ならば、様々な縁を結び、その度に【経典】を渡していたとしてもおかしくはない。例え、その縁が不条理な牙を向けて来たとしても。



いずれにせよ真白にとっては僥倖に違いない情報である。

何せ揺さぶりの材料が勝手に転がって来たのだから。


「……何故そう言い切れるのです?」

「別に? ただ、そう云えばあんたはんの眼ぇ、わしとそっくりや思てな?」

「貴方と……?」

「せや? 痛みも苦しみも、ぜぇんぶ火にくべて。あの(ひと)が同情しそうなお眼々やよ?」


 沈黙に混じる憤りを感じ、真白は釣り上がりそうになる口角を諌める。

その口振りから解ってはいたが、案の定2人の内攻略し得るのは夜弥の方である。

そして真白の煽り文句は、正に薪をくべる行為と言っても過言ではない。

夜弥は表情こそ変えなかったが、炎の勢いは制御出来ているとは思えないまでに荒れ始めている。


「────纏さん、もっと供給を回して下さい……!」

「うわわ! やり過ぎだってばー!?」


 夜弥の怒りを体現するが如く、その獄炎は放たれる。


 その瞬間、真白は障壁を操作し時間差で三か所に穴を開けた。

最初、真白の頭上に空いた穴からは新鮮な空気を求め、一挙に炎が流れ込む。所謂バックドラフトが誘発される。

無論の事、真白自身も高熱に晒されるが彼女にとっては大したことでない。

視界を紅に染めながら、瞬間的に前方二か所を開け放つ。

勢い余った炎はその先に在った【紅殻】を跳ね飛ばし──────




「───会長、2時の方向───三浦さん、射角30度で陽動お願いします。それと───」


 地下格納庫での戦いも佳境を迎えようとしていた。

 元より真也のみを狙っていた御守だが、今となっては多勢に無勢。

真也、星奈、焔華による徹底した遠距離攻撃。加えて水鳥の【未来予測】によるサポート。

【英雄の力】の出力を上げなければこれらの回避は不可能。しかし、100%を超えた力は10分程度しか保持出来ない。


防戦一方。それ以外の言葉が見当たらなかった。



「───ッ!! クソっ何でこんな───」


 御守が悪態を吐こうとしたその時、彼の右脚へ真也の投擲が着弾する。

瓦礫による一撃は大腿を深く抉り、次なる一歩すら許さない。


「御守、君には以前から行方不明届が出ている。どうか、投降してもらいたい」


 真也の呼び掛けに対し、御守は苦悶しながらもこれを拒絶した。


「────あ“ぁ? んなこと信じられるかよ!? アンタに捕まった人間の末路を知ってりゃ尚更だ! それに──────どの道ここで全員くたばると思うぜ……!?」


 御守が示した周囲には、彼らを囲う様にして黒い霧が広がっていた。

 焔華がこの霧に気付いてから数分、換気口からの流入は納まったものの御守による突撃は続き、現状まともな対処すら出来ていない。

遠距離攻撃を続けたのも負傷した新入生達を守りつつ、真也が霧を吹き飛ばす為の時間稼ぎに他ならない。


防戦一方となっていたのは真也達の方であった。



「会長、アンタなら知ってんだろ? このウイルスは『第四世代粒子を無効化する』。能力なんて効かねぇし、俺らなんて即死だろうよ」


 事実として、この霧に触れた焔華は右腕を火傷していた。炎を扱う能力者にも関わらず。あと数秒も触れていれば腐敗が始まっていただろう。

 押し寄せる黒の波を前にして、御守の嘲笑は渇いていた。


「俺も、アンタも、どうせここで終わりなんだ。だからよォ? せめて最期まで、拳を振るった方がアンタも本望ってもんだろ?」

「……いや、特には」

「…………は? 強がりも大概に───」

「別に、お前を足止め出来れば良いんだよ。三浦、悪いが水無月と手を繋いでもらえるか?」


 羞恥故に躊躇ってしまう焔華だったが、星奈が耳打ちしたことでようやく差し出された手を結んだ。


「……アンタ、何させる気だ?」

「俺の記憶が正しければ、このウイルスは『能力にしか強くない』。結構改良された様だが元より脆弱、熱で簡単に除染出来るはず」

「馬鹿か? 言っただろ、能力で火ィ出したところで何も────」

「ああ、だから『普通の火』を使わせてもらう」


 水無月星奈の能力【災害解封】(ディザスターシール)はあくまで災害という『現象』を封じる能力である。

先程の爆発に加えて、焔華の手から生み出された熱量は繋がれた手の中で着実に一枚のシールへと蓄積されていく。能力ではない、純粋無垢な炎として。


「────会長、俺やっぱアンタのこと嫌いだわ」

「……水無月、出力の調整は出来るな? それじゃ────頼んだ」



 次の瞬間、格納庫は光に包まれた。




 塞がれていた通路から流れ込んだ空気は循環し、辺りを覆う黒煙を晴らしていく。

格納庫は一面を煤色に染めていたが、その中に御守の姿は無い。

残されていたのはエレベーターシャフトまで続く2人分の足跡のみ。


「会長、今からなら間に合うのでは?」


 水鳥の提案に真也は首を横に振る。


「いや、いい。それよりも怪我人の治療と、それからウイルスのサンプリング、クロに通達してくれるかい?」

「承知しました。それでは」


 下層に居たメンバーが駆けつけ、多くの謎と疑念を残しつつも襲撃事件は幕を閉じた。

 窮地を脱した真也であったが、その表情は酷く苦々しいものだったという。




「ふぅ。こんなもんやろか……」


 一通り皮膚が再生したことを確認し、真白は散らばった【紅殻】の中を漕いでいく。

余程当たり所が悪かったのだろう。甲殻の直撃を受けた纏は完全に気絶してしまっていた。

もう一方、夜弥の姿は炭化した廊下のどこにも見当たらない。

恐らくは炎の噴出で甲殻の勢いを殺し、相方に見切りを付けたといったところか。


 一先ずは手土産を持って本部に戻るとして、真白はふと考え込む。

夜弥は何故真白を知り、そして憎むのか。

今後の商売に支障が出なければいいのだが───【紅殻】に映った自分へと問い掛ける。


「はてさて、どないしよなぁ?」




◇いれぷろ!◇

真也「今週も御一読ありがとうございます。さて、今週のゲストは────」


焔華「わたしが来た!! 改めて、三浦焔華Itafに正式加入よ!」


真也「とんでもないスピードで実装されたのな?」


焔華「当然でしてよ会長? お金と下積みは嘘をつきませんもの!」


真也「あっ、面白い人だった......(-_-;) まぁいいや、そろそろ質問フェーズだ。準備はいいか?」


焔華「よろしくてよ? ガンッガン答えるわ!」


Q、能力の詳細が分かりません。

A、【業火絢爛】ラグジュアリーバーン 破壊力B! スピードB! 持続C? 射程B! 成長B! 精密動作E!

炎を放つだけと侮ることなかれ! 燃やした物体に応じて炎の色が変わるから、牽制からとどめまでこなせるってわけ。そうそう、火力に関してもItafじゃトップクラスなのよ? こんなカンジで良いかしら?


Q、家がお金持ちと聞きましたが?

A、ええ、三浦家は汐ノ目機関の協賛企業ってことになるわね。能力の実験なんかをやってて......。うん、そういうワケ......。


Q、ぶっちゃけIvisにいた頃ってどんな感じでした?

A、聞いて頂戴(食い気味)!! 何回ツッコミ入れても足りなくて! 特にあの姉妹ね、毎秒イチャイチャキャッキャウフフ......! 今頃どうなってるのか心配で心配で......。


真也「仲間思い、なんだな?」


焔華「べっ、別にそんなじゃないし......(テンプレ) 今日はこれで終わりよ終わり!」


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