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第1話:Itaf急襲・序

初っ端からの遅延......気を付けたいです(-_-;)


 汐ノ目学園。

都内某所、再開発により誕生した特別行政区「汐ノ目町」の中心とも言えるこの学び舎に、今年も志高き新入生達が集う。


 さて、所変わった学園の地下、本来在るはずの無い区画にも同様の事が言えよう。

 今しがた昇降機から降り立った数人の男女。10数人はいるだろうか、皆学園指定の真新しい制服を着ていた。

そんな彼らを先導するように、1人の女生徒が拡声器を手に取る。


『えーテステス、マイクテス……。皆さーん聞こえてますかー?』


 鋼色の回廊に声が反響し、生徒達の視線は女生徒へと向けられる。

戦場へと向かう類の、張り詰めた空気が自然と彼らの背筋を伸ばしていた。

 そんな様子を見渡し、新入生の案内を任された女生徒、河名(かわな)水鳥(みどり)は懐古するように微笑み、そして話を続けた。


『はい、それではこちらが先程説明させていただきました、Itaf保有の地下施設『異能対策委員会本部』です。見ての通り、中二心くすぐる秘密基地となってますね』



 異能対策委員会、通称Itaf。


汐ノ目地域にて多発する超常現象や異常犯罪、その全般に対処すべく創設された学園公認の治安維持組織。

その歴史は古く、巨大企業『汐ノ目機関(グループ)』による学園発足とほぼ同時期とされる。

組織の特徴の最たるは、所属するメンバーの実に9割が件の超常現象、俗に言う『能力』『異能』の類を行使出来る点にある。


 今回集められた新入生もまた、Itafの調査を通してその才を見出され、そして各人が所属する意義を見出した者達であった。




『この広大な空間は校舎地下の3分の1を占め、これを設計したのは何と、現会長『有片真也(ありかたしんや)』の御父上だそうです。彼は初代顧問として類稀な──────』


「あ、あのっ…………」


 一同が回廊を抜け一際広い格納庫へと進んだ頃、水鳥の薀蓄を遮り、挙手する者がいた。

黒の短髪と白のカチューシャが印象的なその女生徒に、水鳥はすぐさま記憶を手繰り寄せる。


「──────はい、何でしょうか水無月星奈(みなづきせな)さん?」

「その……件の会長はどこに……?」


 この時、水鳥は彼女の後ろめたい表情とその質問の意味を理解していた。

 水無月星奈───そう呼ばれた彼女は以前にもItafと接触したことがある。

詳細を省くなら、昨年、自らの能力により暴走状態にあった彼女はItafと交戦し、その過程で真也と呼ばれる彼を負傷させていた。

その後正気を取り戻した彼女はスカウトを受け入れ、そして現在に至る。


「もうその話はしたはず。会長はとっくに許してますよ」

「はい、解ってます……それでも、一度謝っておきたくて───」


 主張を言いかける星奈だったが、今度はそれを遮る者が現れた。

具体的には新入生達の頭上に。



「──────呼んだか、河名?」



 赤毛と着流した制服を揺らす、男子生徒の姿が在った。

 突如として天井から降り立った青年に、水鳥はこれでもかと言わんばかりにため息をぶつける。


「ハァァァ──────ッッ……何で毎回出しゃばって来るんですか会長?」


 彼の名は有片真也。

異能対策委員会第13代会長にして、『史上最速』と評される存在である。


「いや、すまない。毎年こーゆーのって俺の役回りだったからさ? 職業病、ってヤツかね」

「社畜なだけかと。えー皆さん、こちらが会長の有片先輩です。速くて、強くて、あと【大抵の面倒事を1人でこなす程度】の能力者です」

「性能的には概ね合ってるのが悔しみ」


 一通りの茶番を繰り広げつつも、真也は終始星奈の表情に気を配っていた。

事前通知にて、名簿に彼女の名前を見つけた時からずっと、彼とて思う事があったのだろう。


「────とまぁ皆、Itaf(ウチ)って大体こんなカンジなワケ。それと、水無月?」

「あっ、はいっ! その節は────」

「さっき河名が言った通り、俺自身そこまで気にしてないさね? それに、例え次があったとて負けることも無いだろうさ、一切な」

「う…………」


 実際のところ、真也はこの手の確執に関しては比較的『根に持つ』タイプである。

ありがちな失敗から、在りし日の敗北まで、全てから学び続けたからこそ彼は今の地位にいると言っても過言では無い。

 許しているのか、いないのか。はっきりしないその口振りに、この時の星奈の様に畏怖を覚える者も少なくない。


「……けどさ?」

「…………?」

「もしそれでも、自責の念が拭えないのなら。どうかその分だけ、俺達を助けてもらいたい。償いじゃあないけれど、きっと君の力が必要になると思う。どうかな?」

「────はい! あたしに出来ることなら……!!」

「ん、ありがとな。その方が、俺も嬉しいよ」


 しかしそれ以上に、真也は『人たらし』である。

人との繋がり、その価値を誰よりも知り、そして投げかけるべき言葉を知っている。

 相も変らぬ彼にやれやれと頬を緩めつつ、水鳥は順路への誘導を始めるのだった。



 所変わって、端末準備室前の廊下はがらんとしていた。

こうも人が居なくては自分の欠伸が響いてしまう。

そんなことを考えながら、少女は車椅子の肘掛けを指で弾いた。

この少女、真白もまたItafの一員なのだがどうも勝手が過ぎたらしい。自店の経営と無断欠勤。そして自身の能力すら災いし、こうして土曜日の廊下を見張らされている。


「ふわぁ……別にどなたはんも来―ひんに、こうも暇やと敵わんふわぁ……」


 基本的にItafは秘密裏に活動する組織である。

国家レベルで能力を含む超常の類を秘匿する以上は、こうして大事を取って土曜日の昼に会員を案内することも、端末準備室の直下に基地を造ることもやむなしと言える。


 もっとも、真白にとっては何れもがどうでもいい話だった。

彼女としては大口の顧客であるItafに従軍し、それなりの治療費を得られればそれで良い。こうして警備員紛いの事をするのも、最低限の義理とバイト代あってこそ。

ともなれば欠伸の一つや二つは当然の副産物に違いない。


「ふわぁ……せや、桃井はんに代わってもろて……」


 状況に耐えかね部屋へ戻ろうとしたその時、真白はあることに気付く。

それは誰もいないはずの廊下、吹き抜けから差した光のその先から近付いて来る足音。

徐々に鮮明になるそれは恐らくは2人分。

時刻にして正午過ぎ。誰かの気が向いて顔を見せるような時間帯ではない。

 ホイールをオートに切り替え、真白は即座に警戒態勢に入る。

その瞬間────



────爆轟。端末準備室の奥からだ。



「──────ッ!!」


 唐突な事態に気を取られた刹那、真白の耳元にも同様に────爆轟。

暗がりから放たれた火球が一条の矢となり、彼女の右肩辺りに炸裂したのだった。

数瞬、空気すら歪むほどの熱である。

常人ならば重症は必至。即死すらあり得た。


常人ならば。



「……どこんどなたかは知らんやけど、迷惑(やくたい)料ん用意(こしらえ)はあるんやろなぁ?」


 鋭利な視線を向けた先に、真白は急襲者2人の姿を捉える。

1人は褐色と童顔が印象的な少女。学園の制服を着てはいるものの、その周囲を廻る甲殻染みた構造体は異質の一言に尽きる。

 もう1人は────……


「やっと────やっと会えましたね、真白さん?」


 光無き眼で微笑む、白髪にして赤眼の少女が在った。

その眼と同じ、紅の和装に身を包み、手にした扇子もまた燃える様な。否、比喩でなく実際に火の粉を立てて燃えている。


「あんたはんは──────」


 陽炎に揺らめく冷笑に、真白は思わず固唾を飲む。

久方ぶりの感覚が彼女の背を押していた。


◇いれぷろ!◇

水鳥「皆様、本日も御一読ありがとうございます。さて、第一回のいれぷろ!ですが......」


真也「待った、待って。何このコーナー? いつもは『評価お待ちしてます!』とかじゃなかったか?」


水鳥「はい、今説明しますので。えーコホン。改めまして、このいれぷろ!は登場キャラ達に作中の疑問点やハイライトを語ってもらおう、という新しい試みです」


真也「あーなろうにありそうで無かったヤツだ?」


水鳥「はい。本作は複雑な設定や描写が多いので、後書きで解消すればいいんじゃね? という作者Aの意向です」


真也「んな無茶苦茶な......」


水鳥「まぁ投稿が遅延した罪滅ぼしらしいですけど。あ、好評なら『パピヨンハート』の方でもやるそうですよ?」


真也「あの双子に噛ませるのか!? 既に味の無いガムみたいな企画を!?」


水鳥「作者Aから伝言です。『何もしないよりかはマシ』と」


真也「返信『焼け石に水じゃね?』」


水鳥「追伸『どちらかと言えばヤケクソ』」


真也「何で会話が成立すんだよ!? もういいわ!」



水鳥&真也「「どうも、ありがとうございましたー」」


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