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第2話:Itaf急襲・破


 真白が謎の2人組と対峙していた頃、学園の地下もまた非常事態に襲われていた。


「────ッ……総員、大事無いか……!?」


 未だ黒煙が立ち込める最中、一早く立ち上がった真也は辺りを見渡す。

爆轟が響くと同時、元居た回廊から流入した炎熱は波濤の如くうねり、彼の視界すらも奪っていた。

拳圧を盾に難こそ逃れたものの、返事の代わりに響くのは火花の散り際のみ。

最悪の状況が脳裏に浮かびつつあったが、しかしてそれは杞憂であった。


「……こちら河名! 少なくとも死者はいません!」


 煙が晴れていく。

鮮明になった真也の視界では1人の少女が際立っていた。


「成程? 早速活躍出来たじゃないか、水無月」



 水無月星奈の能力【災害解封】(ディザスターシール)

その強さの最たるは『災害を封印出来る』点にある。


先程炎の波が押し寄せた際も、それを瞬時に『火災』と捉えた彼女は懐から真っ新なシール台紙を選出、果敢にも火中へと突き出すことで熱の大半を収容、無効化していた。



「……ッ、すみません。無事って訳じゃないですけど……」


 しかし、それでも状況は芳しくない。

延焼こそ免れたものの新入生の一部は火傷によって気絶、爆心と思しきエレベーターシャフトも遠目から使い物にならないと判る。


 犯人の目的は十中八九Itafへの襲撃である。思い当たる節は幾万とある。

ならば何故、基地全体に発破をかけないのか。あれは非合理的な爆破ではないか。

真也が思案していた時、遅れて施設内に非常警報が流れた。


『────オペレーションルームより各位に伝達───1番から5番まで、出入口は使用不可。7番以降は確認中につき。これを以て警戒レベルを2段階引き上げとします───各位───』


 この時、真也の脳裏に更なる疑念が雪崩の如く流入していた。

 何故出入口の破壊のみに止めるのか、自身を含む幹部格を始末したいのであれば支柱の数本を壊すだけでも生き埋めを狙えるはず。内部構造を知っているのならば尚更である。


────それとも、敢えて生かした? なら何の為に?


けたたましいサイレンが思考を搔き乱し、真也の背に尚も緊張をぶつけて来る。

相手の次なる一手とは何か、加速された脳漿は熱を帯びようとも休むことは無い。

例え、更なる異変が背後に迫っていようとも。



「…………じゃあな、会長」





「まぁまぁ……そないかっかせんとも……折角の美人さんが台無しやよ?」


 紅蓮の甲殻に辺りを囲まれながらも、真白はいつもの口調で交渉を持ちかけていた(煽りとも言うが)。

あくまで一治安組織であるItafは可能な限りは相手方の投降を促すよう新人を指導する。

しかし、その経験があまり活かされないのは、偏に大概の相手がこれに応じたことが無い為だろう。

 今回もまた同様に、襲撃者2人は攻撃の手を緩めてはくれない。


「ええ、ええ。やはり貴方は貴方なのですね真白さん。傲慢で、上から目線で。いい加減燃えていただけませんか?」


 和装の少女は絶えず扇を振るい、甲殻で身動きの取れなくなった真白へと業火を飛ばす。

その勢いは一介の兵装とさして大差は無く、延長線上の廊下すら炭化目前となっている。


「……あんたはん、わしん事知っとるようやけど、知っとるやろ? この『壁』、破れへんよ?」



 真白の能力【経典不朽】

その効果は『再生能力を有する障壁を生成すること』。

如何なる干渉を受けようと、彼女自身が癒えぬ傷を抱えようと、この力はその一切を無視して自らに属する全てを直してしまう。永遠の時が約束された様に。


未だ不明な点も多いこの能力において分かることはただ2つ────この力は文字通りの『不朽』であること。そして、防衛力に関しては歴代Itafでも五指に入ること。



 半球状に展開された光の障壁は甲殻に圧迫されようとも、業火に巻かれようとも、現在に至るまで不動不変を保っている。

火球の直撃による傷も数分と経たない内に治ってしまっていた。あたかも時が戻った様に。


 では、この無敵とも思える異能がこれまでに破られたことがあるのか。

無論、通常の手段では地上にこれを攻略する手段は無い。

されど『絶対』の2文字が存在しないのが超常達の戦いである。


「フフ、知ってますよ当然? それでは(まとい)さん、お願いしますね?」


「んお? やっと出番なのー?」


 殻の様な兵装を操っていると思われる少女が初めて口を開く。

不意に見せたそのあどけない表情は到底敵意を感じるものではない。


 この時の真白は炎使いの少女よりもこの纏と呼ばれた少女を警戒していた。

その理由として、周囲を固める殻の様な兵装に真白は一切の覚えが無いことが挙げられる。


というのも、真白が経営しているという店は、訳有って戦略兵器の類も扱っている。

先代である彼女の義父、その頃の名残もあってか危険地域との商談もゼロではない。

そんな真白だからこそ、この『盾の様な物体』が非正規の、恐らくは独自開発された兵装だという見当が付いたのだ。


「えーとぉ、真白さんだっけ? はじめましてだねっ! ボクは纏、紅殻纏(べんがらまとい)。んで、そのマシンも【紅殻】っていうんだ!」

「ん、あんじょう宜しゅう。挨拶出来て偉いなぁ? どっかの誰かはんと違て」

「えへへー! 夜弥ってば怒り過ぎなんだよねー?」


 年相応、と言うには若干幼い気もするが都合は良い。

商人である以上真白は手荒な真似を好まない。戦闘は他人にやらせるに限るというもの。

ならば多少でも相手の仲間割れ、連携を崩す程度までは目指したい。

座面に忍ばせたライフルに気を配りつつ、真白は他愛無い会話を続けようとした。

本部の方も気にはなるが会長が解決してくれるはず。

どの道時間は無限、そう思っていた。彼女がある異変に気付くまでは。


「…………あら?」

「あ、真白さんやっと気付いたん? 【紅殻】って対経典兵装なんだよ?」


 真白が感じた違和感。体の力が抜けていく様な感覚を、彼女は今まで何度か味わった事がある。

その時は、無敵のはずの障壁が突破ないし攻略されかけた時。

今回もまた同様に、何故か【経典不朽】の出力が減衰し始めているのだった。


 原因があるとするならば──────対経典兵装、障壁を覆う【紅殻】に他ならない。

 荒ぶる火中に真白が目を凝らすと、浮遊する『殻』その内側は鏡面の様になっている事が分かる。

障壁から漏れ出た光は各ユニットを介して反射し、その一条の行く手にはあの「夜弥」と呼ばれた和装の少女がいる。


「それだけでは無いですよ? 私の火力も上がっていること、気が付かなかったとは言わせませんから」


 原理こそ解らないが、何らかの形で能力の威力そのものを盗用されている。

そうとしか考えられない状況だ。


確かに一般的な能力は非公式ながら実証されている未知の粒子、通称『第四世代粒子』の移動によって引き起こされる事が分かっている。

真白自身も、形態こそ特殊なれどその例に漏れず、精神作用に依る粒子のベクトル操作を行っているはず。

しかし、その運動が光ないし熱に依ってコントロールされるなどという事例は見たことも聞いたことも無い。


────或いは、それが夜弥(あの子)の能力か……。


 いずれにせよ猶予らしい時間はほとんど残されていない。

【紅殻】と炎に阻まれる限り銃火器の効果は見込めない。

加えて、出力の吸収により【経典不朽】の連続保持はあと数分が限界。

一度でもインターバルを挟もうものなら拘束されることは必至。

いつぞやかの様に生き埋めにされようものなら真白自身に為す術は無いだろう。


 ピシピシという亀裂の走りを横目に、真白はどうしたものかと頬杖を突く。



「───さぁて? どないしようなぁ?」




◇いれぷろ!◇

真也「さて、第二回いれぷろ! ゲストはコイツだ!」


真白「皆はんあんじゅう宜しゅう。えらい早いお呼びやなァ?」


真也「基本的にその話で登場したキャラが呼ばれるシステム、だそうだ。真白にはいくつか、質問に答えてもらうぞ。準備はいいか?」


真白「ん、かまへんよ?」


Q、真白は何でお金好きなの?

A、まぁ「育ち」やろなぁ......。お金が好きなんやなくて、お金が動いとるのが好きなんよ。ほら、ミニカーなんかも動かして遊ぶやろ? あ、それと自分以外に能力使うとき対価が必要ってのも理由やな。こればかりは仕方なく、ほんまに仕方なぁくやっとるんやで?


Q、真白は京都出身ですか?

A、これはNOやな。気づいたら関西っぽくなっててなぁ......中の人も「分かんない」言うんよ......。「わし」呼びは尚分からん。


Q、真白のバリアって何で出来てるの?

A、「わしにもよぉ分からん」やね。概念的な境界と言うか何と言うか? お義父はんなら知っとるんやろうけど。


Q、真白のバリアってどんなイメージ?

A、「薄緑の半球」言うんかなァ。わし的にはシャボン玉に近いと思う。


Q、真白のバリアってどういう時に破られるんですか?強敵なら割ってくるイメージですが。

A、「概念レベルの火力」が必要らしいなァ? クアンミョンはんは一応「太陽神を名乗ってるから」なんて解釈で合意しとったらしいで?


Q、天音さんに狙われてませんでしたか?

A、う......ノーコメントや......。


Q、好きです。付き合ってください。

A、毎月30万円でええよ。追加料金はその度教えるわ。


Q、とりあえず20万で何とか......。by天音

A、させるかよby真也


真也「おっと、長くなりそうだから今回はここまで! ご清聴」


真也&真白「ありがとうございました!」

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