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ガチャ42 雀のピーちゃん(仮)

 以前チュトちゃんは言っていた。ガチャの良いところはレアリティだけではなく、ガチャでしか手には入らないものがあると。

 その時の俺は、わけのわからない状況で余裕もなかったからガチャを引くことなんて出来なかったが、ここまで戦ってきて理解した。

 この戦争は、堅実に強くなるだけでは常に死闘を強いられると。管理者がなぜそのようにしているのかはわからないが、恐らく間違いないはずだ。

 これまでの戦いにおいて、常に俺はギリギリだった。余裕を持って戦うためには、ガチャを利用することが重要なんだ。だからこそ、チュトちゃんはあの時俺にガチャを薦めてきた。

 絶望した姿を見るのが好き、なんて言ったいたが、あれはきっと照れ隠しのようなものだったんだろう。もちろん、ガチャを引けば必ず良いものが出るとは限らないが、挑戦しなければいつまでもギリギリの戦いに身をさらすことになる。


 この50ポイントを温存して、RやSRのスキルを得るということも考えた。実際、200ポイントかけて取得した撃滅の奇跡は序盤において無双の如き力だった。

 だが、それもこれから先の戦いでは通用しなくなるかもしれない。事実現時点でボスにはほとんど通用していない。


 俺の目指す理想の大人は賭事なんてしてはいけないが、平和な世界の大人と鉄火場の大人では求められる条件も違う。

 俺はこの戦争を、マトゥアと一緒に確実に生き延びたい。


 だから賭けるんだ、ガチャに。


「俺はガチャを回す」

「ガチャ? なんか妖精がそんなこと言ってような……?」

「俺はガチャを回すぞ! マトゥア!」

「!? お、おう」


 叫びをあげることで、自分の主義をまた一つ曲げることへの抵抗感をかき消し、俺は勢いよくノーマルガチャを回した。


 頼む! 有用な何かが当たってくれ! この際レアリティはNでも良い! 俺たちを助けてくれるような何か! 来てくれ!


 画面に表示されたガチャガチャが動く演出を祈りながら凝視していると、排出口から黒色のカプセルが出てきた。

 これをタップすれば中身がわかるのか?


「おめでとう! N使い魔、雀を手に入れた!」


 出てきたのはデフォルメされた雀のイラストが描かれたカードだった。


 使い魔! 使い魔だ! チュトちゃんは、使い魔のことをガチャでしか出てこないと言っていた。レアリティは最低のNだが、ガチャでしか手には入らない使い魔が出てきたのだから、回した価値はあったと思っていいんじゃないか!?


 雀の能力を見てみると、敏捷以外の全てがG-で敏捷だけがG+だった。スキル欄を見てみると、飛行とだけ書かれている。


 ん? あれ? これってもしかして、ただの雀? いや、いやいや、そんなバカなことがあるか? 使い魔だし、これだけってことはないだろ。うん。

 ああ、よく見ればレベルが設定されてる。つまりこの使い魔を育てれば立派な戦力になるってことだ。よくよく考えれば、俺だって最初はGーのステータスがあったし、まあ、問題ないのか?


 とりあえず手に入れた雀のカードを顕現化してみると、日本でよく見たあの雀が目の前に現れた。違いがあるとすれば、日本の雀は近づいたら逃げていくのに対し、この雀は羽ばたいた後俺の肩に止まった。使い魔なのだから当たり前の話だが、これで普通の雀みたいに逃げられてたら泣いていたかもしれない。


 雀の頭を指で撫でつつ編成を確認すると、しっかり雀がパーティーに追加されていた。俺やマトゥアの表示とは若干違うのは使い魔だからだろうか? この端末のヘルプは最低限の情報しか書いてないから、使い魔がパーティーの枠を潰すのか、使い魔専用の枠があるのかすらわからない。

 とはいえ、そうは言っても現状うまっているのは3枠だ。編成画面の空白的に後一人分の空きはありそうだし、気にしてもしょうがない。


 今はただ、この雀、そうだな……、仮にピーちゃんとしようか。ピーちゃんが俺たちの新たな戦力になってくれることを祈るばかりだ。







 マトゥアの機嫌が悪い。

 ピーちゃんを顕現化して一晩休憩したあと、俺たちは次の階層に移動することにしたのだが、マトゥアの機嫌がすこぶる悪い。

 最初は機嫌が悪いふりをして食べ物をねだっているのかと思ったが、どうやらそういわけでもないらしい。空気に耐えかねて差し出したお握りを、マトゥアは涎を垂らしつつも受け取らなかった。


 しょうがないからお握りは自分で食べつつ、米粒をピーちゃんにくれてやると、マトゥアはまたしてもピーちゃんを睨みつけていた。

 ピーちゃんが顕現化されてからずっとこんな調子だ。マトゥアはピーちゃんの何が気にくわないのだろうか。

 一応、ガチャで手に入れて、今後戦力になるはずだから育てるということは伝えたのだが、まるで納得していないようだ。こういうとマトゥアに失礼かもしれないが、獣的な相容れない何かがあるのだろうか。


 食べ物をあげても機嫌が直らないとあってはお手上げだ。まあ、子供は癇癪を起こすものだし、時間が経てば少しは落ち着くか。

 マトゥアのことは一旦おいておき、部屋の中央にある端末を操作する。


 徘徊の森第五階層に出現した扉をくぐった先は、案の定石畳の部屋だった。部屋の中央には始まりの坑道を越えた時と同様に端末があって、マッチング出来るようになっている。

 たぶんこの部屋は、今後も各フロアを越えるたびに休憩地点兼戦力補充として存在するのだろう。徘徊の森での戦いは、俺かマトゥアのどちらかが脱落していてもおかしくなかった。実際にそうなっても問題なく戦い続けられるように設計されているのだ。


 さきほどマッチングをしようとしたところ、パーティーメンバーが現時点での上限に達しているためマッチング出来ないというメッセージが流れた。

 この上限というのが、俺とマトゥアのことを指しているのか、それともピーちゃんも含めてのことなのかわからないが、とにかくパーティーメンバーはある一定の階層を突破しなければ増やすことが出来ないということみたいだ。

 現時点での上限が何枠なのかを確認するために端末を操作しているが、流れるメッセージは最初と変わらない。そもそもこの端末にはマッチング以外の機能が備わっていないのだろう。


 ピーちゃんをカードに戻せれば検証できたが、どうやら使い魔は装備と同じで一度顕現化したらカードに戻せないらしい。

 検証のためにピーちゃんを殺すか? いや、使い魔の枠が関係なかったら折角手に入れた使い魔を失うだけの結果になる。それに、そんなのピーちゃんが可哀想じゃない。こっちの都合で生まれて、まだ何もしてないのに、またこっちの都合で殺すのか? そんなことは許されない。


 考えろ。理由付けをしろ。ただ自分のエゴを貫きたいからじゃなく、合理的な理由で納得させろ。


「上限、そう、人数上限は最初からあった……」


 始まりの坑道はチュートリアルだったのだから上限は当然一人だったはずだ。そしてその上限は、徘徊の森に入る前のセーフティエリアで解除された。

 あの時、マトゥアとの出会いが衝撃だったからあまり気にしていなかったが、なぜマッチングされたのはマトゥアだけだった? たまたまマトゥアしかマッチングしている相手が居なかった? その可能性もあるとは思うが、おそらくそうじゃない。

 徘徊の森の魔物とボスは明らかに二人で戦って丁度良いくらいの強さだった。きっと上限は二人だったんだ。管理者がなぜそんな上限を設けているのかはわからないが、チュトちゃんの言っていたように、管理者には管理者の事情があるのだろう。


 セーフティエリアで上限が解除されるのは間違いないはずだが、ピーちゃんを顕現化したのは徘徊の森第十階層だった。つまりあの時点ではまだ上限は二人だった。にもかかわらず、ピーちゃんはパーティーに入れた。


 それが表す答えは、


「使い魔は上限と関係ない」


 そう、そうだ! だったらピーちゃんを殺すなんてありえない。戦力を無駄に消耗させるだけ。可哀想だから殺さないんじゃなくて、ちゃんとこの戦争に勝つことを考えた上での結論だ!


「マトゥア、ピーちゃんはこのまま連れて行くぞ」

「はぁ? 当たり前だろ? 逃がすつもりだったのかよ?」

「いや……。そうか、そうだよな」


 なにをわけのわからないことを言ってるんだと、口に出さなくてもマトゥアがそう考えているとわかった。バカみたいに小難しく考えていたのは俺だけだ。マトゥアはピーちゃんのことを気に入らないみたいだが、それでも当たり前に連れて行くんだと考えてる。


 俺が目指していたのは、そうやって当たり前に、面倒な理屈をこねなくても、心からそう言える大人だったはずだったのにな。

 一度曲げたならねじ曲がってでもなんて、簡単に出来ることじゃなかった。俺は自分でも自分がどうしたいのか、どうすべきなのかわからなくなってきている気がする。


「うし、行くか!」

「ふん、やっとかよ」


 バシッと自分の頬を叩き、気合いを入れる。

 迷いはある。だけど、今はそれを気にしている場合じゃない。戦いながら考え続けよう。

 俺のなりたい、俺の目指していた、理想の大人とはなんだったのか。

ネーミングセンスゼロなのですよ!

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