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ガチャ45 進化する雀

「すげえ! すげえぞ、これ!」


 戦闘が終わった後、マトゥアはキーワード無しで獣の力をコロコロと切り替えながら暴れ始めた。

 見た感じ、同時に使える力は二つまでみたいだ。


「見たかよミサキ! 今の俺、すっげえんだよ!」


 マトゥアは楽しそうに笑いながら、両手をぶんぶん振って俺に報告してきた。

 新しい力を使うのが楽しくて仕方ないみたいだ。振り回している力は物騒だが、とても微笑ましい。


「な、なに笑ってんだよ!」

「いや、良かったなって思ってさ。どうする? 下克上するか?」

「はんっ! そんな挑発には乗らないぜ! お前に挑むのはもっとこの力を試してからだ!」

「そっか。楽しみにしてるよ」


 マトゥアが嬉しそうにしているのは当然俺も嬉しいが、今の時点でも戦えば俺は負ける。マトゥアが俺より強いということ自体は構わないのだが、実際に戦って負けると少し困ったことになる。俺は嬉しい気持ちと複雑な気持ちが混ざり合い、少しだけ笑顔がひきつった。


「よっしゃあ! この調子でガンガン行くぞ! ここの魔物はやりやすいし楽勝だ! ――っ」

「どうした? 痛むのか?」


 意気揚々と部屋を出ようとしたマトゥアが顔をしかめて頭を押さえた。まさか、攻撃を受けてたのか? 影擬に比べて光る球はあっさり過ぎた。何か得たいの知れない攻撃をしていたとしても不思議じゃない。


「……もう収まったから大丈夫だ!」

「HPを確認した方がいいんじゃないか? 攻撃を受けてたなら治療するから」

「んー、HPは満タンだぞ?」


 端末を見てからマトゥア自身も不思議そうにこんこんと頭をたたく。収まったというのは本当みたいだが、大丈夫なんだろうか。もしかして、病気か? だとしたらステータスには出てこないかもしれない。

 ただ、本当に病気だったとして何か出来るか? 病気を癒すスキルなんてリストにはなかったぞ。


「もう何ともないし早く行くぞ!」

「あ、おい!」


 マトゥアは待ちきれないとばかりに1人で外に出て行ってしまった。このフロアは通路に魔物が出ないっぽいとはいえ、不用心に過ぎる。俺も急いでマトゥアの後を追いかけた。







 影擬の自爆は、一撃で倒すことが出来れば発動しないようだった。おそらく、発動条件はHPが一定の割合を下回った時なんだ。それに対して、暴れ熊を使ったマトゥアは一撃で影擬を倒すことが出来る。光る球こと、人工精霊に苦戦しなかったのも、一撃で倒せたからだろう。マトゥアが言っていた通り、ここの魔物はマトゥアにとってやりやすい相手なんだ。


 魔法生物研究所第二階層、ここからは影擬と人工精霊が同時に現れるようになったが、まるでマトゥアの敵じゃない。

 俺が挑発を使って引きつけている間にマトゥアがどんどん敵を倒していき、戦闘はものの数分もかからず終わってしまう。


 たぶん、人工精霊は殺傷能力の高い攻撃だけではなく、治療系の奇跡を使える。今まで一度も使われていないから確証があるわけじゃなく、敵の戦い方から考えた予想だが。

 影擬が暗闇の状態異常を与え、しかもその耐久力で盾になる。やつらの攻撃はおまけみたいなものだ。影擬が時間を稼いでいるうちに人工精霊はビームを撃つ。さらに影擬のHPが減ってきたら、人工精霊が回復する。この二種類の魔物だけで、アタッカー、タンク、ヒーラー、デバッファーの四つの役割を成立させているんだ。


 俺たちにとって幸運だったのは、タンクである影擬をマトゥアが一撃で倒せるということだ。これにより、やつらの組み立てたいパターンは成立しない。


「回復の奇跡」

「お~、疲れがなくなった!」


 魔物を全滅させたあと、マトゥアを回復させる。ダメージは一度も受けてないから、使うのはHPを回復させる治療の奇跡ではなく、疲労を取り除く回復の奇跡だ。

 第一階層で何度か影擬や人工精霊と戦った結果、俺は挑発を使いつつ撃滅の奇跡で牽制を行い、その隙にマトゥアが一撃でしとめていくという先方が確立された。

 この戦法は第二階層でも通用しており、今のところお互いに一度もダメージを受けていない。


 戦いには相性というものがある。マトゥアが強いのは当然だが、このフロアはとくにマトゥアにとって相性が良い。

 とはいえ、それに俺が満足しているわけではない。この階層で俺がほとんど役に立たないのは確かだが、強くなると決めた手前、相性が悪いからとマトゥアにぶん投げて良いわけがない。


 休憩中や戦闘に余裕がある時は剣や盾の練習をし、撃滅の奇跡も出来る限り使用している。そろそろスキルのレベルが上がっても良いような気はするが、現状で変化はない。

 今もまた、この戦闘でレベルが上がっていないか端末を穴があくほど睨みつけているが、やっぱり上がってない。


 って、よく見たらピーちゃんのレベルが上限の20になってるな。


「チュン! チュンチュン!!」


 肩にとまっているピーちゃんを見てみると、何かを抗議するかのように翼を荒ぶらせて鳴いていた。もしかして、前からレベルMAXになってたのか?

 しかし、レベルMAXになったからって何だっていうんだ? 今でも俺のステータスにはとても及ばないし、だとしたらマトゥアにだって届いてないはずだ。これ以上ステータスが上がらないことを考えると、朗報ではなくむしろ悲報だ。


 こう言っては可哀想だが、結局ピーちゃんは外れだったということなのだろうか。


「チュンチュン! チュン!」


 がっくりと肩を落とすと、ずり落ちたピーちゃんが飛び上がって俺の頬をくちばしで突っつき始めた。またしても抗議するように激しく鳴いている。


「痛い、痛いって!」


 悪意ある攻撃というわけじゃないから、HPのバリアが仕事をしていない。本当に地味に痛いからやめて欲しい。


「おい鳥! ミサキに何してんだ! 焼き鳥にするぞ!」

「落ち着けマトゥア、ピーちゃんも!」


 ピーちゃんにつっかかろうとするマトゥアの頭を片手で抑えつつ、ピーちゃんの前にもう片方の手を差し出すと、荒ぶりながらも指の上に止まった。

 ピーちゃんがこんなに自己主張するのは初めてだ。レベルMAXになったというのは、これ以上ピーちゃんが成長しないという以外に何か意味があるのかもしれない。


「マトゥア、おやつだ。良く頑張ったな」

「別に! 俺が帰るためだからな! 勘違いするなよ!」


 顔を背けつつもしっかりとお菓子を受け取るマトゥア。わかりやすい照れ隠しだな。可愛い奴め。


 何かとピーちゃんと仲が悪く喧嘩ばかりのマトゥアだが、とりあえず物を食べてる間は喧嘩もしない。今のうちに確認を終わらせてしまおう。

 編成画面でレベルの表示が20/20になっているピーちゃんのアイコンをタップすると、ステータスだけでなくスキルなどの詳しい情報が表示された。

 っていうか、レベル20になるまで随分早かったな。使い魔は必要経験値が少なかったりするのだろうか。


「特に変わっては……、ん? 進化?」


 今まではなかったボタンが増えていた。青白く点滅するボタンには進化という二文字が書かれている。


 進化、進化だと? そうか、いくらレアリティがNだからと言って、ガチャでしか出ない使い魔がレベル20で終わるはずがない。使い魔はレベル上限に達することで、進化するのか!


 進化と言えばあの有名な国民的ゲームで有名だ。間違いなく、進化することでピーちゃんは強くなる。

 言われてみれば、同僚からソシャゲのユニットは進化させることが出来るとか聞いたことがあるような気がする。

 たしか、ユニットは進化することで基礎的なステータスも強くなるし、レベルの上限も上がるという話だった。レアリティの高いユニットは進化の条件が厳しいから、無課金ならむしろレアリティの低いユニット方がオススメとも言っていたような……。

 俺にソシャゲを布教するために熱く語っていた同僚の知識がまさかこんなところで役に立つとは思わなかった。


 とにかく! ピーちゃんは進化出来る! 進化したら強くなる! 単純明快だな。進化させない道理がない。


「ピーちゃん、お前が言いたかったのはこの進化のことなんだよな!」

「チュン!」


 その通りだと言いたげに敬礼するピーちゃん。相変わらず賢い雀だ。進化したらどんな姿になるんだろうか。


 ピーちゃんは俺の使い魔であるため、ピーちゃんの強化はすなわち俺の強化と言っても過言ではない。このまま順調にピーちゃんが育ってくれれば、マトゥアの足手まといにもならない。


「よし、早速進化だ」


 逸る気持ちを抑えつつ、点滅するボタンを静かに押した。

 すると、ウィンドウがポップアップして、こう書かれていた。


「必要な素材が足りません……?」


 ……素材とな?

素材の用途は進化や錬金、武具強化、売却と様々なのですよ!

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