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第12話:三浦焔華の憂鬱 前編

今回は第2章から登場する(予定の)炎使いがメインのエピソードになっております!

前・中・後編の三本立てとなっておりますので、長くなりますがお付き合いいただけましたら幸いです!



「はぁ…」


 名門校と名高い汐ノ目学園、その小中等部の校舎からほど近い公園に彼女___三浦焔華(みうらほのか)の姿はあった。

 だいぶ傾いた陽光に照らされつつ浴びる風は完全に冬場のそれで、3月になったというのにマフラーと手袋が手放せなかった。


 元はと言えば、団長たちが悪いんだ。

 わたしはもう中等部を卒業して、来月からは高等部に行って、所属もIvisからItafに鞍替えするわけだけれど、そうなったら危機感を持った人間がいなくなってしまう。

 いくら自警団って言っても、積極的な事件の捜査をしないだけで、Itafの先輩方の補佐をする。

 それなのにあんなに危機感が無いんじゃ、どう考えても危険だ。

 戦闘力については先輩方にもお墨付きをもらってはいるけれど、慢心したときが一番危ないというのは、バトルものアニメのお約束だ。

 だからこの先、わたしがいなくなってからのIvisが心配でたまらない。

 もしかすると噂に聞いた数年前のItafのように全滅してしまうこともあるんじゃないのかと、最近はそんなことばかり考えている。

 それなのに団長たちは、あろうことかメイドの芽衣までもが部室でだらけている。

 それでとうとう堪忍袋の緒が切れて、クラブの途中で飛び出してきてしまったのだ。


 日が沈んで、流石に遊んでいる子供もいなくなった。

 昔ハワイ旅行で泊まったホテルで、朝早く見た夜明けみたいな赤紫色の空になっていた。空を見て、ふとそんなことを思い出していた。

 ぽつぽつと星が見えてきて、街の街灯が輝いて、ビルの明かりが光って、まるで宝石箱みたいだった。

 しばらくベンチで三角座りをしていると、やかましい不良たちの声が聞こえてきた。

 ボスらしい不良は知っている。__わたしが1年生の時、学校で有名だった不良だ。しかも能力者で、学校内での問題を処理していた時、私は1年だったけれど散々顔を合わせた相手だ。

 (マズい…。そういえば卒業式の時、因縁つけられたんだった…。逃げ…)

 「おい、三成。あれ、お前のこと散々とっ捕まえてた優等生ちゃんじゃないか?」

 間に合わなかった。


 「へーwwwそれでwww仲間の事見放しちゃったわけwww」

 

 「ギャハハハハハハ!いやー、可哀そうになぁwww」


 「だーれも優等生ちゃんの話聞いてくれないなんてwwwなぁ?www」


 (あれ?意外と同情的?)


 不良たちは、わたしの話を聞くなりものすごく笑い出した。けれど、思っていたよりわたしに親身になって話を聞いてくれている…ようだった。

 不良グループは全部で30人くらい。こんな1クラスの人数が集団で歩いているってどういうこと!?と思わず突っ込みそうになってしまうけれど、随分仲が良いのだなと、のんきに考えていた。

 雲行きが怪しくなったのは、30分ほど経った頃。ボスのさらに上にいる大ボスが来た時だった。

 下っ端の不良が教えてくれたのは、汐ノ目の隣町にいる不良グループと彼らは絶賛抗争中で、今日この公園で決闘があるらしい。

 大ボスはこちらを見るなり中ボスに「なんだ、この女?」と言って、それに中ボスが何事か答えていたが、近くの道路を走ったバイクの音にかき消されて聞こえなかった。

 ほう、と軽く相槌を打つなり、大ボスはこちらまでやって来ると値踏みするようにわたしを睨んだ。


 「わりいお前ら。俺帰るわ」


 下っ端たちはえっ、という顔をしていたが、一部の幹部らしい不良たちは大ボスの気まぐれが分かっていたのか、特に驚いた表情はしていなかった。


 「っと、そこの嬢ちゃんも来てもらうぞ」


 「えっ、ご冗談…を…?」


 「なんだ、龍一さんに逆らうんか、えぇ!?」


 すかさず下っ端が私に詰め寄ってきた。

 圧が怖くて、押しつぶされてしまいそうで、つい、火を放ってしまった(・・・・・・・・・)



 気づいたときにはわたしは気絶させられていて、いつの間にか不良たちのアジトに連れてこられていた。

 何を言っているのかわからないと思うけれど、私も分からなかった。

 猿ぐつわをかまされて、両手両足を縛られて、汚い部屋のど真ん中に寝転がされていた。

 私が目を覚ましたのに気づいた不良たちが私を取り囲んだ。


 「さっきは俺らのダチに散々な真似してくれたなぁ?」


 「もうただじゃ済まねぇって分かってるよなぁ?」


 「というか殺す。死人は出なかったが、人数が人数だからな。これでとんとんだろ」


 気絶させられる前よりも圧が恐ろしかった。

 本当に殺されるんじゃないかと思ったのは、後にも先にもこれが初めてかもしれない。

 同じ相手でも、Ivisで活動している時は先輩たちがいた。だから怖くなかった。

 活動外でも、芽衣がいた。芽衣の能力で軍勢を呼び出して、人海戦術でこんな不良風情、簡単に突破できた。


 「やだ…助けて……誰か…」



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