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第11話:シアワセ②

ショッピングモールでの一件から1日後。


夏休みにも関わらず、オカ研もといItafは活動を開始していた。




「で、これが概要です。」




Itafの情報屋こと明智誠は写真付きのレポートをその場にいる全員に配布した。


とはいっても夏休みのせいで集まりは悪いのだが。




「いやお前仕事早すぎんだろ、なんで内部の写真こんなに撮れてんだよ」


「わ、私が呼びました」




事故に巻き込まれた零は、モールから脱出した後に救援を呼んでいた。




「やー、会長先輩も容赦がないですねホント、せっかくのんびりできると思ったのに」


「そういう割に仕事が早いのは助かってるよ」




そういうと真也は配られたレポートに目を通した。




『被害状況はモールの北館の一部が半壊』


『緊急地震速報は発令されず、不備があったとの見解』


『専門家の見解では地盤の部分的な緩みが引き起こしたと考えられるが不可解な点が多い』


『怪我人は重軽傷関わらず居たが、奇跡的に行方不明者は0人だった』




「というのが一般人から見た今回の事故…いや、事件だ」


「まあ俺たち視点は違うけどな」




小手川の言葉に真也も頷く




「『S波に匹敵する3回の地震』、『局所的という度を超えた被害範囲の小ささ』、『事前の緊急地震速報が無い』…これだけの超常が起こった以上、能力者絡みと見て間違いないだろう」


「それに人が比較的多い時間帯を狙った犯行でもありますね」




と、明智が言った時にドンと机を叩く者が居た。




「…罪のない人間を大勢巻き込むたぁいい度胸じゃねぇかよ」




それは小手川によるものだった。


大量虐殺未遂の犯人を許すわけにはいかない。彼はそう心に誓った。


この正義感は小手川拳斗という存在の誕生に関わるものだが、


簡単に言えば『人を心身共に救う』ことが彼の存在意義なのである。




「とりあえず落ち着け小手川。怒るのは犯人を捕まえた後だ」


「…そうだな、まずは犯人捜しだ」




そこで、今まで話に参加できてなかった存在が初めて口を開く。




「それで先輩方、どうやって犯人を見つけるんです?」




夏休みにも関わらず来てくれた真面目で中性的な見た目の1年、霧乃蛍である。




「その辺に関しては明智、そして霧乃。お前たち2人に任せようと思っている」


「「ええ!?」」




蛍は動揺、明智は面倒そうな声をあげる。




「なんたって学外の調査だからな、まず俺は無理だ。」




真也の【絶対刹那】は学内でしか使えない制限がある。




「今復旧作業が行われてるモールに入るには明智の【偽者の嘘】は必要不可欠だし、敵は局所的な地震を起こせるほどの強大な能力持ちだ、それ相応の能力が必要だろ?」


「で、でも僕の【幻想装備】じゃ地震の相手なんて…」


「そう、だからやられる(・・・・)前にやる(・・・・)


「えっ?」




真也の提案に蛍は困惑する。




「あれだけの地震を広範囲に亘って起こすにはそれ相応の準備ってものが必要だ、と思う」


「と思う、って…」


「まあお前の【アリス】なら物量で投降させられるかもしれないしな」




それに、と言いながら真也は小手川をつまみ上げる。




「オイ、何すんだよ」


「もしもの時のためにコイツにまたついてってもらうからさ?」


「会長せんぱーい、僕の意見は」


「明智、お前は諦めろ」


「そんなー」











「ってことで来たわけなんだけど」


「明智先輩、大丈夫なんでしょうか…」




会議を行った日の夜。


2人(と1つ)は夜になっても復旧作業に追われているモールに来ていた。


夜にも関わらず、現場は眩しいほどの明かりに照らされている。




「全く、夜中までご苦労様だよね、お陰で僕の仕事が増えるってもんだよ」




そういって明智は蛍に触れる。


そして、2人はモールの内部を歩きだした。




「…これホントにバレてませんよね?」


「まあ見えてはいるけどね、|認識をずらしただけだから《・・・・・・・・・・・・》。喋りすぎるとバレるかもね?」


「うう…」




規制線を超え、作業が続くモール内部を歩き、2人は痕跡を探す。


そして、一階の端。倒壊した店舗の中にそれはあった。




「明智先輩、何でしょうこれ…」


「白丸の…シール?」




そこには汚れて粘着力が弱まったシールが落ちていた。


表面に何かが書かれていた痕跡があるが、消えかかってて何かは分からない。




「まあ地面に1枚だけ落ちてるシール、怪しくないわけがないよね」


「どうなんでしょう、とりあえず持っていきますね」




2人ともなんの変哲もないシールと思って気にしてはいなかった。


…同じシールが1階の至る所で見つかるまでは。




「…これで何枚目だい?」


「えっと、8枚目ですね…」




地震で倒壊が起こった一角で、合計8枚のシールが見付かった。


粘着力が残っているものには、


流石に何かしらの関係がある、そう見た方が良さそうだった。




「なんなんでしょうね、これ…市販のシールにしか見えませんけど」


「至る所に貼ってあったということは…例えば、『こいつが震源になってた』とか」


「え!?こんなシールがですか?」


「さぁ?」


「さぁ?って…」


「まあ上に行けばまた何かわかるかもしれないよ?」


「…ゴクリ」











2階、3階にも似たようなシールが数枚落ちていたが、1階ほど多くは無かった。


そしてそのうちの1枚に、消えかかった字が比較的見えるものがあった。




「なんだいこれは…『地』?」


「地面の『地』、か…地震の『地』でもあるな」


「わっ、小手川先輩!?驚かさないでくださいよ…」


「わりぃな、どうも暇すぎて…」


「駄目ですよ小手川先輩。先輩に【偽者の嘘】使ってないんですから。手提げの中戻ってくださいね」


「ちぇっ」




明智に言われ、小手川は渋々蛍が持つ手提げ袋の中に戻る。


手提げには【偽者の嘘】がかかっており、明智たち同様認識をずらされていた。




「さて、もう4階…というか駐車場フロアだね」


「でもここも倒壊で所々に穴が…危険ですね」




4階、というか3階からは既に警邏の数も減り、明智も一息つけていた。


やはり1階の酷い状態の復旧に追われているのだろう。




「まあここには流石にないと…っ!」


「どうしたんですか明智せんぱ「隠れて!」




明智に小声で制され、2人は素早く物陰に隠れる。




「な、何があったんですか?」


「…人が居た。服装的にも工事作業員ではなさそうだ」


「!こんなとこにいる人って…まさか?」


「ああ、犯人である可能性は低くは無いだろう」




明智が覗いた先には黒いフードで顔を隠した人影が居た。


壊れた駐車場の端に立ち、夜景を見つめているようだった。


明智は、素早く小手川と蛍に指示を出す。




「霧乃君はアリスの力を使えるようにしておいてくれ。合図したら変身を頼むよ」


「わ、分かりました」


「小手川先輩はもしもの時のためにその辺に隠れといてください」


「おっけ」


「さて…おとなしく投降してくれるといいんだけどね…」




To be continued…

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― 新着の感想 ―
[良い点] 設定が作り込まれてるし、主人公含めて一人一人のキャラがすごい立ってるので会話を見るだけでも楽しいです!(上から目線すぎか) 能力物でこんなにも主人公たちがイキイキしてるのってあんまりないの…
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