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第3話:霊媒少女との邂逅 ~鳳家のご令嬢~

 異能対策委員会イレギュラーズ・タスクフォース、通称Itaf。ここには今日も事件が舞い込んでくる。


 さて、次の事件はItafに何をもたらすのであろうか。







 今日もItafは元気に活動中。本日参加しているメンバーは有片真也ともう一人。



「ストーカー被害だと? いやね、俺たちはあくまでも能力者が起こす事件を解決するのであって、何でも屋ではないんだぞ?」



 仲間の一人から相談を受けた真也はその相談内容についてきっぱりと、「これは自分たちの仕事ではない」と言い切った。それに対し、この相談を持ち込んだ者は、これは自分たちの関わるべき事件だと納得させるため、口を開いた。



「あー、結論を急ぎすぎたッスね。それに能力者が関わってるかもしれないってことなんスよ、今回の事件は」



 事件を持ち込んだのは西川小雪、重要な局面では影の薄くなりがちな少女である。相当な面倒臭がりである彼女が何故事件を持ち込んだのかというと、それなりに深い理由があった。





ある日の昼休み、小雪が食堂へ歩いていると突如声をかけられた。



「に、西川先輩! たっ、たた助けてくださいぃ!」



 声をかけたのは二個下の後輩、中学時代に同じ部活であった鳳紅葉。あまりにも急な内容に小雪も目を白黒としてしまう。



「え、っと? どうしたんスか急に。ちゃんと説明してくださいッス」

「ご、ごめんなさい。えっと、実はストーカーされてまして……」



 なーんだいつものことじゃないかと思う小雪。何せこの少女、とんでもない不幸体質なのだ。何もないところで転ぶのは当たり前、週に一回は財布か携帯を紛失するし『骨無し』と書かれた魚料理には必ず骨が入っているのだ。

 おまけに、彼女は汐ノ目グループのスポンサーでもあるあの鳳家のご令嬢である。身代金目的で誘拐されることは数多く、その数は両手の指の数では足りないほど。最近は慣れてきたのか、誘拐犯を撃退出来るようにまでなったというから驚きである。気弱な性格と優しげな見た目からはとても想像できない。


 しかしそんな少女が今さらストーカー程度で自分に泣きつくだろうか、と考える小雪。もう少し詳しく聞き出すこととする。



「で、何でワタシに頼るんスか? 他にもいるでしょ、解決出来そうなヒトって」

「いえ、その……西川先輩っていうか、オカルト研究同好会に依頼したいんです。」



 彼女の言によると、何をやってもストーカーと思われる者を見つけることは出来ず、代わりに『モヤモヤしたもの』が空気中に漂っているのだそうだ。この『モヤモヤしたもの』はオカルト研究同好会のメンバーの周りにも漂っているらしく、もしかしたら解決の糸口になるかもしれないと思い今回の事件について相談したのだそうだ。





「────という訳なんスよ」

「よし、彼女を連れてこい。Iscannにかけるぞ」

「了解ッス」



 そんなこんなでItafに連行される紅葉。本当に能力者なのか、そしてどのような分類の能力なのかを調べるためIscannにかけることとなった。もっとも、『モヤモヤしたもの』が見えるとか言ってる時点で能力者なのは確定なのだが。


──────Iscannでの測定後



「…………」

「…………」

「……反応、無しッスね」

「そう……だな」

「え? な、何かダメでしたか?」



 真也と小雪の反応に何かダメだったのかと少し顔を青ざめさせる紅葉。しかしすぐに小雪からのフォローが入る。



「いや、ダメって訳じゃないッスけど……みどりサンと同じタイプッスか……」

「ああ、第四種だな」



 そう、彼女の能力は厳密には能力ではなくただの体質。粒子の移動を引き起こしていないのだ。能力に対して質問をする小雪。



「じゃあ、何か自分と他人が違うなと思うところはあるッスか? ああ、不幸体質以外でッスよ?」



 答える紅葉。



「えっと、そうですね……あ、幽霊とか割とはっきり見えます。あと人間が発するオーラ? 的なのも」

「んー、成る、程。我々能力者が能力を使用する際にも用いられる『精神エネルギー』が見えているのかもしれないな」

「精神エネルギー、ですか。確かしっくりきます。怒ったときとか量増えますし」



 考察を述べる真也、納得する紅葉。ちょうど話が一段落したところで、新たな災難が現れる。



「おーい、真也ー。トランプしよう、ぜ──」

「こ──籠手が……喋っ──」



 紅葉、気絶。今まで纏まりのあった空間は一気に阿鼻叫喚といった有り様へと変化する。特に酷いのは小手川。自分が原因だと分かっているだけにその狼狽えも一番大きい。



「だ、大丈夫か少女ーーッ!」

「小手川センパイは隠れて! 起きたらまた気絶しちゃうッスからぁッ!!」



 思わず頭を抱える真也だった。





 小手川が落ち着き、紅葉が目覚め、そして小手川を再認識し──ともう一回大騒ぎしたところでようやく落ち着いた後、Itafメンバー+αは事件の対策について相談していた。能力者だと分かった以上、Itafのことはもちろん説明済みである。



「よし、今回の作戦はズバリ『囮作戦』だ。鳳さんが犯人を誘き寄せ、俺たちが叩く。あ、小手川は鳳さんの護衛な」

「おう、分かったぜ」

「囮って結構危険ッスけど、紅葉チャンはそこら辺大丈夫ッスか? ダメなら別の作戦にするッスけど」



 真也が提案、小手川は了承。小雪は紅葉へ確認を取っていた。



「は、はい。頑張りまひゅ」



 思わず噛んでしまう紅葉。顔が真っ赤に染まるが、それを切っ掛けに緊張していた空気が弛緩する。



「はは、よし! 作戦は今度の日曜日に行うこととする。各自準備しておくように!」

「「了解 (ッス)!」」

「りょ、了解!」



 かくして、新たにItafに入ることとなった少女の初仕事が始まったのであった。

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