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過去編:女神の戯れ/少女が覚醒した日



これは、ほんの少し前の物語。この出来事を境に、一人の平凡な少女は非日常へと巻き込まれていくこととなる。


それが少女にとって幸となるのか不幸となるのか、それはまだ誰も知らない。


けれども、もしこの出来事が『運命』によって定められたことなのだとしたら――






 ――――ダuんろーDヲkぁイ始しmァス――――


――――えrrァー、jぃッ行デkIまsぇン――――


――――ガGぁ……特shゥな処rぃを行iマす――――


――――Eらァーnoしゅu正ヲかiシしまsゥ――――









 ある日、目が覚めるとそこは草原であった。というようなことを経験したことがあるだろうか。少なくとも普通の人間では一生経験しないようなことであるし、今回の話の主人公である『西川小雪』もまた、これまでの人生においてそんな経験をしたことはなかった。




「えぇ、っと……? まさか寝ている間に死んで、そのまま異世界転生した――ってわけじゃないッスよね。明晰夢……にしては現実的すぎるッスし、頬つねったら痛いし。無事戻れるといいんスけど……。それにしても、面倒なことになったッスね……」




 不思議な場所で目覚めて一言目の感想が「面倒くさそう」なあたり、彼女が相当ものぐさな性格をしていることが伺えるが、そんな余裕が長続きするほどこの世界は甘くはない。早速、彼女へ試練が――否、変革への第一歩が迫り来る。




「――――ッ!?」


(いきなり頭痛が……ッ。それになんだか視界がぶれて――。これは、す……う、じ――?)




 視界に映るのは0と1の羅列。それはこの場所が通常の物理法則ではなく、『数字』によって支配されている世界ということを示すものであるが、その事に気づかないほど彼女の頭痛は激しい。




「ぐ――ッ、呼、んで……る? 一体、何が……とに、かく――行かない(・・・・)()……」




そう、小雪を呼んでいる。誰が、何のために呼んでいるのかは解らないながらも、絶対に行かなくてはならないということを本能で理解する。


――――行かねば。行って、確かめなければ。何のために呼んでいるのか、そしてこの胸に沸き上がるやっと出逢える(・・・・・・・)という感情が一体何なのか――――




声もない、姿もない『ナニカ』に呼ばれる少女はその声の導くままに『この世界』の奥へ、奥へと進んでいく。その先にある試練に気づかぬままに――







 小雪が歩き始めてから一時間ほどたったとき、突如として視界が光に包まれる。光がなくなると、周囲の景色は一変していた。草花の生い茂っていた床は大理石のようなものが敷き詰められた床に。そしてその床の上には大小さまざまな大きさのブロック。まるで突如世界が切り替わったかのような変貌に、細かいことは気にしない性格である彼女であっても空いた口が塞がらない。




「――は? いや、待って。そんな部屋の電気を切り替えるような気軽さで景色は変わらないと思うんスけど……。やっぱり夢なんじゃないッスかね、此処」


(に、しては頭痛はひどいし……っていうかだんだん酷くなってないッスか? まあ、流石に慣れてきたッスけど)




 世界の姿が変わったことに驚きつつも、思考を止めることをしない小雪。ほんの数秒ほど景色を眺めた後、この空間の秘密に辿りつく。




「――で、このブロックはなんなんスかね。これをどうにかしないと進めない気がするし、攻略するのが正解っぽいッスけど……。こう、バラバラに配置されてるのをみる限り多分パズルゲームッスよね? 同じ大きさのものを隣り合わせると消えるタイプの……。苦手なんスけどね、パズルゲーム」




苦手といいつつもブロックを動かしていく小雪。持ち上げて動かそうとするが、小さなものでも少しも持ち上がらなかった。地面を滑らせて動かすしかないのだろう。苦戦しつつも一つずつブロックを消していく。




――そうして小一時間ほどたった頃、小雪はついに最後のブロックを消し去った。




「やっと――終わったッス……。これで終わりッスかね~」




小雪はすっかり油断しているが、これで終わりではない。これは序章。これから先、彼女にはもっと辛い試練が待っている。そうこうしているうちにも、次の試練へのカウントダウンは進んでいる。


――3、2、1、0――


 


 ――――そうして、小雪は再び光に包まれた。







 光に包まれ、試練を突破し、そしてまた光に包まれ――。それを繰り返すこと、数十回。




 小雪の感覚としてはおそらく最後の試練。今までの試練(様々なパズル、迷路)で散々頭を使った影響か、あるいは奥へと進んだ影響か、今までよりも頭痛のする頭を抑えつつ辺りを見渡した。景色は今までと変わらず、床には白いジグソーパズルのピースが散らばっている。




「まさか――、ホワイトジグソーパズル……ッスか……。いやいや無理ッスよこんなの、めっちゃピースあるじゃないッスか! 責任者出てこーい!! 返事は――なしッスか。……いや、返事がないのはなんとなく分かってたんすけどね……。あー、嫌だなぁ。絶対面倒じゃないッスか」




愚痴を吐きつつもジグソーパズルをすすめる小雪。小雪の予想どうり、今まででもっとも難しく、そして恐ろしく時間のかかる試練であることを短時間で理解し、時間をかけることでより実感することとなった。




――――1時間。




「次のピースは……これ? それとも……こっちッスかね?」




――――5時間。




「――やっと……外枠が完成したッス……」




――――20時間。




「……これで大体、半分くらいッスかね。……まだ、半分。ふふ」




――――40時間。




「ふ、ふふ、ふふふふふ…………やっと――やっと終わったッスーーーー!!!!」




 激闘の末にパズルを完成させる小雪。運動もしていないのにも関わらず、体中に汗をかいている。




ついに最後の試練を突破した小雪。最後の光に――――包まれる。







その光は今までの無機質なものとは違い、暁光にも似た暖かな光であった。小雪が眩しさに目を閉ざし、再び目を開けると――――




「今までとは随分様変わりした……ッスね」




床は石畳、真正面には鳥居。そして今まで変わることのなかった空は『蒼穹』から『神秘的な夕方模様』へ。まさしく世界がまるごと入れ替わったかのごとき変容に、驚きの表情が隠せない。


加えて、鳥居の向こう。そこには、この神秘的な空間であっても異常と判断されるであろうものが鎮座していた。――否、浮いていた、という表現が適切だろう。人の身体程度の大きさの『光の球体』が時折表面を明滅させながら、まるで何かを待つかのようにたたずんでいた。




「――――そうッスか……キミが、ワタシを…………」




 何処か納得のいく表情を浮かべながら鳥居をくぐり、『球体』へ近づいていく小雪。


心の何処かから、『これに触れれば戻れなくなる。引き返すのは今のうちだ』という声が聞こえる。しかし一方で、『これはもともと自分のものだ。引き返して何になる』とささやく自分もいる。


 あと一歩で手が届くというところで足を止める小雪。何かを迷っているような表情を浮かべている。




「――――っ、よし!!」




しかし迷ったのは一瞬。即座に覚悟を決めると、その手を『球体』へ伸ばすのだった。






 ――――ガガ……えラーの修せiが完了しました――――


 ――――ダウンロードを開始します……ダウンロードが完了しました――――


 ――――インストールを開始します……インストールが完了しました――――


 ――――能力【数値操作】を起動します――――







「――ッ!? 夢、ッスか。大分不思議な夢だったッスね、それに最後の感覚……」




眠りから目覚めた小雪。最後に“あの世界”で感じた感覚を頼りに、能力【数値操作】を行使する。所詮夢だとは思いつつも好奇心は止まらない。




――自身にかかる下向きの力『重力』の数値を変更、“約9.8”から“0”へ――




「……なーんて、こんな超能力じみた力なんて使えるわ、け……。う――浮いてるッス!? え、マジで超能力者になったッスかワタシ――ッ!!」




汐ノ目学園一年生の春、大型連休。俗にいうゴールデンウィークのこと。ほんの少し口調が特徴的だっただけの平凡な少女は能力者への覚醒を遂げる。これからどんな苦難が彼女に待ち受けているのかは――――誰も、知らない。







――『世界』の何処か、『玉座の間』にて。




「やーっとたどり着いたよ。それにしても――彼女の『能力』、大分深いとこに眠ってたせいで覚醒(めざ)めさせるのに余計な手間がかかっちゃった。わざわざ能力の因子を抜き出して別の場所に配置したり、『能力』と出逢わせるために面倒な手順踏ませたり。変な拒絶反応も出てたみたいだし。今度何か詫びでも入れた方がいいかな?」




 少女は一人呟き続ける。誰も近くにはいないが、呟きに答える『声』が一つ。




「詫びなんて入れなくてもいいよ、こっちの不手際なんだから。――能力が脳に負担がかかりすぎるから成長するまで封印、なんてしない方が良かったかも。まさか封印を頼んだ人が老衰で死んじゃうなんてね」


「そんなことになるなんて誰も予想できなかったんだから、誰の責任でもないと思うけどね」




 少女は耳に電話の受話器を当てている。通話をしているのだろう。




「それもそうかな。――おっと、そろそろ小雪が起きてくるから。またね、M().E().T().I().S(). ちゃん。」


「それじゃあ、またね。燐那(りんな)さん」




通話を終了させ、彼女たちはそれぞれの日常に帰ってゆく。


一つ、溜め息。




「災難だよね~、小雪ちゃんも。親の能力を遺伝してなかったらこんなことになってなかっただろうに。――ま、私にはあまり関係のない話だけど」




 己は関係ないと嘯きながらも、電脳世界の女神は一人の少女の未来を思い、憂いの表情を浮かべる。言動ほど冷たい人物でもないようだ。




 ――――どうか、彼女の未来が幸多いものにならんことを。



今回、現実世界と電脳世界では時間の流れが違うのです。つまり一晩で起こったことなのです。ここから人物紹介




西川小雪(にしかわこゆき)


(まだ)一般的な少女。今回の件がきっかけで能力が覚醒、すこし後にItafに参入することとなる。特徴的な語尾は高校デビューによるものという裏設定があったりなかったり。




西川燐那(にしかわりんな)


 小雪のお母さん。面倒くさがりな性格も低めの身長も、挙句の果てには能力でさえ彼女からの遺伝。本編に出てくることがあるかも……?




M().E().T().I().S().


 電脳世界の女神様。電脳世界を管理している。現実との時間の差異も彼女の調整によるもの。本編に出てくることはない(断言)。今回、小雪の夢に電脳世界を接続したことからも分かるように、出来ることがあまりに多すぎる上、出来ることの限界がほぼないため。一言で表すとチートの権化だから。アイ○ンマンのジャ○ビスみたいに、とある短文の略だったりする。

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