ガチャ47 粘性泥獣
進化したピーちゃんをよく見てみると、体毛の色が大きく変化していた。大きさや形に変化がなかった為すぐにはわからなかったが、気が付いてみると今までとは全然違う。
これまではごく一般的な茶色と白の体毛だったのだが、茶色かった部分が真っ赤になっている。これが火雀になった影響ということか。
編成画面でピーちゃんを見てみると、外見からはわからない変化が沢山あった。
まず、レアリティがNからUNに変わっている。進化することでレアリティが上がるのであれば、いずれは最高レアに到達することも出来るのかもしれない。そう考えると、使い魔はハズレどころか大当たりなんじゃないだろうか。ガチャでしか出ないというのも納得だ。
それからレベルが1になり、上限が40まで上がっていた。やはり、レベル上限はレアリティに比例するようだ。今後も進化を繰り返せばもっと高いレベルに至ることも可能なはず。
レベルが下がったのに合わせてステータスは若干低下し、平均してF程度になったが、雀だった時の初期ステータスと比べると雲泥の差だ。この調子ならピーちゃんが戦力として活躍する日も遠くないだろう。
そして一番重要なスキルだが、元々ピーちゃんは飛行というスキルを持っていた。それに加えて、新たに火魔法Lv1、火耐性Lv1のスキルを獲得している。
ピーちゃんが魔法タイプだったというのは驚きだが、これは嬉しい誤算だ。俺たちのパーティーには純粋な後衛がいなかったから、今後は選択肢の数も増える。
この第二階層ではマトゥアと俺のコンビネーションで特段問題なく戦えていたから、その活躍を実感できるのはもう少し先になるかもしれないけど。
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魔法生物研究所第三階層。相変わらずフロアの性質は変わらず、通路に魔物は出現せず部屋の中に隔離される。魔物の種類にも特に変化は見られず、精々影擬きと人工精霊が強くなったくらいか。
「チュンチュン!」
ピーちゃんの鳴き声が響いたのと同時に、火球が出現し影擬きに直撃した。一瞬たじろいだ影擬きだが、すぐに体勢を立て直し前進を再開する。直後、高速で接近したマトゥアに殴り飛ばされ地面を転がりながら消滅していった。
強化された影擬きはマトゥアの一撃でギリギリ倒せなくなっていた。そのせいで第三階層の初戦は危うく影擬きの自爆を食らうところだったが、影擬きが自爆するよりも早く特攻したピーちゃんが影擬きを貫き事なきを得た。
だからマトゥアが攻撃をする前に一度、俺かピーちゃんでダメージを与えるという戦法をとっている。
防衛ラインを崩したマトゥアは、後方で奇跡の準備をしている人工精霊に突撃し次々と殴り倒していく。
「肩代わり」
マトゥアとピーちゃんの戦闘を横目に捉えながら、俺も一体の影擬きを盾で弾き飛ばし、同時にもう一体の影擬きを切りつける。相手の反応は確認せず一撃を当てた時点でバックステップ。見てからでは自爆を避けることは出来ない。
しかし斬撃が浅かったのか、あるいは強化されたことで体力が一定ラインを下回らなくなったのか、影擬きは自爆しなかった。
剣で切りつけた方の影擬きをあえて蹴り飛ばし距離を取る。影擬きと戦うときは、とにかく相手の戦列を乱し同時に相手をするのは1体か2体まで絞る。そうすれば鈍重な攻撃を食らうことはないし、こちらの攻撃を外すこともない。
警戒していた視界の端に、光り輝く人工精霊が見えた。
「エナジーバリア」
念のために肩代わりは使ったが、それよりも先に挑発を使っていたから狙われる可能性は俺の方が上だ。そして案の定、光の線は俺に向かって飛んできた。
影擬きをさばきながら人工精霊の攻撃に盾を合わせる余裕はない。だからガードは使えないし、どちらかといえば物理攻撃に対する耐久性が高いディフェンダーでは人工精霊のビームをほぼ軽減できない。
そのため新たにスキルを取得した。奇跡や魔法と言った物理ではない攻撃を大幅に軽減し、物理攻撃に対してもある程度の防御を誇るエナジーバリアだ。ポイントは200とお高めだったが、性能は折り紙付き。バリアに直撃したビームは威力をほとんど殺されて俺にごく僅かなダメージを与えた。
「チュンチュン!」
まだクールタイムは終わっていないようで、ピーちゃんは影擬きの足に特攻して貫通し転倒させた。
俺はその影擬きに止めを刺さず、別の影擬きを蹴り飛ばす。ピーちゃんの攻撃で倒れた影擬きが起きあがろうとしていたところに蹴り飛ばされた影擬きは突っ込んでいき、2体はもつれあって倒れ込んだ。
「待たせたな!」
ジタバタと暴れていた2体の影擬きが起きあがるよりも早く、人工精霊を全て倒して戻ってきたマトゥアが暴れ熊で叩き潰した。そのまま、戦列の乱れた影擬きを1体ずつ処理していき、それからは特筆することもなく戦いは終わった。
「うん、今回もナイス連携だったな。ピーちゃんも良くできました」
「チュンチュン!」
「はんっ、別に鳥なんていなくても二人だけで勝てたけどな!」
「ヂュンッ!」
「こらこら、俺は大分助かってるからそんな風に言うなよ。ピーちゃんも落ち着いて」
メンチを切り合い青筋を浮かべているピーちゃんとマトゥア。
相変わらず顔を合わせれば喧嘩を始める一人と一匹に苦笑しつつ、出口に向かう。いつも通り、今の戦闘を脳内でリピートし反省点を考えていた。考え事をしながら当たり前のようにドアを開こうとして、ドアがびくともしないことに気が付いた。
一瞬、反応が遅れる。
「アッヅゥゥゥ!?」
「――――ッ~!?」
全身を焼かれるような痛みに襲われ思わず声をあげる。
俺には苦痛耐性があるが、痛いものは痛いし熱いものは熱い。来るとわかっていれば声をあげるなんてしなかっただろうが、なにせ不意打ちだった。
急いで周囲を見てみると、マトゥアが半透明な粘液に覆われてジタバタともがいていた。息が出来ないのか、喉を抑えて苦悶の表情を浮かべている。
「マトゥア!!」
俺は急いでマトゥアに駆け寄ってその粘液を払おうとするが、粘液はまるで意志があるかのようにマトゥアの身体にへばりつき離れない。
こいつ、魔物か! だから部屋の扉が開かないし、俺がいきなり熱さを感じた。さっき使った肩代わりがまだ効いてるんだ。不幸中の幸いだった。
「ピーちゃん、頼む! 治療の奇跡!」
身体に張り付いた粘液の魔物を剣で攻撃するのは無理だ。一番有効なのは燃やしてしまうこと。マトゥアには肩代わりがかかってるから、ピーちゃんの魔法で燃え死ぬことはない。魔物を倒したら消火すれば、大丈夫なはずだ。迷っている暇はない。
「チュンチュン!」
ピーちゃんは日頃の恨みとでも言いたげに楽しそうに詠唱し、遠慮なくマトゥアにファイアボールをぶち込んだ。それで実際に熱くて痛いのは俺だから若干複雑だが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
「ぐぅっ……!」
増加する痛みに思わずうめき声を上げながらも、ポーションを飲み干した。
時間の経過で俺の肌が爛れ始め、加えてファイアボールによって燃え移った炎で火傷がどんどん増えていく。苦痛耐性のスキルがあるとはいえ、痛みは0じゃないし、酸や炎による影響は受ける。頼むから今すぐ死んでくれ。
激痛に耐えながら火達磨になったマトゥアを見守り、どれだけの時間が経っただろうか? きっと実際には数秒、いやもっと短いかもしれないが、俺にはいつまでも続く拷問のように感じられた。
ふと、苦しそうなマトゥアと目があった。直後、俺の視界は閉ざされた。さっきまでマトゥアが目を閉じていたから無事だったが、目を開けたことでそのダメージが俺の目を焼いたのだ。
「――――」
ただ、視界が完全に閉ざされる寸前、マトゥアが何か言っているよう見えた。
直後、唐突に痛みがなくなった。
「ざいぜいのぎぜぎ……っ?」
火傷のせいかかすれた声しか出なかったが発動に問題はない。一瞬で肌の爛れや火傷、失明が回復し、マトゥアの様子が確認できた。しかし、目に映るその姿があまりにも常識はずれだったせいか、俺は一瞬言葉を失った。
全身に広がる炎に、真っ赤な翼。
そこには未だ火達磨になっているマトゥアが立って居た。
粘性泥獣は本能に従って動く捕食者なのです!
弱点は炎なのです!




